表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
980/1506

978 ノリトの成長

 季節は移り変わるもの……。


 俺です。


 様々なことがあった冬も明け、我が農場にもまた春が巡ってきた。


『我らの季節であるぞぉおおおおおおッッ!』

『やっほぉおおおおおおおおいッッ!!』


 向こうで桜と梅も熱狂しておる。

 煩い。

 植物はあんなに騒ぎ散らかさないものと記憶していたが?


 まあよい。


 とにかく今重要なことは、寒さで眠りについていた冬が明け、多くの生命が活動を再開する春となったことだ。


 それは自然と共に生きる俺たち農場の者たちにとって一際重要なこと。


 新たな一年の始まりはまさに今日ぞ!

 よろしくお願いいたします!!


 そんなことで全く新たな気持ちで取り組む春の日に、まず真っ先に注目すべきことがある。


 我が息子のことだ。


 ジュニア?

 ジュニアも可愛く日々の成長目覚ましいが、今回のところは違う。


 我がもう一人の息子……次男ノリトの件についてだ。


 我が聖者家の二番目の子として生まれたノリトは、暦のないこの世界では正確なところは計りかねるが満三歳。

 今年四歳になるはず。


 そんな年齢ゆえに、すっかり成長が著しくてなあ。

 立つことも歩くことも喋ることもすっかり達者になった。


「ぱぱー、ぱぱー、しんとーめっきゃくー」

「はいはい、今日も元気だなジュニアは」


 今喋ったのはジュニアだ。

 紛らわしい。


 とかく親というのは我が子の成長が気になるもの。


 いつ立つの?

 いつ喋るの?


 いつおっぱいを卒業して離乳食に移行するの?


 タイミングに個人差があるのはわかっているものの、余所の子と比較して一日でも遅れれば、そわそわ落ち着かなくなるのが親の常だ。


 しかも第二子、第三子ともなれば過去のデータも積み立てられているから益々比較の対象が多くなる。


 この頃のジュニアはもう喋ってたっけ?

 今のノリトは?


 そう感じてしまう。


 しかしそういう意味ではノリトは実に標準的な成長ペースで、オレたち親を心配させることなくすくすく育ってくれた。


 もはや庭先を駆け回れるぐらいに足腰健常だし、言葉も随分上手くなった。


 今日もうららかな春のお庭で、兄ジュニアや番犬ポチらと一緒に駆け回っているが、そんな中でも元気に言葉を発している。


 そんなノリトの言葉……。


「おちろ、かとんぼー」


 ……。

『落ちろカトンボ』と唱える三歳児。


「ノリト待ってー」


 庭先で、兄ジュニアが、弟であるノリトを追いかけている。

 その周りをポチたちが愉快そうに駆け回っている。


 鬼ごっこでもしているのかな?


 肝心のノリトは、三歳にしてはけっこうしっかりした動きで掻い潜り……。


「みえるぞ、わたしにも敵がみえるー」


 ……。

 なんだかどこかで聞いたような言葉を使うんだよな。


 そんな気になる言動をしながらも、兄やポチたちに捕まることなく駆け抜けていって、目先に置かれた缶を蹴り飛ばした。

 缶蹴りしていたのか?


「でてこなければ、やられなかったのにー」


 ……。

 うん、やっぱり気のせいじゃねえ。


 ノリトの語彙にあからさまな偏りがある。

 誰だ? ウチの子に語録を仕込んだのは!?


 もちろん俺ではないぞ! 厄介なオタク親じゃないんだから!


「みとめたくなーい、わかさゆえの過ちー」


 いやいやいやいや……!

 違う違う違う……!


 認めたくないんじゃなくて、断じて俺じゃないんだってば。


 しかし考えてみればわかる通り、このファンタジー異世界に語録を仕込めるような存在がいるわけがない。

 唯一の可能性があるとすれば俺。

 その俺は無実です。本当です、信じてください。


「わかさゆえのあやまちー」


 だから違うんだって!

 俺自身もうそんなに若くもないし!


 もうラ○大尉より年上になったんじゃないか俺?

