最後の空白
第八九話です。
楽しんでいってください。
周りにある四つの何もなかった空白を探索して、現在は中心の空白のある場所にきている。四つ探索して、すべて何もなかったという経験から、この最後の空白も何もないのだろうと半ば確信している。何かはあるだろうという希望は抱いているが、そんなものはごくごく僅かだ。今回自分がやったことは無駄だったのかなとあきらめかけている。
そんなことを考えながら『錬成』で空白に向かって通路を広げ、進んでいく。この五つ目の空白だが、この空白は普通の部屋四つ分の大きさが空白の範囲となっている。だから何かあってもおかしくないと思うのが普通なのだが、「今までの空白には何もなかったんだ。だからこの空白も何もないだろう」といった何の根拠もないことを半分、いや八割がた確信していて、慎重に行動することを疎かにしていたのがあだとなった。
「あ~。何も出てこねぇな。こんなことならすぐに下の階へと下ったほうがよかったんじゃねぇのか?はぁ。…………?なんだこれ?」
何もないところを探索したことを嘆きながら空白を掘り進めていると、よくわからない壁にあたった。
「よくわからん模様が描かれているな。……一応『魔力視』で見てみるか。」
あたった壁には模様が描かれており、なぜか違和感を感じて『魔力視』に視界を切り替えて模様の描かれた壁を見てみる。
「う~ん?よくわからんな。一見魔法陣にも見えるんだが……横に長い魔法陣なんて聞いたことないしな。とりあえず周りを掘ってみるか。」
『魔力視』でも特に異様な部分が見受けられないことから片方だけ通常の視界に戻しておく。片方だけなのは異変が起こってもすぐに気づくためと、地形を見るためである。
というわけで視覚を切り替えることができたので、早速周りを掘ってみることにする。
どんどん掘っていると、ふと奇妙な感覚に見舞われた。その瞬間、石の欠片と一緒に俺は吹っ飛ばされていた。
一体、なぜ?そう疑問を頭で思いながら、吹っ飛ばされた衝撃で痛む全身を起こす。おそらく何本かは逝っているだろう。だからすぐに回復魔法を使用して応急的な治療を済ませる。と同時に吹き飛ばされる前にいた場所を視界に入れる。そこにはよくわからない壁が大口を開けていて、その奥には異形の人型の生き物が前傾姿勢になっている途中だった。
「く、おっ?!」
それを見た瞬間俺は全力で右に横っ飛びをした。直後背後の岩壁が爆散した。その余波で俺はまたもや吹き飛ばされる。欠片も体のあちこちに突き刺さって激痛が走る。それを回復魔法で治しながら立ち上がって、戦闘態勢に入る。
今の状況を鑑みるに相当やばい状況だ。おそらくあの異形の人型には今の自分の全力でも勝つことは難しいだろう。
…………だからどうしたというんだ!地球に戻るためならあのくらいの障害、乗り越えられなくてどうする。どんな手段を使ってでも生き抜いて見せる!!




