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7話 私の初恋

ちょっと長めです。今回は、雪野さん視点です。

 さ、さすがに家の中まではダメだったけど、今日のデートで少しは振り向かせることができたかな…


 私は自室のベットに座り、今日のデートを振り返った。


 やっぱり…!一番はおんぶよね!あんなに密着して……しかも、あんなに顔が近くに…!思い出すたびに顔がにやけてしまう…!えへへ…!


 あと!パンケーキの食べさせあいも上手くいったし!あぁ…またあーんしてほしいな…


 「理沙の言ったとおりにやったけど…案外上手くいったと思う!あ、学校で理沙にお礼しとかないと!」


 今回、デートをするにあたって私は、同じクラスの木村理沙に相談した。だって、初めて男の子とデートするから、何してをすればいいかわからなくて…


 でも、あの時の話が役に立つとは…

 

 私は、北条くんをデートに誘った後、帰り道のことを思い出す。


 「ねぇ、理沙。理沙はデートしたことあるの?」


 「私?あるよ。彼氏がいた時は何回もしたよ」


 「そうなんだ…ど、どうなの?やっぱり楽しかった?」


 「そりゃー楽しかったよ。その時はね。だって好きな人と一緒に入れるんだもん」


 「そっか…」

 

 やっぱり楽しいんだ…。デートしたことないから分かんないけど。


 「でも、凉葉の場合はちょっとパターンが違うよねー」


 「え?」


 「だって、付き合ってもないのにデートに誘ったんだよ?普通は恋人同士でデートはするもんだよ?それを通り越して、よくデートなんかに誘ったよね」


 「うぅ…そ、それは…」


 だって、あの時はこ、告白しようと思ったけど…恥ずかしくて…咄嗟にデートしよって言っちゃったもん…


 「でも…どうする?せっかく好きな人とのデート。止めるわけには行かないでしょ?」


 「それは…もちろん…そうだけど…」

 

 だってもう誘っちゃったんだもん!それを後から「ごめん!やっぱなし!」とは言えないよ…好きな人に…。


 「なら!デートをちゃんと楽しまないとね!あと凉葉、今回のデートで北条くんをメロメロにしないとね!」


 「え!?」


 メロメロに…!?で、でも、どうやって…!?


 「そんなの簡単だよー!抱きついちゃえばいいんだよ!」


 だ、抱きつく!?そ、そんなこと…!


 「で、できるわけないじゃん!もう!なに考えてるの!」


 「えー、そんなことないと思うけどなー。凉葉に抱きつかれたら男なんて瞬殺だよー」


 「だ、だからできないって!」


 も、もう…!なに考えてるの理沙は!そ、そんなことしたら私、変な女に見られちゃうじゃん!


 「凉葉はもう少し自分に自信を持てばいいのに。けど、どうしようね?うーん…なら…食べさせあいとか…あとは…かわいい仕草するとかはどう?」


 ふむふむ…それは気になる…


 「た、例えば?」


 「お互いの食べ物をあーんして食べさせたり、上目遣いでちょっとかわいく見せたり、あとは、ちょっと露出のある服装で行ったりとか?」

  

 ほうほう…なるほど…


 

 「あと!ある程度の密着とか!」


 「だ、だからそれは…!」


 もう!なんでそんなに密着を進めるの!?恥ずかしいじゃん!


 「でも、凉葉?北条くんを振り向かせたいんでしょ?」


 「うん…」


 「なら、頑張ってアタックするしかないよ!大丈夫だよ!凉葉がその気になったら絶対メロメロだよ!」


 「そ、そうかな…で、でも、アタックするしかないよね…そうじゃないと、北条くんは振り向いてくれないよね……。が、頑張るよ理沙!私、やれるだけやってみるよ!」


 「うん!頑張って!凉葉ならきっと大丈夫だよ!」


 「うん!ありがとう!理沙!私、頑張るよ!」


 そうしてデートを迎えたけど…どうだろう?私的には頑張ったと思うし…上手くいったと思う。


 でも、北条くん少しは私のこと意識してくれたかな…?頑張って大胆なこともしたし、少しは意識してくれるといいな。あとは…


 ……北条くん私のこと思い出してくれたかな…?あの時のこと忘れちゃったのかな…




 11年前―――




 私と北条くんの出会いは保育園だった。当時5歳だった私は、とても辛い毎日を過ごしていた。


 5人組の男の子に毎日いじめられて、私は物陰に隠れて泣いているだけ。


 上履きを隠されたり、石を投げられたりして、体は傷だらけで、痛くて痛くて…本当に地獄のような毎日だった。


 「痛いよ!なんで、こんなひどいことをするの!?」


 いじめられてる理由がわからなかった。私は何もしてないし、ただ楽しく過ごしていただけなのに…。なのになんで…私は理由が知りたかった。でも返ってきたのは――


 「そんなの楽しいからに決まってるじゃん!そんだけ!」


 その言葉を聞いて、私は絶望した。ただ楽しいだけ。それが理由。なによそれ……


 それからもいじめは続いた。地獄のような毎日。もちろん行きたくはなかった。親、先生に言いたかった。けどできなかった。


 「もし、お前の父ちゃん、母ちゃん、あと、先生に言ったらどうなるかわかってるよな?」


 そう、私はずっと脅されてたの。顔に傷があって、親に心配されても「大丈夫!何でもないよ!」と私は、ずっと嘘を言い続けた。


 耐えるのが必死だった。女の私が男の子に敵う訳がない。ただ耐えるだけ、それが私の唯一のやれることだった。


 いつになったらこの地獄は終わるんだろう。あと何日すれば終わるんだろう。誰か助けて…もうこんな毎日嫌だ…

 

 もう限界だった。私の心身は限界を越えていた。いじめに耐え、誰にも言えない我慢の日々…それはもう限界だった。  

 

 (もうダメ…もう嫌だよ…なんで私だけこんなひどいことされないといけないの…誰か……誰か助けてよ!)


