階下
第六三話です。
楽しんでいってください。
恐る恐る階段を降りていく僕。『暗視』で隅々まで見えてはいるが怖いものは怖い。いつ何時魔物が襲ってくるか分からないのだ。死ぬかも知れないという恐怖に耐えられる人などいないだろう。
そんな恐怖に押しつぶされそうになりながらも長い長い階段を進んでいった。階段を降り始めて五分くらい経っただろうかかなり長い階段だ。隅々まで警戒しながら進んだというのもあるだろうがそれを含めても長い階段だ。
階段を見飽きてきた頃、やっと地面が見えてきた。この階には何があってどんな危険が待っているのだろうと戦々怖々としながら警戒を続行する。近くに何もいないことを確認して安心する。
階段から降りてきた場所は十メートル四方で高さ四メートルほどの部屋になっていて、階段の対角には入り口のような穴が空いていた。部屋の中には魔物はいなかったのですぐに入り口の方へ行き、『錬成』で自分が通れる程の穴に収縮する。
階段が長すぎて上に戻るのも一苦労だなと思ったので『転移』用のマーカーを部屋の隅に設置する。これで場所を思い浮かべて『転移』すればここに戻ってくることが可能になった。
一度泉の部屋へと戻ろうかと考えたが、少し休養を取ってから探索へと繰り出そうと思う。戻って帰ってくるのに魔力を消費したら休む意味がないからだ。泉の水を飲めばいいのではないかと思われるが、探索前にお腹が重たくなったら動きが鈍くなって死ぬ可能性が多少なりとも上がってしまうので訓練の時以外の危険な場合にしか使わない事にしている。
探索に出るに当たって休憩がてら魔法陣を創ろうと思う。すぐに『錬成』で机といすを創り出し、紙を取り出して机に向かう。
今創ろうとしている魔法は温度が色で見えるようにする魔法だ。必要なときに必要な物が創れるのはこのクラウンのいいところだ。
そうしてできあがった魔法には『サーモアイ』という名前をつけた。ちなみに魔法陣の大きさは三メートル超えでかなりの大きさになった。普通に使ったのなら十秒で効果が切れる事にしてある。魔力の使用量も魔法陣が大きい割に少ないので決行使い勝手は良さそうだ。
これも『永続付与』することが出来るがそれでは使い勝手が悪い。なので片目だけ効果が残るようにして付与を取っ払う。すると片方は『暗視』で周りがみわたせ、片方は『サーモアイ』で生物がいれば分かるようになった。
慣れるまでは時間がかかるだろうから今回は使わない事にして、しっかりとしまっておく。探索以外の生活でならしてから探索に取り入れようと思う。




