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シュガレット草の群生はすぐに見つかった。

 丈が高く、芦に似た姿だ。所々に白い光が明滅している。

  ネリキリーは気配を消して近づくと手にした武器をシュガレット草に振るった。


  ザクリとした手応え。


  群のおよそ三割を刈り取ると、間をおかずにスプラウトに蹴りを入れて、逃げていくシュガレット草を追いかけた。


  シュガレット草の足は速い。


  人の足ではほぼ追いつけない。徒歩で静かに群生に近づいて刈り取るのが普通だが、ネリキリーは馬を駆り、鎖鎌で刈る。

  ゆえに、他の初心者より効率的で、シュガレット草が疲弊しないので、質も良い。

  一刻もせず荷で運ぶ量は収穫した。


  荷を積むとネリキリーは、クックルの巣がある灌木へと向かった。

  以前に見つけた巣がいくつかある。

  クックルは家畜化もされているので、食用の玉子自体は手に入りやすい。が、人里ではつがいになりにくく、ほぼ、無精卵。

 従って、数を増やすためには野生の玉子を採らねばならないのだ。


  彼は手慣れた様子で、巣のある灌木から少し離れたところに撒き餌を投げた。

  しばらく待つとクックルが飛び降りてくる。

  入れ替わるように彼は灌木に登り巣を覗く。


  数は3つ。


  野生のクックルの減少を防ぐため、雛と玉子が合わせて3以下なら採ってはいけない決まりだった。

  仕方なく、彼は木から降りた。クックルは悠然と餌を食べていた。人間が玉子を盗らないことを知っているかのように。


  2個、1個、3個、0、2個、2個。


  いくつかの巣をはしごしてネリキリーは玉子を集めた。

  時おり、遠くに同じ冒険者の姿が見える。

  初級階級の冒険者達は、魔物が出る確率の低い、平原のとばくちで行動することが多いが、薬草採集などが主な依頼なので、何となく自分の持ち場が決まっている。


  ネリキリーは玉子を集め終えると、町へ引き返した。

  フラウ蜂の蜜は明日に回すことにしたのだ。


  陽はまだ中天にも登っていない。


  メーレンゲの西門に着くと、これから狩りに出かける冒険者の一団と出くわした。

  その中の一人、カレヌがネリキリーに声をかけてきた。

「やけに帰ってくるのが早いな、何かあったか?」

  いいやとネリキリーは答えた。

「クックルの玉子だ」

「ああ」

  カレヌがネリキリーの言葉にうなずいた。

  クックルの玉子を採取したら、速やかに依頼主に届けなければならないのは常識だからだ。

  クックルの雛は刷り込みが強い。

  親と思った動物(人)と離すと雛とは思えないほどの鳴き声を成鳥に生るまで出し続ける。従って孵化前に依頼主に届けなければならない。


「そっちは?」

「ワーム狩りだ。八つ葉楓の林にワームが例年より早く付いたらしい」

「そうか、気をつけて」

「お前もそろそろワームくらいならいけるんじゃないか?」

「いや、まだまだ」

  ネリキリーは首を横に振って続ける。

「お前のようにはいかないよ」

  カレヌはネリキリーと同じ時期に冒険者になったが、生粋のオーランジェットっ子であり、子供の頃から冒険者を志していたという。地力がネリキリーとは違う。

「そうか、まあ、何かあったら声をかけてくれ」

「ありがとう」

 二人は手を上げあって会話を終わりにした。


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