749 合同結婚式
10/25より書籍版10巻が発売中です!
ゾス・サイラさん。
カープ教諭。
あとバティ。
それぞれに結婚話がまとまっておめでとさんと言いたいこの頃。
せっかくのお祝い事なんだからできる限り派手にしたいなという気持ちが起こった。何故なら俺が祭りの神だから。
数多くある結婚式をもっとも大きく祝福するにはどうすればいいか?
まとめてしまえばいい。
複数の花火を一斉に打ち上げたらさぞかし盛大になるのと同じように。
人生の晴れ舞台を一緒くたにしたらそれはもう派手派手になるんじゃあるまいか。
「ということで合同結婚式を計画しようと思う」
「いいアイデアね旦那様!!」
その案にまず飛びついてきたのが我が妻プラティであった。
彼女もそもそも派手好きな性格だ。
「そもそも行き遅れ気味の三人なんだから、それら三つを合わせてグレードを補い合おうというのは悪くない話だわ! ヤツらも旦那様の気遣いに泣いて感謝することでしょうねッッ!!」
「口悪ぅ……!?」
しかしプラティが概ね賛成だということは助かった。
ゾス・サイラさんとカープ教諭の結婚が決まったのは、つい先日。
それから式をどうするか、結婚が決まったあとの生活をどうするかなどを皆で話し合って詰めている最中だ。
バティに関しても同じような話し合いが必要になるだろう。
彼女は結婚しても服作りの仕事を続けていくつもりのようだから。
「こうげんれーしょく、少なし、じーん」
ジュニアも賛成してくれているようだ。
結婚は、生活の様式なればただのお祭り騒ぎだけにしてはいけないが、かといってまったくお祭り騒ぎではない、ということもない。
真面目な話は当人たちに任せるとして、部外者の俺たちは無責任に盛り上げることだけを考えよう!!
カーニバルだよ!!
* * *
……で。
後日になってその旨を当事者たちに伝えてみた。
「なんでじゃ!?」
困惑された。
まずゾス・サイラさんの意見です。
「結婚式といえば人生の晴れ舞台! それをなんでこんな女と一緒に執り行わねばならんのじゃあ! バカも休み休み申せ!!」
「『こんな女』はアナタの方です! アナタとの腐れ縁を結婚式にまで持ち込まれていい迷惑ですよ!!」
食い気味にぶち込まれるカープ教諭の意見です。
お二人とも長い因縁で結びつき合った、人魚族だけに『水魚の交わり』と称してもいい間柄だ。
……え? 違う?
それを言うなら『犬猿の仲』?
でも犬も猿も陸上の生き物だし……。
シーモンキーとシードッグの仲?
「わらわは断固反対じゃ!! 人生の一大イベントまでこの女と紐づけされてなるものか!!」
「いいことを思いつきました! ここでアナタをぶっ殺せば必然的に私一人の結婚式になります! 私の晴れやかな舞台から汚点を消し去るために死になさい!!」
「そりゃこっちのセリフじゃああーーッッ!!」
いつもの通り争い出した二人。
しかしここまでは計算済みのことだ。
このいさかいを収めるために用意した必殺の調停役を見るがいい。
「ではバティ、よろしくお願いします」
「何でです!?」
合同結婚式の参加者バティ。
彼女たちと同じ立場にいるからこそ、キミの声があの海のギャング二名に届くと思うんだ。
「さあ、彼女たちの幸せ、キミ自身の幸せのために説得を試みてくれ!」
「いや私たちの幸せは一つ一つ別個ですよ!? どうしてまとめる必要があるんですか!?」
どうしてまとめるかというと……その方が面白そうだから?
「ふん、よかろう魔族の娘! 共に協力してこの頭カッチンコッチン女を打倒しようぞ!」
「なんで!?」
ゾス・サイラさんの共闘宣言に困惑するバティ。
「えッ? この合同結婚式って、要するに二人で手を組んで残った一人を撲殺しようという計略ではないのか?」
「誰がそんな血生臭い催しですか!?」
「純白のドレスを返り血で染めろ、って感じじゃろう?」
「それも違う!!」
早くも趣旨がおかしくなってくる。
ゾス・サイラに限らず、この世界の女性たちは皆戦闘民族が過ぎる。
そう思うのは俺の気のせいなのだろうか。
しかし俺のそんな偏見を補足するかのごとく、カープ教諭が一言。
「ではバティさんは私と組んでゾス・サイラを滅殺するということに?」
「だからなんで?」
「彼女との共闘を拒むなら、私と組むのが筋でしょう?」
そんな筋がどこから現れたというのか?
