780 挑戦者は何モンじゃ
新年あけましておめでとうございます。
本年も異世界農場をよろしくお願いします。
依然としてお好み焼きパ開催中。
クラーケンとデスマスくんと角イノシシたちとで楽しく鉄板をジュージューいわす。
「ヘイヘヘーイ! 楽しいパーティの始まりだぁー!」
『お好み焼きの生地に包まれた海鮮の味が美味しいですます!!』
『イカの食感が最高よー!!』
『豚肉の脂身がジューシーでイノシシ!!』
……そこはかとなく狂気が絡んでいるのは気のせいだとしておこう。
そんな俺たちにイカレた……もといイカシたパーリーに乱入者が現れる。
「浮かれるのもそこまでなのだー! こんな面白げな催しにおれ様を呼ばないとは礼儀がなっていないのだなー!」
「なにぃーッ!? お前は……!?」
ヴィールじゃないか!?
食べ物の話題になると必ずどこからともなく現れるな! むしろ今日は遅いくらいだ!
正体はドラゴンで、その気になればげにも恐ろしき力を解き放てるヴィールであったが、今のところは可憐な少女の姿でエキサイティングしている。
賑やかであることはどちらの姿にしろ変わりがない。
「このおれ様を差し置こうとは愚かなタコとカニとイノシシなのだ……! ぐっふぉっふぉっふぉっふぉ……!」
何その笑い方?
「この農場で、このおれを差し置いてお好み焼きの頂上を名乗ろうなどおこがましいのだ!! このおれこそ最強のお好み焼きを作り出せし者!!」
『『『な、なんだってーッ!?』』ですます!?』
ん?
なんでヴィールはそんなお好み焼きに自信を持っているんだ?
そんなにお好み焼きと深い関わり合いがあったっけ?
コイツに関わりがある料理と言ったら、パンとかうどんとかラーメンとか……。
そういう小麦粉系の食材……。
……あ。
「気づいたようだなご主人様! お好み焼きとは粉もの! おれ様の領域なのだ!!」
そうだお好み焼きと言えば主成分は生地。
その大半は小麦粉。
いつの間にやら小麦の友と化したグルテンジャー。
それが俺たちのドラゴン、ヴィール。
となればこのお好み焼きパーティに参戦することも天の理、地の自明。
必然の結果だった。
「小麦粉が関われば、それ即ちおれ様の出番なのだ! 地を這うタコにカニにイノシシどもよ見ているがいい! おれが究極最強のお好み焼きを作り出し、貴様らが作ったものとは段違いだってことを見せつけてやるのだー!!」
『アタシたちは別に地を這ってないけど?』
『海を泳いでいるですます?』
思い切り揚げ足を取られるヴィール。
そもそもコイツらは食材として参加しているのであって、調理者としているわけでもないしな……。
究極vs至高みたいな空気にするのも難しかろう。
「おれが編み出したお好み焼きの焼き方は、そんじょそこらのものとはわけが違うぞ……! 通常のお好み焼きとは一線を画する、ハイパースペシャルなお好み焼きなのだ! ぐっふぉっふぉ……!!」
だから何その笑い方?
「でももう俺たち既に何枚ものお好み焼きを食べて腹がいっぱいなんだけど……!?」
「なにゃぁあああああッッ!?」
さすがに歳のせいか、粉ものは腹にズシンとくるぜ。
これ以上はお腹パンパンで動けなくなりそうだし、そうならないとしてもこのあと夕飯が控えているか。子どもたちとの楽しい晩餐のためにも胃袋には余裕を持たせときたい。
「そう言わずに!! おれの作るお好み焼きは絶品なのだぞ! ご主人様もきっと気に入るのだー!!」
「味の問題じゃなくて、許容量がね……!」
「おれは通常とはまったく違う工程でお好み焼きを焼くのだぞ! 興味がないか!? 特急料理人のご主人様ならきっと気になるのだ!!」
いや。
俺別に料理人というわけでもないんだが……!?
「では早速レッツクッキングなのだ! 水溶き小麦粉が鉄板の上で躍るのだー!!」
あの……!?
俺まだ食べるとは一言も……!?
「まずは生地作りからなのだ! キャベツを刻む! それはもう執拗に刻む!!」
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ……!!
ダダッダーン。
ヴィールの包丁さばきが堂に入りすぎている。
刻まれたキャベツが粉微塵だ。
アイツも何やら料理歴が長くなったし、包丁の使い方一つとってももはやプロレベルということなのか……!?
