11話 大切な人
「お腹減ったなー」
「私もお腹空いちゃった。そろそろご飯食べよっか」
「じゃあ、フードコートに行ってみよっか」
今の時間は12時。お腹が空いてきて、そろそろ昼食にしようということで俺たちは園内のフードコートに向かおうとした時、
「あ、ちょっと待って!…じ、実はね」
雪野さんが何かを思い出したかのように、俺と木村さんを呼び止めた。鞄の中を開けて何か大きな箱を取り出しけど、ん?それって、
「弁当を作ってきたの。たくさん作っちゃって…私一人では食べきれなくて、だから皆でどうかな?」
おぉー。雪野さん、あなたは美少女で性格も良くて、さらには女子力も高いとは。完璧過ぎる…欠点はないのか。
「え?凉葉、ホントにいいの?」
「うん!二人が良かったら…」
「ありがとう!じゃあお言葉に甘えて!」
「雪野さん。ありがとう」
「えへへ…それほどでも……」
雪野さん、照れてすっごいニヤニヤしてる。うれしそうだな。
俺もお言葉に甘えて、雪野さんの弁当を食べることにした。
「なら、あそこにテーブルと椅子があるからそこで食べよっか」
俺たちはテーブルと椅子がたくさんある広場へ移動した。
それにしても、雪野さんが作った弁当を食べられるなんて俺って幸せ者だな。どんな弁当何だろ楽しみだな。
「じゃあ、開けるね」
雪野さんがそう言って、テーブルに置いた三段式の大きな弁当箱を開けた。す、すごいな。
おにぎり、サンドイッチ、唐揚げ、卵焼き、煮物、野菜、果物、色んな食べ物があって、綺麗に飾り付けもしてあり彩り豊かで美味しそうだ。
「じゃあ、食べよっか!」
「「うん!」」
俺たちは手を合わせて、
「「「いただきます!」」」
と元気良く言って、弁当を食べ始めた。
よーし、まずどれから食べようかなー。じゃあ俺が好きな唐揚げから食べようかな。
唐揚げを箸で取って、口の中に入れた。
「…………うん。美味しい。すっごく美味しいよ。」
衣はサックサックで中は柔らかくてとてもジューシーで、とても俺が好みの唐揚げだ。
「え?ほんと!?良かったぁ……。美味しくなかったらどうしようと思ってたよ」
「……うーん!美味しい!凉葉!この卵焼きどうやって作ってるの!?今度教えてよ!」
「え!?う、うん!いいよ!」
木村さんも雪野さんの弁当をとっても美味しそうに食べるようだ。他のやつも食べてみようかな。
そうして、俺たちは雪野さんが作ってくれた弁当を堪能した。どれもおいしくて食欲が止まらなかった。雪野さん料理も上手くてすごいなぁ。完璧人間すぎる。
「あー食った食った。ごちそうさま。」
もうお腹いっぱいで動けない。おいしかったー。
「ごちそうさま!ありがとうね凉葉!すっごく美味しかったよ!」
「ありがとう!二人に喜んでもらって良かった!」
すると木村さんが、
「ねぇ凉葉!また今度作って来てよ!また食べたい!」
どうやら雪野さんの弁当に感激してしまったみたいだ。本当に美味しかったからなぁ。
「北条くんはどう?また食べたいよね!?」
「うん。俺もまた食べたいな」
俺と木村さんの意見に対して雪野さんは、
「うん!分かった!また今度作ってくるね!」
笑顔ですごく嬉しそうにそう言ったのだった。
◇ ◇ ◇
「じゃあ次、どこにいく?」
「うーん…どうしようね…」
昼休憩をした後、俺たちはどこに行くか悩んでいた。二人とも俺が絶叫系がダメなことを配慮してくれているから、なるべく安全なやつを選ぼうとしてくれている。すごく嬉しいけど、二人に申し訳ないな。
「うーん…あ!じゃあさ!アウトレットに行こうよ!」
その時、木村さんがそんなことを言った。アウトレットか…いいね。あそこは何かといっぱいあるし楽しめるだろう。
「うん、いいね。俺は賛成。」
「うん!私も賛成!アウトレットに行こ!」
雪野さんも賛成らしいので、俺たちはアウトレットモールへと向かうことにした。
「……あ!私ここに行きたい!ねぇ凉葉、ここで服見てみない?」
「そうだね。新しい服欲しいし見てみようかな」
アウトレットについた後、木村さんと雪野さんはどうやら服が欲しいそうなので、俺たちは女性服が揃っている有名なブランド店に入った。
それにしても女の人が多いなー。そりゃそうだよな。ここ男性服はあまりないから当然か。
店内の客はほとんどが女性だった。俺たちと同じ高校生くらいの人がたくさんいた。
「うーん、これ何かはどうかな?」
「もうちょっと明るい色にしようかなー?」
二人はお互いに服を選んだりして相談しているようだ。時間かかりそうだし、俺も服見てこようかな。
俺は男性服がある場所へ移動して、色んな服を見てみることにした。
「うーん、これいいけど値段がなあ…もう少し安かったら買えたのに」
服を買う予定なかったからあんまり財布に金入れてなかったな。仕方ない、今回は見るだけにしようかな。
「北条くん!ちょっと来て来て!」
すると、突然木村さんが俺の所へ慌ててきたけど、何の用だろう?
