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797 真実の終末

 真実のジャーナリストにして巨悪へ立ち向かう報道戦士シンビスハンメだ。


 やった! やった! やったぞ!

 大スクープを掴んだ!!


 謎の覆面レスラー、ミス・マメカラスの正体はレタスレート王女!!


 かつてこの人間国に君臨し、民を虫けらのごとく虐げてきた王族の生き残り!


 あぁ!? 王族は民を見下すのが当然だから粛清していいんだよ!!


 そのレタスレートは、敗戦の際に魔族どもらによって処刑されたと発表されていたのに!


 まさか生きとんしゃったとは!?


 虚偽の情報を広めるなんて明らかなルール違反だぞ!

 権力者はいつもそうやって重要なことをオレたちジャーナリストに隠す! 卑劣なマネをするな! ちゃんとオレたちに真実を伝えろ!!


 ……とにかく。

 これは想像以上のスクープだ!


 これも覆面レスラーの正体に注目し、鋭い質問をズバッと斬り込んだオレの手柄というわけだな!!

 記者会見での俺の質問がなければ、この事態に至ることがなかったんだから!


 さすが真実のジャーナリスト、オレ!!

 やはりスクープを嗅ぎつける嗅覚が優れていたってことなんだろう!


 あらゆる汚い権力者は、ジャーナリストからの真実の追及から逃げられないのだ!!


 これだけでももちろん大スクープで、これを一面に載せたらウチのペーパーは大売れウハウハ間違いなし!


 しかしそこで満足してしまうのは二流だ!

 オレのような一流正義ジャーナリストはそれよりさらに上を目指す!


『上』とは何かって!?

 報道をもって大衆を操作する。それこそがマスメディアの本分ではないかね!?


 特に今回など愚かな大衆を思うままに動かせる絶好の状況!

 これを利用できないヤツはジャーナリストを名乗る資格なんかないね!!


 いいか?

 王族というのは象徴であり人の心を集める格好の道具にもなるのだ。


 旧人間国の王族が生きていたとわかれば侵略者・魔族への反発心をいまだに抱く者たちを集める象徴となりえる。


 打倒魔族への狼煙が上がるんだ!!


 特にレタスレートは、今日の試合でとんでもない勝利の結果を打ち立ててくれた。


 魔王妃アスタレス。

 人魚国の王妹プラティにそれぞれ勝利した。


 それは魔族より人魚族より人族が最強だという何よりの証明だ!


 やはり人族こそ世界でもっとも優れた種族、世界を支配するに相応しいということで多くの人族が奮い立ち、再び戦争へと突進していくに違いない!


 報道しがいのある戦乱の時代が再びやってくるんだ!

 ヒャッハー!

 退屈な平和何てクソ食らえだぜ!


 レタスレート本人は魔族との共存など情けないことを言っていたが、本人の意思などどうでもいい!


 他人の考えをコントロールするのがジャーナリストだからな!


『レタスレートに挙兵の意志あり』『国民も望む』『魔族死すべし』などとあることないこと次々記事に書き立てれば、いずれはそれが真実へと置き換わり開戦せざるを得なくなるだろう!


 それこそがジャーナリストの力!

 世界はオレの思うが儘!

 そのためにこそ報道はある!


 さあ、このためにも他の報道機関と一致団結し、反魔族&挙兵を促す報道を一斉に流すんだ!

 こういうのは大勢でやってこそ意味があるんでな!


 なので今こそ報道協会の集まりに向かったところ……。


   *   *   *


「シンビスハンメ、お前の記者資格を剥奪する」

「は?」


 いきなり報道協会の会長から言われた。


 なんでだ!?

 オレほど正当でジャーナリストの鑑と言うべき人間はいないだろうに!


 不当な措置だ! 陰謀だ!

 お前たちを批判する記事を書いてやるぞ!


「お前の行動は目に余る。これ以上好き勝手にされては記者そのものへの社会的信頼が低下し、我々の各記事はすべて顧みられなくなるだろう。それを避けるためにもお前を記者会から追放せねばならんのじゃ」


 わけがわからないぞ!

 オレは常に誰よりも公正でクリーンで、事実にもとづく報道をしてきた!


 そんなオレに記者の刺客がないというなら、この世にちゃんとした記者なんているか!!


「この期に及んでそこまで自信満々にほざくか? よかろう、証言者をここへ」

「はい……」


 お前は後輩!?

 同じ新聞社で、オレが世話してやってる後輩が!

 恩を仇で返しやがったのか!?


「何が恩ですか。オレはアンタから世話になった覚えなんて一度もありませんよ。それどころかオレがモノにしかけたスクープを横取りしたり、そのせいで情報元から恨まれて取材拒否されたり……」


 なんだと!?

 そんな覚えは……ないな!?


「恨みは前々から積もっていましたけれど、今回ばかりは我慢の限界っすよ。レタスレート様を煽って戦争を起こそうなんて一記者がやっていいことじゃない。オレは記者としての正義を重んじてアンタを告発します」


 はぁ!? 何言ってんだバカタレ!