 私は堪えきれず、ある時、みんなの前で突然泣いてしまった…


  「お、おい。あいつなんで泣いてるんだ?」「え?し、知らないよ!そんなの!」

 

 もちろん、みんなは驚くよね…だっていきなり泣き出すもん。でも、その時はもうダメだった。涙が止まらなかった。まだいじめに続くのかという恐怖が私の心を完全にボロボロにした。


 けど、みんながざわついている時に、一人の男の子が私の所にやって来たの。

 

 「ねぇ、どうしたの?大丈夫?」


 泣きじゃくってる私の所に、優しく声を掛けてくれた男の子、それが北条くんだったの。


 北条くんとは、全く話したことなかったし、その時初めて話したの。

 でもね、その時の私は、北条くんに頼るしかなかった。誰かに助けてほしかった。だから、私は泣きながら言ったの。


 「た、助けて……お願い……も、もう嫌だ……恐いよ…」


 「どうしたの?何があったの?話してみて」


 私は、5人の男の子からいじめを受けてることを話した。これまで受けてきたこと全てを話した。北条くんは私が話してる時、ずっと私の手を握って聞いてくれた。すごく心が落ち着いた。真剣に話を聞いてくれて…本当にうれしかった…

 

 全てを話し終えた私に、北条くんはこう言った。


 「わかった。じゃあ、そいつら、俺がぶっとばしてきてやるよ」


 「え?だ、ダメだよ!一人で行くなんて!勝てるわけないじゃん!」


 絶対、勝てるわけ無いと思ってた。だって相手は5人だよ?でも北条くんは――


 「任せろって!絶対負けないって!俺がお前を救ってやるよ!」


 その言葉を聞いて、私は止めてなんて言えなかった。


 そうして、北条くんは私をいじめてる五人組に一人で向かって行った。


 「おい。お前らだな。悪い奴は…!」


 「ん?なんだお前………いって!な、何すんだお前!」


 (うわぁぁ…いきなり殴っちゃったよ…)


 私は隠れてその様子を見つめていた。

 

 「絶対許さねぇ!お前ら!覚悟しやがれ!」


 「はぁ?お、俺ら、別にお前になにも!」


 「うるせえ!」


 北条くんは一人で五人と戦った。無理だよ…絶対勝てっこないと思ってた。でも…


 (え…うそ…本当に一人でやっつけちゃったよ…)


 信じられなかった。だって一人で五人やっつけちゃうんだもん。


 北条くんは、隠れている私の方を指差して


 「はぁはぁ…お前ら、二度とあの子にひどいことするな!もし、ひどいことしたら、もっとボッコボッコにしてやる!」


 「「「「「ご、ごめんなさい!!!も、もうしません!!!!!」」」」」


 五人組は今にも泣きそうな顔で、すごい勢いで逃げていった…


 私は北条くんに駆け寄り、


 「……だ、大丈夫?」


 「…へへ!大丈夫だって!へーき!へーき!」


 北条くんは笑ってそう言ったけど、体はボロボロ、服は破けてるし。強がっているのはもちろんわかった。


 「ご、ごめん…なさい。わ、私のせいで……」


 「だーかーら!大丈夫だって言ってるだろ!?何回も言わせんなって!」


 「で、でも…」


 「けど、これでもうあいつらは、いじめたりなんかしてこないぞ」


 「え……本当…?」


 「ああ!もし、いじめてきたらまた俺がぶっとばしてやるよ!だから心配するな!俺がお前を守ってやるよ!」


 その言葉を聞いた時、私は涙が止まらなかった…。やっと地獄から解放されて、自由になれるんだ…そう思ったら涙が止まらなかった……。


 

 「…うぅ…あ、ありがとう……ほ、本当に……ありがとう!」


 

 私を地獄から救ってくれた北条くん。私のために戦って、傷ついて、守ってくれて…本当にありがとう…。


 「そういえば…まだ名前聞いてなかったな!ちなみに、俺の名前は北条楓な!お前の名前はなんだ?」


 「わ、私?私は雪野凉葉!これからよろしくね!」


 「おう!よろしくな!」


 これが私と北条くんとの出会い。そして私はこの日から彼のこと

が大好きになった。


 でも、その後、北条くんは親の都合でどこかへ引っ越しちゃったけど、私はいなくなった後も、ずっと彼を想い続けてた。短い間だったけど、彼と一緒だった日々はかけがえのないものだった。


 だから、同じ高校だと知ったときは本当に驚いた。本当に嬉しかった。彼と同じ学校生活を送れると思うと、いてもたってもいられず、直ぐに彼に話しかけようと思ってたけど…


 久しぶりだし…緊張しちゃって…全く話しかけることができなくて…だから、理沙に協力してもらって北条くんに話しかけて、告白しよう!と思ったけど…そう、上手くはいかないよね…私の根性なし…。


 私のことを覚えてなかったのは、ちょっとショックだったけど…

しょうがないよね…だって、昔のことだもん。でも、いつか思い出してくれるといいな。


 北条くんが私を思い出すまで待ってるのもいいけど…今は彼と楽しい学校生活を送りたいな!あの頃のように、とても楽しい日々を過ごしたい!そ、そのために、これから頑張ってアタックしないと!


そ、そして!必ず、彼のか、彼女になるんだから!よし!そうなったら!早速計画を立てないと!絶対!振り向かせてやるんだから!

覚悟しといてよね!北条くん!


 


 



 

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