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786 究極vs至高

『言われてみればたしかに……。ジュニアくんには神のギフトが宿っていますのう』


 先生も詳しく見てくれて、益々驚愕の事実が確定となる。


 そんないつの間に!?

 この子になんか色々与えようとしてくる神々はいたが、そのたびきっちりお断りしてきたはずなのに!?


『いや、これはジュニアくんに直接贈られたものではありませんな』

「と申しますと!?」

『恐らくは父である聖者様の持つギフトが、遺伝という形で受け継がれたのでしょう。魂が分かれて殖えるのと同様に、その過程でコピーされたのでしょうな』


 コピーですと!?

 神々のギフトにそんな機能があったのですか!?


『普通ならばスキルが遺伝することなど絶対にありませんが、聖者様の持つギフトは造形神ヘパイストス渾身の傑作。想定を超える事態が起ってもおかしくないでしょう』


 神様!

 またとんでもないものをウチの子にお与えになりまして!


 なんだかおかしいと思っていたんだよ前々から!

 ウチの子三歳児にしてはなんか賢いし、教えた覚えのない言葉をやたら使うし!

 そして理屈では説明できない不可思議現象もやたらと起こすし!


 すべて神々の悪戯的な原因だったんだな!

 まったくもう!


『ジュニアくんに宿るギフトは聖者様のものと極めてよく似ておりますな。元が同じだから当然なのでしょうが』


 先生は、ジュニアの小さな手の平を注意深く観察しながら言う。

 その間プラティに抱き上げられているジュニアだが、動けずに退屈そうにしているどころか実に大人しいものだった。


 その静けさがやはり子どもっぽくない……!?


『この子のギフトは、触れたものの潜在能力を極限以上に引き出すこと……だけでなく……』

「だけでなく!?」

『……触れたものが宿している歴史、教訓などを垣間見て学ぶことができるようですな。対象を高次化させつつ、対象から教えを得る。双方の価値を高めるギフト。……これぞまさに『究極の担い手』と呼ぶべきものでしょう』


『究極の担い手』ッ!?

 それは俺の『至高の担い手』よりも高性能なギフトじゃないのかい!?


 我が子ながら、そんな恐ろしい能力を生まれ持ったというのか!?

 俺の『至高の担い手』ですら使い方を誤れば世界のバランスを崩しかねないものだというのに……!?


 ……あ。

 そうだ、すっかり忘れてしまっているかもしれないので、ここで俺の持つ能力についておさらいをしておこう。


 異世界から渡ってきた来訪者は、基本神々からスキルを貰えることになっている。


 しかしながらたまたま俺の担当になった神様ヘパイストスは、モノ作りにかけては右に出るモノがいない大層な御方で、そんな造形神が与えてくれたものだからスキルを越えた神々の贈り物……ギフトとなってそれはもう段違いの性能を誇るものになってしまった。


 それが俺の持つギフト『至高の担い手』。

 何ができるかというと触れたものの潜在する力を限界以上に引き出せる。

『至高の担い手』が宿ったこの手で、剣を握ればすぐさま剣聖となることができるし、クワなど握れば一振りで畑一枚くまなく耕すこともできる。


 土に触れて、まだ種も撒いていないのに作物を伸ばすこともできた。

 鍛冶仕事で折れて死んでしまった聖剣を甦らせたこともあったなあ。


 そんなチートオブチート、クソチートな『至高の担い手』と同等……いやそれ以上の性能を持ったギフトがうちの息子に宿っている!?


 しかもまだこんな分別もつかない幼い段階で。


「はぇー、いいものを貰ってよかったわねージュニア。さすがアタシと旦那様の息子」

「プラティ!?」


 こんな緊急案件を告げられたのに、ウチの嫁さんはのほほんとしておられる!?


「ああ、もしかして『学び取ることができる』ってアタシの遺伝から生まれた能力じゃないの? アタシもよく物覚えがいいって言われたものだわー。『一を聞いて三千を知る』とかって?」


 たしかにプラティのそういう天才的なところは知っているけれども! むしろ散々思い知らされてきたけれども!!


 今注目すべきはそこじゃないと思うんだが!?


「やはりおれ様のジュニアは天才的なのだー! このまま世界も支配するのだ!!」

「危険な野望を吹き込むな!?」


 いかん、ジュニアに首ったけのヴィールがよからぬことを考えてしまう!!

