表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/90

いち

おおらかな気持ちでお楽しみにいただけたら、嬉しく思います。


万が一の保険として、別立てで、最終話までのあらすじを、先の日付で予約投稿しております。



 

  空の王たるは誰や?

  速き翼もつ天馬か。

  猛き鷲獅子(グリフォン)か。

  死しては甦るフェニクスか。

  否、否、否。

  見よ

  昼夜を飛びゆくかの勇姿。

  硬き鱗のその四肢と

  力強きその両羽

  爪は名工の剣の如く

  眼差しは輝ける星さながら。

  大いなる声は生あるものに

  畏怖と安堵を授けたり。

  幻獣の王たる竜、ドラゴーン。

  かこそが、空の支配者。



  そんな古詩を思い出すような風景に彼は見入った。

  旋回していた天馬が西へと飛び去っていく。

「さすがは始まりの町、メーレンゲ」

  幻獣の国と呼ばれるオーランジェットに来て一年。

  幾度となく見た光景だが、見るたびに故郷との違いをネリキリーに感じさせる。


  幻獣達が飛び立った先は、町の西に広がるクレーム平原。彼の現在の狩場でもある。

「さて、俺も行かないとな」

  誰ともなく呟くと彼は身を翻して

【ようこそ、勇気ある諸君】

 と書かれた扉を開いた。

「おはようございます。ネリキリーさん、いつも早いですねー」

  明るく響く少女の声に、彼は軽く手をあげて応えた。

  メーレンゲの町の冒険者組合(ギルテ)の受付嬢にして看板娘マドレーヌは、彼の無言の挨拶にも笑顔を返してくれる。

  彼、ネリキリー・ヴィンセントは、依頼が張りつけられた木版に向かった。


  一番数が多いのは、シュガレット草の採取。

 これを使わない魔法薬はないうえ、足がはやい薬草だから需要も多い。

  これは組合(ギルテ)がまとめて受注してある恒常依頼である。

  が、数をこなせば中々の金額になる。

  次はフラウ蜂の蜜の採取。

  大人しいフラウ蜂だが、寄生生物のルッカルッカが付いていたら厄介だ。


  ネリキリーの目を引いた依頼が一つあった。

  クックルの玉子だ。

  依頼の数は、20個。報酬が相場よりやや高い。ただ、期限が明日まで。


  初心者であり、単独行動のネリキリーの階級にあう依頼はこれくらいだった。


「マドレーヌさん、この3つを受ける」

  張りつけられた紙を剥がして、自分のギルド証と共にマドレーヌに差し出す。

「はあい」とマドレーヌは紙を受け取って、承認の玉をそれらにかざした

  階級との格差があれば、赤か黄色に玉が光る。


  承認なら緑。

  赤は契約不能。

  黄色は一考せよとの警告。この場合、装備品の変更やチームを組んだりすれば受けることができる。


  今回はむろん緑。


「クックルの玉子の依頼を違約された場合、依頼金額の1割をお支払いただくことになりますが、よろしいですか?」

  ネリキリーは黙ってうなずき、承認の玉に手を置いた。

  彼の魔力が、契約の魔法を呼び出し、依頼票とギルテ証を結びつける。契約が完了し、玉が元の透明に戻った。

「契約が成されました。では、速やかに完遂させてくださいますように」

  マドレーヌが言いながら、ネリキリーにギルテ証を返してくれた。

  彼は、ああ、と返して組合(ギルテ)から出た。背後にマドレーヌの呟きを聞きながら。

「ネリキリーさんは、いつもながら慎重ですね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