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779 お好みのまま

 油を引いてぇー。

 ジュージュージュージュー。


 鉄板が唸り声を上げています。


 下から烈火で焼かれ、高熱を発する鉄板が油でさらに熱せられております。


 熱気がここまで伝わってきて威圧されるかのようだし。

 高熱鉄板から立ち上る空気が揺らめいて蜃気楼を形作っている。


 多分触れたらやけどすること確定の高熱となっているに違いない。

 しかし俺はまだまだ満足せずに追加の油をドジュー。


「ぐふぉっふぉっふぉっふぉ……! もっと、もっと熱くなれよ……! 熱血熱血ぅ……!」


 と鉄板を熱し続ける俺の姿に、今回の主題たち。


 クラーケン。

 大蟹デスマスくん。

 そして角イノシシことスクエアボア。


 身を寄せ合ってブルブル震えている。


『な、何? 何が起こるのかしら……!?』

『燃えない鉄を焼き続けて……! 聖者さんは頭がおかしくなったんですます……!?』

『鉱物は燃えずとも高熱を帯びる……そうかブヒ!!』


 なんか気づいた。

 この時点で俺の意図を察知しえたものはいますかな?


『これは高熱鉄板デスマッチぶひ!!』

『『高熱鉄板デスマッチ!?』』


 メチャクチャ大外れがきた。


『高熱で焼けるような鉄板の上でブヒたちを戦わせるんだトン!! 敗者はそのまま倒れて焼かれて美味しいディナーになるという効率的決闘法ブタ!!』


 焼き土下座より酷い。


 どうせ焼くにしても丸々焼くのは嫌だわ。下拵えしたい。


「これはある美味しい料理を作るための下準備です。熱せられた鉄板は、調理のための器具です」

『こんな地獄的なものが……!?』


 まあたしかに地獄にありそうではある。


 しかし違う。

 この鉄板の上で食材を焼き、アツアツで美味しい料理を作るのだ。


 そのための食材がこれ!!


『『『おおー?』』』


 ボウル状の容器の中には解かした小麦粉や生卵、千切りキャベツや他色々が雑多にぶち込まれている。


 それをグシャグシャかき混ぜる!!

 グシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャ……!!


 どれもこれも区別がつかないぐらい混ざったところで準備万端アツアツの鉄板にドシャアアア!!


 鉄板からもジュワァアアアアアと焼き音!!


 しばし待つ。


 そして鉄板と接する面が充分焼けたと思われるタイミングでヘラを出すぜ!


『ヘラ……!?』

『不吉な響きがするですます……!?』


 いや、こちらはただの平べったい調理器具ですので。

 どこぞの『ダンナの浮気相手全部殺す』女神とは何の関係もありませんよ?


 とにかく、その無害な方のヘラを片面焼けつつある生地の下へ潜り込ませて……。

 ひっくり返す!!


 クルクルクルクルクルクルクルクルクルクル……。

 バタン!!


『『『おおー!?』』』


 見たか! 俺のひっくり返しテクニック!

 この技でまとまりかけた案件を一からに戻したこと多数!!


 とにかく裏もじっくり焼いて、両面しっかり焼き色がついてきたところで皆、もうおわかりになったかな!?


 焼き上がったソレを鉄板から皿に移し、ソースにマヨネーズ、青のり削り節をたっぷりかけて、これなんだ!?


 お好み焼きですッッ!!!!!!!!


『『『お好み焼き!?』』』

「さあ食してみるがいい!!」


 現在居合わせている三者にいきわたるよう等分して、それぞれに配る。

 各々口に運んで……!


『んッ!? これはッ!?』

『濃厚なソースの味の下に、たしかに感じる柔らかい歯応え! 解いた小麦野焼き固まったものに、雑多な色々が混じることで複雑な触感を作っているですます!!』


 食レポできてるねキミたち。

 だが、もうちょっとよく吟味してみないかな。


『はッ……!? これは……!?』


 早速気づいたかね?


『入っトンのか……豚肉が!?』


 その通り!

