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929 農場軍出陣

 ってなわけで……。


 なんか知らんけど俺たち農場メンバーでダンジョン攻略するところを冒険者さんたちに披露することとなりました。


 多いな見学ネタ。


 見学する側の冒険者さんたちも事のなりゆきに戸惑い、動揺する。


「なんでさらに見学を……?」

「いやいや、あの農場の住人たちの戦いぶりが見れるならむしろ僥倖……!」

「もはや伝説に謳われる農場の戦力がいかほどのものか、窺うにはいい機会……!」


 割と興味津々だ。


 俺たちも期待に応えないわけにはいかないので、相応の対応を取らせてもらうことにしよう。


 そして出てきたのは毎度おなじみのオークゴブリン軍団。


「モンスターが!? 一体何で!?」

「モンスターはダンジョンを守る連中だろ? そのモンスターにダンジョンを攻略させて意味あるのか?」


 ……と口々に疑問を発する。


 しかし彼らはまだわかっていないようだ。

 我が農場が擁するオークやゴブリンたちの恐ろしさを!


「しかもオークやゴブリンは擬人モンスターだろう? 魔法で操ることもできるぐらいの弱小モンスターではないか。あんなのをダンジョンに投入して、捨て駒にして道を切り開こうって言うのか?」


 な、何を失敬な!?

 農場のオークやゴブリンは大切な仲間だぞ! それを捨て駒だなんて是非とも発言を撤回していただきたい!!


 俺が心底怒りに震えていると……。


「……よいのです我が君」


 おお、オークボ!?

 今回はキミも出るのか!? ゾス・サイラとの新婚生活はもうオッケー?


「農場の実力を見せつけるのに我らが欠席してどうします! 農場の恐ろしさの真髄を我らの手で思い知らせてやりましょうぞ!」


 ゴブ吉まで!

 農場戦力の二枚看板が揃って出撃とはさぞかし見応えがありそうだぜぇえええッッ!!


「なッ!? なんだあのオークは!? 遠くから見ても覇気に溢れている!?」

「あっちのゴブリンなど眼光の鋭さが鷹のようだ! とても有象無象のモンスターとは思えない!!」


 実戦経験豊かな冒険者たちも、醸す空気だけで異様さを見抜くとはさすがだな。


 オークボゴブ吉、それぞれリーダーの威厳でもって檄を飛ばす!


「皆の者! 今日は我が君の偉大さを知らしめる大チャンスぞ!」

「我らの成果は、そのまま我が君の威厳に繋がることを忘れてはならぬ! 常に規律正しく殺して奪え!」


 彼らにつき従うオークゴブリン軍団が歓声で返す。


 その響きが怒涛で、周囲で聞いている者たちの肝を縮めるほどだった。


「……あの、擬人モンスターってあんなに気迫に溢れているものだっけ?」

「人並みの意識は持たないから、実際そんなに騒がしくはないはず……!?」


 しかしウチのオークゴブリンたちは実に元気があって、気力に満ち満ちているから見れば戸惑う人もいよう。


 そしてオークゴブリンたち、意気揚々とダンジョンへ乗り込んでいく。


 早速モンスターの出現だ。

 手荒い歓迎とばかりに大挙をなして押し寄せてくる。


 なんだか翼があって牙があって、舌がベロンチョと伸びて……。

 ちょっと食用には向かなそうなモンスターかな?


「これならただ蹴散らすのみ……。迅れ、パワーブレイザー!!」


 オークボが斧を振ると、その勢いに噴き出す闘気の激流が津波みたいになって広範囲に拡散。

 その闘気津波に飲まれたモンスターたちは一瞬も待たずに粉々にされて消え去った。


 しかしながらさすがにそれ一発ですべてを消し去れるわけではない。


 わずかに討ち漏らされたモンスターが、それでも凶暴さ全開で襲い掛かってくると……。


「斬影刃……!」


 今度はゴブ吉が手に持った鎌で……。

 一瞬もしないうちに全モンスターを細切れにしてしまった!


