嗅覚強化
第七四話です。
楽しんでいってください。
眠りから覚めてすぐに作業に取り掛かる。眠る前に反芻し続けた言葉を再度口にしながら。憎悪と怒りを、創る魔法陣に上乗せする。
今は嗅覚の強化魔法陣を創っているところなのだが、あんまりにおいを嗅ぎ取れても意味がないことに気が付いた。だったら任意で発動・解除できる魔法陣にすればいいじゃないかってことで、そんなギミックを魔法陣の中に組み込むことにした。
魔法言語を知るためにやっていた魔法陣の試し打ちの時に『永続付与可能』の技能は付与と解除以外に何ができるのかという実験もしたことがあった。その時に発見したのが『永続付与』の一時的解除だったのだ。それを魔法言語化できるんじゃないかとやってみたところ簡単にそんな言語が出来上がってしまったのだ。それを魔法陣に組み込むことによって任意で狙った魔法の効果を発動・解除できる仕組みが完成したのだった。
今回創っている魔法陣はただ嗅覚を元の十倍に強化するだけの魔法陣なのでそこまで大きくはならないだろう。そこに『永続付与』の魔法言語を組み込むだけで、せいぜい一メートルの大きさが限度だろう。
そんなことを考えながら創り上げていくこと約2時間(時間間隔はなくなっているので自分の腹時計)、嗅覚の強化魔法陣は完成させることができた。そして今度は視覚の強化魔法陣をと行こうと思ったのだが、視覚の強化はいろいろと盛り込もうと思っているのでかなりの時間がかかるだろうことが予想される。だから今回もしっかりと睡眠をとって思考が鈍らないようにすることを先決した。嗅覚の強化は増幅の言語を書き連ねて、発動・解除を取り付けるだけだったが思った以上に疲労がたまっていた。だからこそ睡眠を取り入れることにしたのだ。
寝る前には決意を反芻。これを習慣化していこうと思う。これで憎悪と怒りが収まるかどうかはわからないが、決意には変わりはない。逆に増幅させているだけかもしれないがやっておくことですぐに死のうとは絶対に思えない。必ず家族のところへと帰るのだ。
目が覚めて食事をとる。もう随分前から食事はすべて焼き魚だ。滝つぼからは白身魚しかいないので毎回淡泊な食事しかしていない。塩すらないので、そろそろ調味料が欲しいところだがどうしようもないのが現実だ。錬成で塩を作ることができるだろうかと試したのだが等価交換になるような物品がないのだ。人間は塩がないと生きていけないらしいがなぜかまだそのような兆候は体に出てきていない。
まぁ塩のことはどうでもいい。今は強化の魔法陣作成だ。今度の視覚強化の魔法陣はかなり難しい。なので追加する効果の魔法陣を小分けに作成してから後ですべてを統合した魔法陣を作成することに決めた。