「どうしたの?そんなに慌てて」
「いいから!早く早く!」
何があったんだろうか?
俺は神妙な顔つきで木村さんの後ろをついて行った。
「よし。北条くん。ちょっとここでじっとしてて」
木村さんに連れてこられたのは試着室の前だ。何でこんな所に?そう考えていると、
「おーい。もういいよー。」
木村さんが中にいる人に向かってそう言った。
すると、カーテンが開いて中から女性が出てきた。
「え………………ゆ、雪野さんなのか…?」
俺はその人を見た時、直ぐに雪野さんとは断定できなかった。
上は白のブラウス、下はデニムパンツを履いており、とても涼しそうで綺麗な服装だ。また、スタイルが良くて手足も長いためスラッとしておりとても魅力的だ。さらにはその人の圧倒的な美貌もあって本当にモデルや女優に思ってしまうほど美しく、別格な存在と感じてしまった。
「う、うん。どうかなこの服。似合ってるかな?」
「…うん。似合ってる。すごく似合ってると思うよ」
俺は雪野さんに見とれてしまって、いつの間にかそう口で言っていた。
「あ、ありがと……。で、でも…そんなに見られると…ちょっと恥ずかしいな…」
「え?あっ!ご、ごめん!」
俺、そんな見とれてたのかな…。し、しっかりしろ!もしかして気持ち悪いと思われたかな?
「ううん……べ、別に…嫌じゃないから…」
良かった…。た、助かったのかな…。
「で?どうする?凉葉。その服買うの?」
「うん。買うよ。だって……」
ん?雪野さんどうしんだろ?何か俺を見てるけど……はっ!や、やっぱり俺のことを気持ち悪いと思ってたり…………。あの目は、たぶんそうだ!と、とにかくもう一回謝った方が良いよな。
「あの…雪野さん、さっきは本当にごめん。その、ジロジロ見ちゃって……本当にごめん!」
俺は、頭を下げてもう一回彼女に謝った。
うぅ…や、やっぱりそうだよな。さすがにあんなに見たら嫌だよな。俺はなんてバカな男なんだ…。絶対嫌われたよ…。
「………」
雪野さん、何で何も言わないんだろう?やっばり怒ってるのかな?
俺は顔を上げて見てみると、雪野さんは目がキョトンとしており、何で謝ってるか分からないような顔をしていた。
すると、
「ふふっ………な、何でそんなに謝るの?だから嫌じゃないって言ったじゃん」
急に、笑いだしてそんなことを言った。
「え…?」
俺は何で雪野さんが笑っているか分からなかった。
「何でそんなに謝るの?私が北条くんのこと本当に嫌いになったと思った?」
「!」
俺は目を見開いて驚く。完全に図星だった。
そうだよ。俺は雪野さんに嫌われたくないんだよ。もちろん木村さんにも。絶対に嫌なんだ。
今日はジェットコースターに乗らせれてめちゃくちゃな目にあったり、一緒に弁当食べたり、色んなところ回ってりできて楽しかった。俺は雪野さん、木村さんと一緒に行動できてよかったと思う。
でも、もし、嫌われたら二人とは二度と関われないかもしれない。もう二度と二人とは思い出を作れない。
俺はそんなの嫌だ。絶対に。
でも、それは俺の考えすぎだったかもしれない。どうやら雪野さんは俺のことを全く嫌いとは思ってなかったようだ。そうじゃないとあんな風に笑わないもんな。
雪野さん話を続ける、
「ふふっ…大丈夫だよ。心配しなくて。私が北条くんを嫌いになるなんて絶対ないもん」
自信を持った顔でそう言った。
「何でそんな胸張って言えるの?」
俺は雪野さんにそう聞いた。なんでそんなに自信があるんだ…。
すると、雪野さんは「ふっ」と笑って、
「だって……北条くんは、私の大切な人だから。」
優しい顔で、そう俺に言った。
「た、大切な人……それってどういう……」
俺は気になって雪野さんに聞いてみたけど…
「ふぇっ!?そ、それはね!だ、だだからそ、その……」
何故か顔を真っ赤にして、いきなり慌て出してしまった。
「凉葉ー。早く買いなよーもうそろそろ集合時間だよ。」
「えっ!?そ、そそうだね!直ぐに買ってくるね!」
木村さんに促され雪野さんは試着室に入った後、すぐに元の服装に着替えて出てきた。
「ちょ、雪野さん!さっきのは一体どういう…」
俺は雪野さんにもう一度聞いてみたが、
「え?……そ、それは、ま、また今度で!!」
「えっ!ちょっと!」
雪野さんは俺から逃げてレジへ向かってしまった。
その後も俺は雪野さんに聞こうと思ってもすごい速さで逃げられてしまうし、結局聞き出すことはできなかった。