ふたりの研究と恋愛.
「冷たい....いや態度じゃなくてお前の体温がだよ」
「そうですか!?すいません.仕事終わりにすぐ会いたくて帰ってきたもので」
まあ,いいや.今日は二人が出会った記念日というものだ.本当ならば温かい心で暖かく過ごしたい.だけど素直になれないのだ.蝋燭の火をふたりでせーの消した.
「そういえば,あの案件どうなったんですか?」
あの,案件それは深層学習の数理的解明に関する研究についての企業との共同研究だ.企業のくせに数理的な研究に興味あるとこは珍しい.日本では有名な会社だ.
「それか,まあ手づまりだよ.式の導出が手こずっててな」
「そうですか,僕も考え見たんですが,どうしても定理2のところからどう導入が不自然でそこが上手くいっていないのかなって」
「俺もそう思ったよ.まあ今日はふたりの記念日だろ.それらしいことをしようぜ」
「はい.」
そういってソファーに手を掛けてそーと額をふたりで合わせて,視線を合わせた.
「ふっ.,.」
「なんで笑うんだよ」
「いや,こういうの慣れてなくて」
「俺だって慣れてないっつーの」
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「あっ,,,」
「痛かった?ごめん」
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こうしているといろんな事を忘れられる.疲れたときは一緒に過ごすのが一番だ,
そうして,事が終わると再び二人で議論を始めた.
「ここで,Wesserstein距離を導入して,βをこうしてやって」
「そうだな,そこはそれでいい.でもWesserstein距離を導入するのは大げさすぎないか?」
「そうですかねえ,ここは自然にこうなると思うんです,」
議論に熱が入ってきた,仕事を終わりにお互い集まってこうして議論をする.それが日課となっている.
「ちょっと休憩しよう,一日おいた方がこれはいい気がする.」
「そうですね.アイスコーヒー飲みましょう.いれますよ」
「お,サンキュー」
コースターを添えて,そっと机に置いた.
「映画でもみるか」
「そうですね.あの続きを見ましょうよ」
自然に眠くなり二人は一緒にソファーで肩を合わせて眠りについた.
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「木下君,そろそろ論文の投稿の締め切りだよ.」
「あ,そんな時期でしたか.もう少しでできそうなんですよ,今週中にはお渡しします」
「そうかい.楽しみにしているよ」
もうそんな季節だったのか,さっさと仕上げないとな.今日もあいつと議論して仕上げないとな.
講義の前はだいたいアイスコーヒーを飲む.冬でもそれは変わらない,
(あ,採点もしなきゃいけない.これを乗り切ったらとりあえず時間取れる.頑張ろう...)
ヘッドホンをして集中モードになるとしよう.