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1-15 悪夢は大体長編②

前話の章の数を間違えていたので投稿し直しました。

内容は同じです。

こちらが今週分です。

 盛大に行われた光の魔術師の葬儀では、光の魔術師によって王太子に選ばれた僕が弔辞を述べた。


 悲しみに暮れる国民達は、彼女が偽物だったと知ったらどうするのだろうか。


 貴族の中にはいち早く、母上の静養を怪しんでいるものもいる。王が死んだら?兄上の心の病が治ったら?

 兄上を担いで王位の簒奪を目論む者も出るのだろうか。真実を晒して。


 それでも、良いのかもしれないと、思う自分がいる。

唯一残った兄上が、正当な後継者が戻ってきてくれるのなら。


 母と、光の魔術師を失い、暗殺の危険性が増している中でも、王太子教育は進んでいく。


「エドワード、隣国に留学しないか。」

「留学、ですか。僕は学校に通う必要はありませんが。」


 父の政務を手伝う最中、唐突に提案されたが、一般的な貴族子弟が学校で学ぶ事は既に学び終えている。


「1年だけだ。隣国の教育を学ぶ良い機会になる。それに、隣国には其方と同じ年の光の魔術師が入学するそうだ。」


 前半の理由に頷きかけ、後半の理由が本音だろう、と父の顔を見つめる。表情からは何も読み取れない。


「いつか、国に光の魔術師が誕生したときに、会っておいた方が良いと思ったのだ。」

「......我が国にもいたではありませんか。」

「......そうであったな。」

「考えてみます。」


 考えてみる、とは言ったものの既に心は決まっていた。日々、暗殺の心配は尽きないし、隣国に行けば国内よりは安全だろう。

 何より、父上の目が曇るほど焦がれた、光の魔術師にも興味があった。


 それに、


「光の魔術師と恋に落ちたら国に連れて帰っていいか、って?」

「うん。」


 留学の挨拶をしに行ったときに皇太子のアーサーにそう問いかけた。彼の祖母がぼくの叔母、という近いような、遠いような親戚の僕らは、それでも年が近く、幼い頃からなにかと一緒に遊ぶことが多かった。


 そのため今でも気安い間柄でいる。


「うーん、うちはエドのところほどでは無いからね。一貴族にすぎない。あちらが望むのなら反対されることはないだろう。それでも光の魔術師、他の貴族とは違うのだから、できれば国にいて欲しい。本人が望まないなら応援はしかねるよ。」

「一応確認しただけだよ。ありがとう。」


 我が国の聖魔術師、光の魔術師への信奉ぶりを知っているアーサーは、自国の光の魔術師の誕生と、我が国の光の魔術師の死のタイミングについて、ズレに気付いていてもおかしくないのに、微塵も顔に出さない。


 幼い頃からこの帝国の皇太子として育てられたアーサーは、僕とは違い皇帝の器だ。


 今とはなっては何の理由もなく、偶然王太子になった僕だけど、一つだけできるかもしれないことがある。


「初めまして、光の君。僕はエドワード。隣国からの留学生だ。」

「エドワード、様。初めまして。リーチェ・フォン・フローレンスと申します。」


 王国に、父が、国民が焦がれた本物の光の魔術師を連れ帰ること。リーチェに僕を好きになってもらうこと。


「僕のひぃおばあ様が聖魔術の保持者だったんだ。だから、貴女にこの学園で会えるのを楽しみにしていたよ。仲良くしてくれると嬉しいな。」


「ひぃおばあ様......って、隣国の王太子殿下でしたか。失礼致しました。」


「畏まらないで。仲の良い人はエドって呼ぶんだ。貴女にもそう呼んで欲しい。」


「エド......様。私で良ければ、もちろん。貴方様のこの学園での生活がより良いものとなるよう、お力になれれば嬉しいことです。」


「ありがとう、リーチェ。姿だけでなく、心まで美しいんだね。貴女と友人になれて嬉しいよ。」


 サファイアブルーの瞳と讃えられた、ひぃおばあ様の肖像画よりも、澄んだ空色に煌めく瞳。


 本物は、ここにいたのだ。


 

読んで頂きありがとうございます。

ブックマーク、評価励みになっております。

エドワードの乙女ゲームエピソードは次で終わりです。

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