 だからさ。


 ……あの頃、年上だった人たちがどんどん年下になっていく……!


 いや、そうじゃない!

 デ○ン公王はまだ俺より年上のはずだ!!


 いやいや、そういうことでもない。


 ウチの可愛いノリトが、面倒な語録使いになっていることが問題なんだ。


 本当ならば、その語録を仕込んだ誰かがいるはずだから、ソイツを見つけ出して詰め寄りたいところなんだが。


 ……しかし色々考えてみて、やっぱり犯人はいないんじゃないかなあと思えてくる。


 だって、常識的に考えてやっぱりファンタジー異世界に語録使いはいないと思うんだ。

 そしてノリトは自然のうちに語録をインプットされたんではないかと思う。


 何よりジュニアの前例があるからな。


 ただジュニアの芸風を鑑みるに、あの目覚めた人だって出生と同時に『天上天下唯我独尊』って言ってたし、出生と同時にてことは誰かから言葉を教わったタイミングはないってことだろう?


 それに倣ってジュニアも誰に教わることなく『天上天下唯我独尊』と宣言したって問題ないじゃないか。


 だから次男のノリトが『宇宙の心は彼だったんですね』などと言いだしてもそれは。どこぞの迷惑なヤツに仕込まれたんではなく真に、彼の心の奥底から湧き出た言葉なんではないか!? と思う。


 それはそれで怖いが。


 しかしノリトが変な芸風を身に着けたことで親としては一層絡みづらくなった印象がある。


 ガ○タの息子なんて絶対親からしてみたら厄介だよ。

 登場人物全員反抗期みたいな世界だぞ。


 だからもうア○ロみたいな息子を持ったら地獄かな? と恐れていたが、しかしもう一人のノリトの親……母プラティに取って見ればそんなことはなかった。


「ジュニア、ノリトー、そろそろお昼寝の時間よー、お外遊びはお仕舞いにしましょうねー」

「まだだ、まだおわらんよ」

「もう、そんなこと言って。お昼寝しておかないと夜までもたないでしょ?」

「そんなおとな、ぼくがしゅうせいしてやるー」

「残念、子どもは親に勝てないものです。さあママの言う通りにお布団に入りましょうねー」

「プラティはわたしの母になるかもしれなかった人だー」

「『かもしれない』じゃなくて、実際母よ」


 凄いプラティ。

 ノリトの凄まじいまでの面倒くささを見事なまでにいなしている。


 これが母親の強さなのか?

 あるいは真の陽キャにとって、語録使いのオタクなど取るに足らない存在なのか。


 結局抵抗虚しくノリトは母親に捕まって寝室へと連れ去られていった。

 その後ろ姿をポチたちが遊び足りなさそうに見送っていた。


 ……まあ。

 ウチの農場の者たちも、誰もがキッチリ成長を積んでいるということで。


「こういんやのごとく、しょうねんがくなりがたしー」


 俺の隣でジュニアがのたまっていた。

 コイツも大概独特な育ち方しているな……。


 そこへプラティが戻ってきて……。


「何やっているのジュニア! アナタも当然お昼寝するのよ!」

「やだー、めざめたものはなにものからも、じゆうー」


 ジュニアも成長したとはいえ、まだまだ母親にとっては子どもなのだった。


 人は成長する、成長しても子どもが今すぐ大人に変わるわけではない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9co2afbzx724coga2ntiylfcbvr_efq_1d0_1xo_1qyr7.jpg.580.jpg64x0jhdli8mom2x33gjealw194q_aqu_u0_16o_rzuz.jpg.580.jpg
書籍版20巻&コミック版11巻、好評発売中!

g7ct8cpb8s6tfpdz4r6jff2ujd4_bds_1k6_n5_1
↑コミカライズ版こちらから読めます!
― 新着の感想 ―
[一言] 天神様のせいじゃないの?
[一言] >落ちろかとんぼ 木星帰り。 木星=ゼウス。 つまりまたゼウスのせい。
[気になる点] あ、ジュニアのは芸風なんだ✨❤✨
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