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9話 遊園地は苦手なのに…

 色々あった四月が終わり五月を迎えた。


 五月になると俺の通っている柏葉高校では遠足という行事がある。各学年行くところは違うが、今年二年生は遊園地に行くことになっている。


 去年はたしかハイキングだったかな。あれはあれで辛かったなぁ…あんまり楽しくなかったし。だから今年の遠足は期待してたのに……。ツイてないな。

 

 どうやら大きな遊園地に行くらしいけど…今の俺のテンションで分かる通り全く気分が乗らないんだよな。


 それもそのはず、俺は遊園地の醍醐味である絶叫系マシンが全く乗れないからである。

 

 ジェットコースターみたいな速いやつは無理だし。ぐるぐる回ったり、高いやつも嫌だし…つ、つまりヘタレなんです。俺は。


 だから絶叫系マシンを乗ってる人見ると「この人たち本当に同じ人間か?」って思えてくる。はたしてあれは楽しいのか?めっちゃ笑顔で乗ってるけど、てか何であんなのに乗れるの?マジで分からん。

 

 はぁ…もう本当に気分が乗らない…。あ、そうだ。近くにアウトレットモールがあったからそこで時間を潰せばいいんだ!よし!そうしよう!


 …これで遠足が少しは楽しめたらいいけどな。服とか、靴、飲食店もいっぱいあるしそこなら大丈夫だろ。

   

 「あ、そういえば。次の授業移動しないといけないんだった」


 時計を見たら、授業開始5分前だった。いけないいけない。考えすぎてたわ。早く行かないと。


 俺は教材を手に持ち、教室を後にした。


 


 廊下を真っ直ぐ進んで行って角を曲がろうとした時、突然背後から声を掛けられた。


 「あ!ちょっと!北条くん!待って待って!」


 俺は声がした方へ振り向くと、見知ったショートヘアーの女子生徒がこっちへ走って来ているのが分かった。


 「どうしたの?木村さん?そんなに慌てて」


 「ちょっとね!北条くん聞きたいことがあって!」


 「聞きたいこと?」何だろう?相談かな?


 「北条くんは、明日の遠足どう過ごす予定なの?」


 「え?遠足の予定?」


 全然予想してなかったこと聞かれてびっくりした… 

 

 何故そんなことを?謎だ。けど、予定くらい教えていっか。

 

 「うーんと、近くのアウトレットモール行って時間を潰すつもりたけど…それがどうかしたの…?」


 「ふーん…なるほどね…」


 ん?何がなるほどなんだ?どういうこと?


 「あの…予定がどうかしたの?」


 「あ、ううん!ちょっと聞きたかっただけ!ありがと!じゃあねー!」


 「え?あ、ちょっと!」


 そうして、木村さんは行ってしまった。何だったんだ?一体?

 

 まぁいいか気にしなくて。明日は自分なり精一杯楽しむとしますか。あ、やば!授業始まっちゃう!

 

 そうして俺は、授業に遅れないように急いで教室へ向かった。


 ちなみにギリギリ授業には間に合った。……危なかった。


 



 






 そして遠足当日


  (ど、どうしてこうなった……)

  

 俺は、横にいる二人に目を向けた。


 「よし!これから!遊び倒すぞ!」


 「うん!北条くん、いっぱい乗り物乗ろうね!」


 まず一人目。遊ぶ気満々の木村さん。そして二人目。これまた木村さんに負けじと元気な雪野さん。どうして二人が俺と一緒にいるのでしょうか?


 なぜこうなってしまったのか。


 それはおよそ15分前の出来事である。


 ここに到着して全体で点呼し終わった後、よしアウトレットに行こう!と歩き出そうとしたらいきなり二人が来て、


 「ねぇ!北条くん!今日一緒に行動しようよ!」


 「う、うん!一緒に行動しよ!」

 

 「え?でも…」


 最初は断ろうと思ったよ?でも、


 「えーそんなこと言わずに一緒に遊ぼうよー!」

  

 「お願い北条くん……。ダメかな…?」


 ぐっ…こ、これは…ずるいぞ…なんて卑怯な!


 そ、そんなこと言われたらダメって言えませんよね!?しかも学校一の美少女からそんなこと言われたら!あと、知らないと思うけど木村さんも結構というか、めっちゃ美人だし…。ちなみに彼女にしたいランキング四位である。(第一回二年男子による『この子彼女にしたいよ総選挙』投票結果)

 

 つまりだ、学校の美少女二人から迫られたら断ることなんて不可能なんだ!「も、もちろんいいよ!」と言うしかないのだ!


 「おい…なんでまた北条が…」「……爆発しろ。リア充め」

 「雪野さんに続いて、木村さんもかよ…鬼畜じゃん」

  

 そのおかげで現在周囲の男子の視線がもうすごい。いつ殺されてもおかしくはない。常に死と隣合わせで怖くて怖くて仕方ありません。…おい!誰だ鬼畜って言ったやつ!俺は鬼畜じゃねーわ!


 いかん…落ち着け俺、そんなことよりこれからのことについて考えるんだ。


 「あのさ、二人とも。盛り上がってるとこ悪いんだけど…俺、絶叫系乗れないんですけど…」

 

 そうなんだよ。まずそこなんだよ。遊園地来ても絶叫系乗れなから意味ないんだよな。だからずっと待ってるの辛いんだよな。

 

 「「………」」


 二人の顔がキョトンとしている。あんだけ乗る気満々だったのが嘘のようだ。そりゃそうだよな…せっかく誘ってくれても一人が乗れなかったら楽しくないもんな。


 「ごめん。誘ってくれたのはうれしいけどやっぱり遊園地に行くのは…」


 一人が楽しくなかったら二人に迷惑だし行く意味ないもんな。二人には悪いけど、俺は遊園地の方には――――


 「え?何言ってるの北条くん。行くに決まってるじゃん」


 ………ん?えっと…俺の話聞いてました?俺乗れないんですよ?


 「あのー木村さん?だから俺…」

 

 「乗れなかったら克服すればいいんだよ!乗れるようになったらめっちゃ楽しいって!」


 ぜ、全然聞いてないし…!一方的に進められてる…!


 い、いかん!このままだったら絶対遊園地ルートになってしまう!何としても阻止しなければ!


 「ちょ、ちょっと!待って!だから!俺乗れないって!」


 俺は二人に説得するが…


 「大丈夫だよ!理沙も言ってるけど乗れるようになったら本当に楽しいよ!だから行こ!遊園地!」


 雪野さん!!あ、あなたまで一方的に進めるとは!少しは俺の気持ちを尊重して…あ!ちょっと!二人とも!て、手を引っ張らないでー!!


 「ほら!行くよ!」


 「早く行こ!まずは…あ!あれから乗ろうよ!」


 「ちょ、ちょっと二人とも!俺の話を…!」


 結局、俺は話を聞いてもらえず強引に遊園地に連れてかれたのだった……


 生きて帰ってこれるかな…俺。



 

 

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