あがいてやる!
第四八話です。
楽しんでいってください。
爪が異様に発達した熊に襲われ、右腕を失った僕に為す術はない。今はどうやってここから逃げだそうかと考えを巡らせてはいるが、未だにいい案が浮かばない。死が刻一刻と迫ってきているというのに何もいい考えが浮かんでこないないのだ。
「フゥー…フゥー……」
考えを巡らせているというのに死の恐怖と、右腕の痛みでそれが阻害されてしまう。ダメだ、今は生き残る方法を探し当てなきゃ。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
うっとうしいことに自分の呼吸の音がとても大きく聞こえてきた。
もう一か八かやるしかない。護身用に持ってきた魔方陣のどれかを使ってひるませるしかない。
「地よ、爆発よ、ここに地爆を望む『破砕爆』!」
そう詠唱と魔法名を言い終わったら熊の立っている地面が膨らみ始めた。これはこの前訓練場でいろいろと突っ込まされた魔法だ。威力は申し分ないと思われるがどうだろう。
「パァァァァァン!!」
そんな風に考えていたら膨張が最高点に到達したのか膨らんだ地面を吹き飛ばしながら上方向に爆発した。こんなのが回り全体に飛び散ってたら自分もやられてるな。最初から指向性をもっていてよかったと思う。
だがこれであの熊がやれるわけがない。右腕の痛みに耐えながらもさらに警戒を強くし、立ち上がって逃げようとした。そのとき、
「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「ひっ!」
熊が怒って雄叫びをあげたのだ。雄叫びにびっくりしたのと恐怖したのとで小さな悲鳴を上げて爆発させた方向を見てみると砂埃がかかっているがほとんど無傷の熊がいた。
さっきの魔法は相当な威力だったはずだ。なのに無傷って。もうこれ以上の威力の魔法は無い。これで手詰まりだ。とりあえず逃げようと熊に背を向け全力疾走を始めたが、すぐに熊が接近してきて背中を蹴り飛ばされた。
「ぐあっ!……かはっ!」
蹴り飛ばされて地面に落ちることなく直線上に吹っ飛び、壁にぶつかった。すぐに立ち上がろうとするが身体全体が痛くて力が入らない。これは骨を何本かやっているな。これでは逃げられない。何か無いのか。生き残るための秘策はないのか。………そうだ部屋を創ってから創った魔方陣を試し打ちしてみるか。生き残りたいがこの状況じゃもう無理だろう。どうせ死ぬのなら創ったやつの効果だけは見ておきたい。
魔方陣に魔力を流す。最後の最後だから魔力を1残して全部注ぎ込もう。自爆覚悟で魔方陣を使う。
さよなら、皆…………。