「だだだだだだだだだだだだだだだだだだだっだーん」
口でもダダダダ言い出した。
そうしてもやは原形をとどめないにまで粉砕されたキャベツ。
小指の先よりも小さくてチップ大だ。
まあ実際ここまで細かく刻まないとお好み焼きの生地には交ぜられないのだが。
「総じて刻んだキャベツを出し汁にドーンとぶち込むのだー! さらには餅! チーズ! さらにはご主人様とっておきの明太子も投入なのだー!!」
それが具か。
いずれもこの農場で育まれた最高の逸品だ。
「この俺のお好み焼きが最強であることを示すためにも、そこのタコカニブタどもの具材には一切頼らないのだー。このおれの示し出す味のハーモニクスを堪能するがいいのだ!」
いや別に使ってもいいだろ海鮮具材に肉具材。
そもそもヴィール自体が肉大好きだし。
「おれ様特性お好み焼きは、ここからが違うのだぞ! まずは具材だけを鉄板に落としてよく炒めるのだ!」
うーん?
「熱が通ったら、具材を固めて円状にして真ん中に穴を開ける!!」
うん?
「その穴の中に、残しておいた出し汁を流し込むのだー!!」
「いや、ちょっと待てそれは……!?」
「出し汁が熱せられてとろみがついてきたら具材とかき混ぜる! そうして薄く延ばして火を通し、小べらで掬って喰らうのだー!!」
だから待て。
それって俺の記憶と照合するならば、お好み焼きとは違う別の料理ではありませんかね?
アレだろアレ。
もんじゃ焼きってヤツではないか!?
俺は食ったことないし、よく知らんのだけれど。
むしろ作り方は、こ○亀で読んだ記憶があるのでよくわかっている。
紛れもないもんじゃ焼き!!
東京下町のソウルフード!!
お好み焼きと似て非なるもの! その証拠にお好み焼き料理店に行くと大体一緒にメニューに載っている!!
「言いがかりはダメなのだぞご主人様? これはおれへと降りてきたアイデアを元にまとめた創作料理なのだ」
「知者は時に同じ橋を渡る!?」
まさかヴィール……!?
彼女独自のアイデアと感性で……まったくノーヒントのままもんじゃ焼きを完成させたというのか!?
コイツの料理センスが、そんな領域まで達していたとは……!?
「おれ様が創造した料理ということで『ヴィール焼き』とでも名付けるのだー! これからこの焼き方をする者全員に使用料を請求するのもいいのだな! がはははー!」
ぬう、なんとフラグになりそうなセリフ。
しかしヴィール、お前が今立っているところは東京庶民が既に通過したところなんだ!!
しかしもんじゃ焼きか……。
実は俺まだ食べたことないんだよな。
もんじゃ焼きって東京下町のソウルフードみたいな感じで、他県の人には馴染みない印象。
そういう意味では行田市民以外にゼリーフライが馴染みないのと同じレベルの話かと思われる。
これには俺も興味が湧いて一掬いつまんでみる、小べらで。
「おお、美味しい」
お好み焼きとはまったく別種の美味しさだ。
具材に餅やチーズが入っているせいか食感がトロリモチモチしている。さらには明太子の辛味がアクセントになって凄くいいな。
さらに言えば、今回あえて排除された海鮮具材や豚肉を入れたとしても間違いなしに美味しいことだろう。
これが東京下町の味!!
『ふぉおおおおおおッッ!! このお好み焼きモドキも美味しいですますううううううッ!!』
『真お好み焼きよりジュワッとモチモチしたのがいい変化ブヒ!! やるなシシお好み焼きモドキ!!』
「モドキ言うな!!」
居合わせたモノたちにも好評だ。
これは我が農場の標準メニューに加えてもおかしくない出来栄え。
『ねえ、でも、ちょっといい?』
場がもんじゃ焼き一色に席巻されようとしていた時、ふと声を上げたのはクラーケンのイカ野郎だった。
いや、タコ野郎?
『ドラゴンのお嬢さんは、これが粉もの料理だからと言って参戦したのよね? でも、もんじゃ焼きって、粉もの要素少なくない?』
……。
なんで?
『だって作られる過程を見てたけど、もんじゃ焼きの出し汁ってめっちゃサラサラで、小麦粉らしいとろみがなかったんだけど……?』
「おれの作ったもんじゃ焼きは……、粉ものじゃなかった……!?」
アイデンティティを破壊され呆然とするヴィール。
大丈夫だよ!
もんじゃ焼きの中にも小麦粉も少しは入っているよ!! 多分!!







