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王道、ふあんたじぃ  作者: 野月 逢生
第一章 
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にじゅういち

庭仕事に夢中になりすぎて、3時をかなり過ぎて寮に帰った。

 ネリキリーは部屋には行かず、食堂に直行した。

 ファンネルは、夕食も食べていけば、と申し出てくれたが、それは断った。

 まず、寮母さんに心配をかけたくなかった(彼女は何故かネリキリーを10歳の子供のように扱うことがままある)

 それに、ファンネルもルベンス講師もざっくばらんな気性ではあるけれど、かなり年上の人なので、どうしても緊張してしまう。

 でも、ファンネルの料理は旨いことが分かったので、もう少しお互いが慣れて、その時また誘って貰えたら、必ずお受けしようとネリキリーは決意する。


 休日の食事の席は平日とは違って自由だ。

 いつもはケルンとイリギスと一緒に取る。今日は一人なので食事の乗った四角いお盆を持って空いている席を探す。

 すると級友のマルト達がおいでおいでと手招きしてきた。

 ネリキリーは手招きしてくれたマルトの横に座る。マルトは講義の時に席が隣なのでわりと仲が良い。

「今日は、一人か?イリギスとケルンは?」

「二人とも今日は家に行っていて戻らない予定、だけど……」

「子供を置いて出かけるとか、育児放棄か」

 ジャンニがネリキリーをからかう。

「誰が子供だよ」

 お約束の突っ込みをネリキリーはした。確かに学年で一番小さいが、背の高い二人に挟まれているので余計に低く見えるだけだ。

「ここにいる全員」

 しごく冷静にフェノール。彼はさらりとした毒舌家なのである。

「それはそうなんだけどもよ」

 ジャンニが頭を大げさに振った。


「ネリキリーも昼間見かけなかったな。街にでも行ったのか?」

 食べ終えたマルトが大きく伸びをした。ネリキリーは食べ物を嚥下して質問に答える。

「違うよ。しばらくオルデン師の知り合いの手伝いをすることになったんだ。だから」

「大変だな」

「そうでもないよ。それにお礼も貰えるから」

「それは良かったじゃないか」

 マルト達はすぐに納得顔をしてくれた。奨学生ではないが、子供でもできる仕事をして小遣いを稼ぐのは当たり前の庶民派。

「正直、助かる」

 ネリキリーは味はそこそこ、量は多い寮の食事を書き込むようにして食べた。いつもより食べるのが早い。


「だけど、もうすぐ試験だよな。それは大丈夫なのか」

 ジャンニは憂うつそうだった。年に四回ある試験は二週間後。そろそろ対策用の勉強に入る頃合いだ。

「僕はあまり試験対策の勉強はしないから」

「それで、常に120人中30位内って嫌味か。これだから天才は」

「天才ってイリギスみたいな人のこというんだよ」

 高等学院(リゼラ)では、試験ごとの上位30名まで張り出しがある。

 イリギスは総合点で一回を除いて主席を取っていた。イリギスを一回だけ下したのは何をかくそう、今一緒にいるフェノールだ。

 ネリキリー自身は魔法学については、一、二を争っている。

 しかし、総合の最上位は19番。

 ケルンはたまに30位内にはいることもあるくらいだが、経済学は5度、一番を取っている。これはイギリスより多い。

 もっとも、天下の王立高等学院(リゼラ・デ・リア)。下位との差はほとんどない。総合では名前がないが、科目別では張り出されているなんて奴がちらほらいた。


「イリギスは天才(ゼスター)というより、天災(デスター)

 マルトが人差し指を左右に振ってしたり顔をした。

天(神)(スター)の依怙贔屓物件」

 フェノールまでそんなことを言う。彼はかなりの努力家で、年がら年中、教科書やら参考文献やらを読んでいる。イリギスは一度読んだら、内容をほぼ覚えてしまうと言っていた。

我らが天(マ・スター)よ、俺にもお恵みを」

 ジャンニがおどけて話を締めくくった。


 彼らの言葉に悪意はない。

 イギリスが自分たちの仲間であることを受け入れているがゆえの発言だ。

 学年対抗で行わる頭脳体力を競う「がらくた集め」も、イリギスが指揮を取って何度か上級生に勝ちを奪っていた。

 優秀なイリギスが、自国の高等学院(リゼラ)ではなく、ここを選んだことを好ましく思っているのが分かる。

「上流階級の壁」が無くなってからは尚更だ。

 高等学院(リゼラ)の男子は、すごいものを認めるのに、やぶさかではないのだ。


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