異形の人型との戦い
第九〇話です。
楽しんでいってください。
ちなみに昨日にも一話投稿しているので読んでいない方はそちらからどうぞ。
俺は異形の人型を殺すと決めた瞬間から、思考をめぐらせていた。どうすればあの異形に打ち勝つことができるのだろうか、と。だが深く考えているとあの異形に攻撃されてしまう。いかに早くミュータントを殺す手立てを見つけるかが勝利の鍵となってくるだろう。
そんな思考をしている間にもミュータントは四,五回攻撃を繰り返してきている。すべて直線攻撃なのだが、すべてが超高速で事前に横っ飛びをしていなければ自分が爆散しているところだ。そんなことにならないためにも避けに徹しているのだが、だからこそ突破口を見つけるのにも時間がかかるだろう。
試しに次に攻撃してきた後に範囲系の魔法を放ってみようと思う。効くかどうかはわからないが…。
そして機会がやってきたので、ミノタウロスを倒した五種類のバースト系魔法をミュータントのいる方向に放った。放った魔法は地形を削りながらミュータントへ飛んでいき、そして直撃した。
「ぐおぉぉ!」
お?効いてる?俺が放った魔法でミュータントはもがき苦しんでいる。でも……すぐに持ち直して俺に突っ込んできた。
「うお?!全然聞いてないじゃん!そういえば五種類合わせたら消滅するはずじゃん!消滅してないってことはそういうことじゃん!」
全然聞いていないことに俺は驚愕し、錯乱した。ミュータントの攻撃を避けながら。自分の新作の魔法攻撃が効かないのならば自分にできることがなくなったも同然だ。まさか今ここで魔法を発明するわけにもいかない。創るとなると紙とペンを取り出さなければならない。だが、この敵だ、紙を取り出すだけで殺されるだろう。
魔法を創ることをやめて、次の案を出してみる。次は、ミュータントに向かって、闇のバースト系魔法である『ブラックバースト』を変換の式を入れる以前に込めていた量の魔力を籠めて放つ。高出力な吸収・消滅の息吹にさらされて消えるがいい。
「ぐ、があぁぁぁ!」
だが、そんなうまくいくはずがなく、ミュータントは一瞬だけ硬直したものの左手で『ブラックバースト』を受け止めて、切り傷をつくっただけでダメージらしいものを受けた様子は見受けられなかった。
ならば…………収納魔法で対抗しようではないか。今現在俺が持っている魔法の中で一番切断力が高い魔法と言えばこれだ。全部入る前に閉じてしまえばどんなものでも切断することができるのだ。正直これを戦いに使うとは思っていなかったが、こうなってしまったのならば使う以外選択肢はない。
だが、この魔法を攻撃に利用するにあたっての懸念がある。この魔法は自分から半径一メートルの範囲でしか発動しないのだ。だからこそ他の魔法を有効活用し、自分の間合いにミュータントを引き込んでタイミングよく閉じなければならない。
この魔法を有効活用するにあたって、自分の身体能力を四倍くらいにする。子持ちが悪くなって吐き気をもよおしたが、必死に抑えてミュータントの攻撃を避ける。次に五種類のバースト系魔法を『永続付与』を付けて、自分の八割の魔力を喰わせてミュータントに放つ。これにはミュータントもやばいと思ったのかすぐに回避行動に出るが、すでに範囲内だ。存分に食らうがいい。
「ぐ、ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!!!」
この魔法の攻撃を食らったミュータントが絶叫し、のたうち回る。放った魔法がミュータントいる地面でメラメラと炎のように揺れている。その上を自分の魔法で中和しながら少し足の肌をただれさせながら進んでいき、近づいて『異空間収納』でミュータントの四肢を切る。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!!!!!!」
胴体と頭だけになっておきながらなお、ずっと叫んでいるミュータントを見下ろしながら
「じゃぁな。」
と言いながらミュータントの頭を切り終える。
最後にバースト系魔法の『永続付与』を解く。これで胴体だけとなったミュータントだけが残った。
後は少し待ち、動いてこないか慎重に警戒して『異空間収納』で細切れにして収納していく。全部収納しきったところで警戒を解き、その場に後ろ向きに倒れこんで両腕を上にあげて声を上げる。
「か、勝ったぞ~!よっしゃ~!死ぬかと思った!!!!!」