 その動きは、終わったあとでやっと感知できる。


 光にすらも気づかせない最高超速攻撃。それがゴブ吉の真骨頂であった。


 力のオークボ、速さのゴブ吉。


 最近新婚ホヤホヤで色ボケしているものかとばかり思っていたが、さすがにやる時はやる二人であった。


「久々の出番でオークボリーダーもゴブ吉リーダーも気合入ってんなー」

「でもあの二人が本気出すとオレたちの活躍の余地がないんだよなー」


 他のオークゴブリンたちは活躍の場をかっさらわれて手持無沙汰になるほどだ。


 そして見学の冒険者たちは……。


「オークやゴブリンがあんなに強いなんて……!?」

「あんなの並のダンジョンならすぐさま制圧されるだろ!?」

「もはや蹂躙」


 と驚き通しだ。


 このままオークボゴブ吉たちで攻略してもいいんだが、それでは刺激が同じでマンネリ化してしまうかもなので、違う牌も用意しよう。


「ここで選手交代とまいります! ここからは代わってレタスレート、ホルコスフォンコンビ!!」


 こちらも我が農場が誇る武闘派。

 いつの間に武闘派になっちゃったんだろうなって言う疑問も尽きぬが、この二人を出撃させて勝利をもたらせないなんてことはまずないから恐ろしい。


「真打ち登場よ! 豆が生み出すパワーの凄まじさをご覧あれ!」

「豆のパワーが一千万、それが発酵してして一千万、合わせて二千万パワーの納豆です」


 その戦闘能力は農場随一と噂されながらも、基本豆のみをモチベーションとしているために、その行動は突発的かつ意味不明なことが多いからオークボゴブ吉よりは扱いづらいんだよな。


 こういうお祭りイベントでは大抵参加してくるんだけど。


「これも豆の素晴らしさを一人でも多くに知らしめるための布教活動よ! 豆を食えば強くなれる! そのことをアピールしましょう!」

「了解ですレタスレート」


 豆のこととなればとことんまでテンションの上がる二人。


 それを目の当たりにした冒険者の方々の感想。


「何だあの女たち……!?」

「どっちも綺麗で可愛いけど? あの屈強なオークやゴブリンの直後で正直拍子抜けっつうか……!」

「あんな女子供に何ができるかってんだよ……!?」

「と言うかあの女性レタスレート王女?」


 はい、そこの真実に行きついた人、記憶消そうか?


 しかしご本人らはマイペースに突き進み、すぐさま次の階層のモンスターと出くわす。

 またもや大挙して押し寄せてきた。


「よし! フォーメーション豆よ、ホルコスちゃん!」

「了解ですレタスレート」


 あの二人が魔物の群へ突っ込んだところで何の不安もないところがもうおかしいと思えなくなった。


 まずレタスレートが突出し、群れに突入していく。


 本当にダイブin群れの中。


「「「「うひゃうぉおおおおおおッッ!?」」」」


 それを見た多くの人たちが驚愕し、絶望したことだろう。

 なんのかまえもなく不用意にモンスターの集団の中へ入っていったのだ。


 もはや彼女には『死』しかなかろうと。


 しかしこんなところで終わるような簡単な命のレタスレートではない。


「豆神拳奥義! 鬼は外・流星爆花!!」


 なんか技名的なものを叫んだら、モンスターの群からポイポイと何かが上方へ向けて飛ばされている?


 それは……まさにモンスターそれ自体だった。

 群れを構成する。


 それがヒョイヒョイ複数順番に上空へ射出されていくのだ。

 順番と言っても猛スピードなので正味毎秒数体という速度で射出されるから、ほぼ上空へ機関銃ブチ撒いているような感じ。


 あれこそレタスレートがモンスターを凄い勢いで投げ飛ばしているに違いない。

 彼女のいつの間にか身に着いた怪力を持ってすれば容易いことであった。


 しかしレタスレートは何故あんな上空射出を?

 一度天高く投げ飛ばすことでしかるのち重力に引かれて落下して地面に激突の墜落死を狙っているのか?


 しかし、あのコンビはそんな甘いタクティクスに基づいてはいなかった。


「頼むわよホルコスちゃん!」

「了解ですレタスレート」


 何と上空で待っていたのは天使ホルコスフォン。

 空に放られて身動きの取れなくなったモンスター数十体へ、基本兵装のマナカノンの砲門を向ける。


「ハイマットマナカノンフルバースト」


 そうかこれは、レタスレートとホルコスフォンの連携必殺技だったのか!?


 まずレタスレート敵を放り投げ、空中で回避も防御もできない無防備状態でホルコスフォン必殺のマナカノンを叩き込む!


 しかもホルコスフォンのビーム砲には無限追尾機能が備わっているからどれだけの数も一度に処理可能!


 一旦レタスレートに狙われたら放り投げられるしかないので、もはや撃ち抜かれる最後は確定!


 何て恐ろしい連携技なんだ!?

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書籍版19巻、8/25発売予定!

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↑コミカライズ版こちらから読めます!
― 新着の感想 ―
[気になる点] 種割れ描写を入れると更にw
[一言] ホルコスちゃんや、そのモード何処ぞのC.E世界で見た事あるぞ…w
[一言] ・・・ モモコちゃん ・・・ この娘に勝つのは無理です! ピンフォール勝ちを拾うのも至難でしょう。 スターティング時点では圧勝だったのに ・・・ "聖地" の理不尽なパワーアップ効能が …
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