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クレオパトラの憂鬱

作者: 泉 羅卯

 私、クレオパトラ。絶世の美女。女優のエリザベス・テーラーに似てるって、よく言われるわ。

 私ね、今、困ってるの。女王として国のあらゆることを決めなくちゃいけないでしょ。それはいいんだけど、男女雇用機会均等法ってやつがね、悩みの種なの。

 ううん、その法律が世界的に施行されたことに、反対してるわけじゃないのよ。世界の流れに従わなくちゃいけないことは、よくわかってるし、それに、男女平等って大事なことだもんね。

 でもね、あれもこれも男女を平等にするのって、いろいろ問題があるのよ。

 たとえば軍隊――。国には軍隊が必要よね。別に、戦争したいわけじゃないけど、よその国から戦争をしかけられないって保証はないもんね。だから、強い軍隊はどうしても必要なの。その軍隊も男女平等にしろって、国際社会はうるさく言うの。

 おかげで、この間は、戦争に負けちゃったの。くすん。

 将軍に敗因を尋ねると、男の将軍はこう言うの。

「女性たちは、出軍するまでに時間をかけすぎるんです。鎧が重いだの、毎日お風呂に入れないのは嫌だのと、文句が多いし……」

 そしたら、横にいた女の将軍が、男の将軍の言葉を遮って反論したわ。

「男性たちこそ、足手まといなんです。彼らったら、女性兵士のお尻ばかり眺めてて、気もそぞろ……。何しに戦場に行ってるのか、よくわかってないみたい」

 ……ああ、めんどくさい。

 兵士たちだけの問題じゃないのよ。海軍に必要な船だって、今までの半分しかスピードが出なくなっちゃったわ。私の国の船は、大勢の男たちが人力で漕ぐの。ガレー船ってやつね。その漕ぎ手の半分を、女の子にしたの。だって、男女雇用機会均等法を守らなくちゃいけないでしょ。チャールトン・ヘストンみたいな屈強な男たちが、半分女の子に入れ替わったんだから、燃費も悪くなってしまうのも、当たり前よね。信じられる?

 後ね、建築関係も大混乱よ。新しいピラミッドやスフィンクスを建造してるんだけど、あれって、大きな石を運んで造るじゃない? 男女半々で運んでたら、いつまで経っても完成しないわよ。観光客が減っちゃう。そんなの、いやあん。

 それとね、宦官の扱いもむずかしいの。彼らはどっちなの? 私、わかんないもん。

 あ、もう一つ、問題があった。侍女の問題よ。これも、今まで通り女性たちだけってわけにはいかないじゃない? だからね、思い切って半分は男にしたの。そしたらどうなったと思う? ……お風呂のとき、私、目のやり場に困っちゃうのよ。だって男たちったら、大きな黒いものをぶら下げてるんだもん。……あら、やだ、はしたないこと言っちゃった。ふふ。

 だけど、私、頑張るわ。いろいろと問題は多いけど、男女雇用機会均等法を遵守して、世界に誇れる国家にするわ。さっきも言ったけど、国際社会とは協調しないとね。

 だから私、愛人についても考え直したの。アントニーとシーザーだけが愛人じゃ、いけないわよね。世界の流れに反してるでしょ? それでね、今度ね、楊貴妃と小野小町に来てもらうことにしたの。……ふふ、今から楽しみ。



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