「それに私、常々思っていたのです。私とこのバティさんとは気が合うのではないかと」
「どうしてそんな結論に!?」
「私、農場で暮らしている間にバティさんの噂をかねがね伺いました。かつては魔王軍の四天王補佐として名を馳せていたと」
「はい?……まあ」
そもそもバティが農場に身を置くようになったのも、魔王軍として攻め寄せてきたのがそもそもの始まりだからなあ。
あの頃は本当に混沌としていた。
え? 今も?
「そして四天王補佐であった頃の活躍ぶりですが、それもまた他の補佐と比べて異質。気に入らない相手にはすぐさま拳で応じる。それゆえについたあだ名は『魔犬』バティ。その気概は『アルスの魔女』たる私と瓜二つではありませんか!!」
『攻撃力を上げて物理で殴る』という単純明快な戦闘法を信奉するカープ教諭にとって、バティは何らかの親近感を沸かせる相手だったらしい。
「魔法だなんだので間接的に戦おうとする者など結局は軟弱なのですよ! さあバティさん! 共に拳で語らう者として邪悪なゾス・サイラを打ち砕きましょう!!」
「嫌ですが!?」
当然の良識でもってカープ教諭からの提案を拒否するバティ。
そう、彼女こそ農場で数少ない真の良識派の一人なのだ。魔王軍時代にしっかり叩き込まれた軍規への服従、さらには平民出として幼い頃から重ねてきた苦労が、彼女を分別のある人間として成長させた。
「くっくっく……哀れよのう。お前の眼は曇っておるわ。むしろバティはわらわと同じ側の者よ」
「それもどうです!?」
バティがさっきから相槌を打つ装置になりきっている。
「そうじゃろう? バティは平民出身で、エリートとは何の関係もない女じゃ。そこから叩き上げでのし上がり、せっかく気づき上げたキャリアを投げ打って服屋などに落ち着いた。よく似とるのう、まさにわらわの前半生とそっくりじゃい!」
ゾス・サイラの半生。
魔女として娑婆で暴れ回っていたところを当時、世界の破壊者であったシーラさんにシメられて舎弟にされる。
シーラさんが王妃に就任してのち、そのコネというか強制で官吏となり、数年経たずに出奔して野に下る。
・平民出身で……。
・当時四天王だったアスタレスさんにシメられ補佐官となり……。
・アスタレスさんが魔王妃となったのを機に退官して仕立て師に……。
……という共通点は、似ている?
「つまり、バティもわらわと同じ反骨の精神を備えし者! お前のように権力におもねるいい子ちゃんとは違うのじゃ! 陣営はハッキリ分かれ、旗色は確定したのう!」
「いや私そんなに反骨じゃないですが!? ガッツリ権威におもねる方ですが!?」
思わぬところで人気者となったバティ。
こんな彼女の取り合いが巻き起こることなんて今までなかったんじゃなかろうか?
しかし争いを収める効果はまったく果たしていない。
このままじゃ混乱はさらに深まるだけだが……。
「もう、いい加減にしてください!!」
しかしそこで魔行軍きっての狂犬と恐れられたバティが吠える。
「これ以上ケンカするなら、私にも考えがありますよ!」
「「なにッ!!」」
「アナタたちのためのウェディングドレス、作るのやめます!!」
そうだ。経歴がどうあれ今のバティは職業仕立て師。今や魔都だけでなく世界中でブランド名を轟かせるトップデザイナー。
その彼女は、農場関係で結婚式が行われるたびウェディングドレスの作成に追われる。
トップデザイナーである彼女の手掛けたドレスを着て人生の晴れ舞台に立つのは、女の子の夢に違いない。
その夢を取り上げられることについてゾス・サイラやカープ教諭は耐えられるかというを……。
「「申し訳ありませんでしたぁーッ!!」」
まったく耐えられなかった。
バティ強い。
人の生活を支える衣・食・住のうち『衣』を抑えきったバティは想像以上に強い存在だった。
こうしてバティ、ゾス・サイラ、カープ教諭の三組合同結婚式の話がまとまった。
……わけではなかった。
直後に乱入者があり……。
* * *
『その話! 私も交ぜなさい!!』
と言って突入してくるドラゴン形態のブラッディマリーに加入を承諾し。
都合四組の夫婦による合同結婚式が行われる。







