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八じゅうに
「どういうことです」
不安になったのかケルンが隣のマドレーヌに問う。
声にはあからさまに険があった。
「天馬とよほど相性が良かったのか、それとも……」
「それともなんです?」
ネリキリーはマドレーヌに話の続きを即した。
「何か不測の事態が起こったのかもしれません」
マドレーヌの言葉はケルンを激昂させるのに十分だった。
「不測の事態って、二人はアイオーンが連れ去ったのですよ。何が起こったっていうんですか」
「おそらく魔物に襲われたか」
「魔物、アイオーンの群れに襲い掛かる魔物なんて」
「ケルン、ここはオーランジェットだ」
信じられないと呟くケルンにネリキリーは静かに言った。
「何だよ。お前は心配じゃないのか」
「もちろん、心配はしている。ただ、二人は冒険者だ。しかも一人は中級で、一人は幻獣の守護がある」
加えて、あの天馬の長がいるなら、大抵の魔物に対処はできるとネリキリーは思っていた。
そう、魔物に遅れを取るはずがない。あの二人なら。