 お好み焼きと言えば欠かせないのが豚バラ肉!


 事前に狩ってあった角イノシシのお肉がお好み焼き生地の中にしっかり入っておりましたよ!!


『ふおぉおおおッッ!? たしかにこれは我が同族のお肉! 脂身の柔らかさに食が進むブヒ!』


 同族の食材に嬉々としてパクつくイノシシの絵面酷い。

 センシティブ的に大丈夫なのかな?


『ちょっと何よそれ! どういうことなのよ!?』

『ヤツのお肉ばかり美味しく調理して! 聖者さんは山のものの味方だったんですます!?』


 まあ俺、基本陸棲生物だからなあ……。


 しかしご心配なく。

 キミらもよくお好み焼きを食んで触感をたしかめてみなされ。


『はんむ!?』

『これは……!?』


 気づいたな。

 その海産物独特な歯応えを!!


 そう、お好み焼きに付き物のもう一つ!

 エビ玉とイカ玉だ(二つあった)!!


 俺がこの争いにお好み焼きを持ち込んだ最大の理由!!


 それはブタ玉とエビ玉とイカ玉がそれぞれ存在していること!

 そしてそれらを一緒くたにしてミックスお好み焼きという最強メニューが存在するからだ!!


 海のものと山のもの!

 それらが小麦粉に抱かれながら一体となり味の調和を奏でる!


 つまりそれで何が言いたいかというと、お好み焼きこそ海と山の懸け橋となる平和食ということなのだ!!


『な、なんですトン……ッッ!?』


 角イノシシの方はわかってくれたか。


 そうだキミたちもこのお好み焼きのように、憎しみ合うのではなく協力し合って、より良い味を追求していけばいいではないか!!


 という思いをお好み焼きに込めてみました!!


『でもちょっと待って……!?』


 と言うのはクラーケン。


『お好み焼きに使われるのはエビとイカなのよね? タコのアタシとは何もかすってないんですけど?』


 ……。

 それはまあ、アレだよ?


 クラーケンと言えば古代の伝承によれば様々な姿で描写されるじゃないですか!!


 大タコとか!

 大イカとか!

 大エイとか!


 大イカ! 項目の中にあるじゃないですか!!

 大タコにして大イカでもあるクラーケンさん!! これはもうセーフ! セーフ寄りのセーフです!!


『アタシは……イカだった?』


 そうです、タコにしてイカの食感も味わえる!

 さすがは大精霊クラーケン!!

 海の王者の貫禄!


『ボクは蟹でしかないんですますが……?』


 蟹はエビの親戚みたいなもんじゃん!!

 これで理論に死角なし!


 さあ! 皆の絆を深め合うために早速これから本格的に!

 お好み焼きパを始めようではありませんか!!


『『『わぁあああああーーーーいッ!!』』』


 よし、上手いこと煙に巻けた……!

 ここで一方に肩入れしても何の得もないからこうしてうやむやにしておくのが吉だぜ。


 豚もイカもエビも全部美味しいんだから、みんな仲良くやっていけばいいだろう、なあ!?


 争いなどすべて無意味というように、あらゆる食材を受け入れる。


 鉄板は海のように広くて深い存在なのだね!!

2021年最後の更新となります。

今年も無事、異世界農場と共に終了することができました。

皆様の応援のおかげです。ありがとうございます。


翌年2022年も異世界農場をよろしくお願いいたします。

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書籍版19巻、8/25発売予定!

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↑コミカライズ版こちらから読めます!
― 新着の感想 ―
[気になる点] 発火させない限り、鉄板にひいた油は加熱の役には立ちませんよ。
[一言] 謹賀新年! >この技でまとまりかけた案件を一からに戻したこと多数!! まとまりかけたのひっくり返したら駄目じゃん!初駄目出し!
[気になる点] 自分も "お好み焼き" は考えましたが ・・・ カニカマではなく蟹の本身なんですよね? 新春らしく、豪華版という事で ・・・ (笑) [一言] 本年も宜しく御願い致します。(ペコリ…
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