 記者としての正義を重んじるならなおさらオレに賛同しなきゃダメだろうが!


 オレこそが正義! オレこそが真実!

 それが正当ジャーナリスト、このオレなんだからよ!!


「アナタが事実無根のウソ記事を平気で掲載したり、取材した人物の発言を捻じ曲げたりしている証拠も協会に提出しています。言い逃れできるなんて思わないでくださいね」


 バカッ!

 なんでそんなことをバラす!?


 世の中には秘密にした方がいこともあるってわからんのかッ!!


「というわけで、協会としては金輪際お前に記者は名乗らせん。お前の所属していた記事機関も解散ということになる」

「オレも職を失うことになりますが甘んじて受け入れますよ。同じペーパーを作りながらアンタの暴走を止められなかったって罪がオレにもある。その審判として一から他社への就職活動をしていきますよ」


 お前なんかが記者を辞めようと知るか!!


 それよりもオレだ!

 この正当、真実、正義、真理、正確の塊であるオレがジャーナリストを辞めるなんて世界の損失だろうがぁああああッッ!!

 そんなことが許されるかぁああッ!!


 そうだ! オレは何と言われようと記者を続ける!

 認めないって言っても所詮お前らの中だけの話だろう!


 オレが一人で記事を書き、販売したとしてもそれを止める権利はお前たちにはない!


 お前たちは指をくわえてオレのスクープが戦争を起こすところを見ているがいい!

 それこそが真のジャーナリズムだと思い知らせてやるわ!


「……たしかにお前ひとりで報道活動を続けていくというなら、我々にそれを止める権限はない。好きにするがいい」


 はッ、そうだろうそうだろう!

 自分らの無力を噛みしめてのたうち回るがいいわ!


「ではその件はここまでとして……お前に会いたいという人がおる。帰る前にその人と話しておくがいい」


 は? 誰だ?

 オレの書いた記事に感動して協力を願い出るスポンサーか。


「S級冒険者のピンクトントン殿じゃ」

「ふぎゃあッ!?」


 ドアを開けて現れる、男かどうかも見分けがつかないガッシリとした大女!?

 汚らしい獣人の冒険者野郎が何故ここに。


「キミに直接訴えたいことがあるとのことでの。何しろ先日、お前のいらん質問がきっかけで始まったレタスレート様のマスク剥ぎデスマッチは、彼女主催の格闘団体で起こった出来事であったからの」


 それがどうした!?

 イベントを盛り上げられてお礼を言ってもらいたいぐらいだねこっちは!


「穏当に終わったからよかったものの一歩間違えたら戦争になってたかもしれない危険な状況じゃった。そしてピンクトントン殿からしたら自分の団体の花形レスラーを失うかもしれない瀬戸際であったからの。言いたいこともあるだろうよ」


 おい待て!

 オレは真実を追求して……、真実を追い求める者を邪魔していいと思っているのか!?


「真実大いに結構。しかしながら真実を暴露することで不利益を被った者がいて、そういう者から恨みを買うということも記者なら覚悟しておくべきだ。その怒りが正当だろうと不当だろうとな」


 ピンクトントンの大女は片手だけでオレの頭を掴んで持ち上げたッ!?


 なんという馬鹿力だッ!? これだから汚らわしい獣人はッ!?


「ふふふ……、今回はアナタの発言に大きくお世話になりましたねえ? 危うくウチの稼ぎ頭を失うところでしたぁ……!」


 ぐおぉ……!? 笑顔が、怖いッ!?


「それ以前にも私が傭兵時代から、私に関する記事をよく書いてくださいましたねぇ。あることないこと片っ端から……アナタのウソ記事で魔王軍との内通が疑われた時は危うく死刑にされるところでしたよぉ?」

「この人実は凄いレベルでの差別主義者ですからね。獣人で活躍する人への批判記事酷いもんですよ」


 後輩ぃいいいいいッッ!?

 余計なことを言うな! 沈黙も美徳だと知らんのか!?


「今までのお礼をしたいといつも考えてたんですよぉ。たった今失職されたんですよね? だったら新しい就職先をご紹介しますよ? 冒険者って言うんですがね。善意での紹介ですからお気になさらず……」


 嫌だッ! 放せッ!

 オレは世界を支配するジャーナリストなんだ! 泥臭い冒険者なんて嫌だ! 放せぇええええええッッ!!


「じゃあ早速ダンジョンにでも潜りましょうか? 大丈夫運が悪ければ内部で死んで帰還できないだけですよ。さぁ行きましょう~」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] × 「今までのお礼をしたいといつも考えてたんですよぉ。たった今失職されたんですよね? だったら新しい就職先をご紹介しますよ? 冒険者って言うんですがね。意での紹介ですからお気になさらず…
[一言] シンビスハンメはまるで朝日新聞見たいですね 太平洋戦争でも煽るだけ煽り終戦になれば手のひら返しで軍部批判(これは良いとして)その後ソ連、今は中国の下僕になりさがった悪質さ
[一言] シンビスハンメさんは運が悪かったね、まさか最初に挑戦したダンジョンで……。
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