試行錯誤
第八五話です。
楽しんでいってください。
変換の式を考え始めて数時間、ふと、思い当たることがあった。「そういえば光って電気からでも作れるよな」と。
地球では電気エネルギーを光エネルギーに変換してLEDなどを光らせていたことを頭の中に思い描きながらそれが実現できそうな魔法言語を選んで構築していく。具体的には、風魔法上位である雷魔法に描かれている変換の式に、光魔法の変換の式をアレンジしてちょちょいと加えてみた。
出来上がった変換の式を、試しに光魔法『ライト』の魔法陣に代入して試しに使ってみると、元の一割少ない魔力量で発動することができた。だが、魔力を電気に変換してからそれを光に変換しているので普通の魔法陣を使う時より多少多めの時間がかかってしまった。それに心なしか出力が弱い気がする。
創り出した変換の式の評価としては、使用魔力は少なかったが出力が弱くなっており、発動時間も遅くなっていることから、プラマイゼロというよりマイナスに突入してしまった。
…まぁ、最初はそんなもんさ。魔力効率は…まぁ、出力は弱くなってるけど、たぶんよくはなっている。何度も試行錯誤を繰り返していけばおのずと効率は良くなっていくだろう。
すぐに創ることは不可能だが、時間をかければもっとより良いものが創れるはずだ。
ということで、そんないいものが出来上がるまで探索に行くのは無しだ。不完全な状態で隠し部屋?に向かうのは良くない。万が一にも死んでしまわないような装備と体術、武術を完成させてから向かった方が安全に対処できる。
それに、どうせなら一回でクリアしてみたいのだ。
俺は、前のミノタウロスの時のように敵を見ていったん逃亡なんてことが自分として許せなかった。「妥協をしない」と決めたからには、すべての事に全力を注ぎ、常に最良を見極めねいかなければ、すぐに決意は曲がってしまう。それだけは絶対に阻止しなければならない。そんなことはあってはならない。
正直、攻撃力に関して言えばもうある程度の魔物ならば倒してしまう程の魔法を持っている。改良するとしたら、発動にかかる魔力を少なくし、連発できるようにするくらいだ。
いや、そんなことより今は回復魔法に使える変換の式を考えることが先決だ。理想としては、魔力効率が良くて、出力も元の一・五倍は欲しいところ。それに加え、発動時間の短縮が必要になってくる。こんなのどうやれっていう話だが、やり切らなければならない。理想も実現できなければ地球に帰ることもできなくなってしまう気がして怖いのだ。
だからこそやるしかない。今までの魔法言語に対しての知識を総動員して、理想を超えるものを完成させるのだ。