 あのドラゴンはジュニアが生まれた時から溺愛していたからな。ジュニアが望めば、あるいは望まなくても今ある人の政体を薙ぎ払ってジュニア王国を作りかねない。


「これはマズい……! マズいぞ……!?」


 俺の場合はね、まあよかった。

 いかなチート能力でも、分別ある年頃にいただいたものだから適切に能力を使うこともできた。

 そうでなかったら力に溺れてラスボス化していた可能性だってある。


 それに対してウチのジュニアは、まだまだ小さな子供。

『驕れる者も久しからず』精神だってまだ知るはずがあるまい。


 このままギフトの能力を自分の力と勘違いして傲慢になっていったら、最悪ウチのジュニアが世間様に迷惑をかけることにもなりかねない!


 そんな破滅的未来を止めるのは親である俺の役目。

 ここで俺がキッチリ教育しなければ。

 世の中は力だけでは回らないのだということを!!


   *   *   *


「さあジュニア! この父からの試練を乗り越えてみよ!!」


 今俺たちの目の前には、急遽集めた角イノシシ数十頭がたむろしている。


 この中から一番美味しいと思う角イノシシを選んでみろというミッションだ。

 ちなみに正解の角イノシシは、その群れの中にはいない。


 選択肢の中に必ず正解が含まれているわけではない、という理不尽を体験し、世の厳しさを学ぼうという試みだった。


 突如として発生した試練にジュニア本人よりも、この子のことを溺愛するプラティやヴィールの方から不満が上がった。


「ちょっと旦那様! いきなり何やり出すのよ、こんなめでたい日なのに!?」

「そうなのだ!! 参拝から帰ったら本格的にケーキを食べてジュニアを祝う予定だったのだぞー!」


 非難はもっとも。

 俺だって今日のジュニアの生誕を祝うめでたい日に、こんな気まずいイベントをやりたくない!


 しかしジュニアが道を踏み外さないためにも一時だって速く力に驕ることの愚かさを教えこまねばならない。

 そのためには俺は心を鬼にも悪魔にもするのだ!


 心の痛みにも耐えてな!!


「パパのテスト、がんばるー」


 あああああああああああああああッッ!?

 ジュニア、何と健気な!?


 協力くださっている角イノシシたちを、ジュニア注意深く見渡し……。


「これにするー」


 おお決めたか!!

 では満を持して、理不尽極まるキメ台詞を吐こう!『オレはこの中から選ばない絶対に』。

 この一事でジュニアに嫌われたとしても、我が子のためなら胸の痛みに耐えてみせる!!


「俺はこの中から……、ってジュニア、それは何?」

「イノシシのほねー」


 何故そんなものを?

 というかどこから持ってきた?


「うんとねー、あのねー」


 まだまだお口が上手く動かないジュニアの説明を根気強く聞いて要約すると、こうんな感じ。


 ――『死んだイノシシの骨ですら選び出すのなら、生きているイノシシならもっと選ばれるに違いないと思いイノシシたちは自然と集まってくるでしょう。さすれば労することもなく美味しいイノシシを得ることができるのです』


 ……と。

 …………。


「うわああああああああああーーッッ!!」


 企画の意図と違ぁーう!?

 でもとってもジュニアらしいぃいいいいーッッ!?


 今わかった、ウチの息子賢い!!

 こんな賢い息子が、どんなに身に余る力を与えられようと道を踏み外すことなどない!!


「偉いぞジュニアあああああああああッッ!! お前は最高だ! 最高の長男だぁあああああああッッ!?」

『ブヒブヒブヒィイイイイッッ!?』


 周囲の角イノシシまで感涙しながら集まってきた。


 なんだかよくわからないやりとりの果てに……俺たちは何をしていたんだっけ? となりそうになったが、七五三のお祝いの途中だった。


 途中、思わぬ事実発覚で未熟な俺が動揺してしまったが心配なんて何もない。


 父親である俺がジュニアのことをこの上なく信頼していれば何の問題もないんだった!!


 究極vs至高?

 別にどっちが上だっていいじゃないか!!

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― 新着の感想 ―
[一言] まずは隗より始めよを3歳児がとなえるとは(笑)
[気になる点] このネタ ・・・ 最初からの仕込みですか? [一言] 4年越しの大ネタ炸裂 ⁉︎ そうだとしたら " 完敗 " です! 何に負けたのかは よく分かりませんが (笑) ・・・ 『・…
[一言] 死馬且買之 況生者乎
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