682 雪まつり打ち上げ
異世界農場9巻発売中です!
見たら呪われそうな、多腕多脚多頭の禍々しきクリーチャー像が。
あんな雪像作られて何の嫌がらせだよって思ったものだが、雪まつりが終わって快哉を上げられる唯一の点が、あの邪神像を処分できることだったんだけど。
それなのになんで銅像化しちゃうの!?
いや素材はどうじゃなくマナメタルだけれど!
これじゃあ半永久的にこの呪いが残ってしまうじゃないか!?
「どういうことなんですか先生!?」
『いや、最初だから実験&予行練習のつもりでしての。失敗しても問題ないモノを選んだのですが、意外と最初の一回で完璧に仕上がりましたな』
そう説明されると納得できすぎるチョイス!
そうだねえ!
たしかにコイツが失敗のもと永遠に失われても惜しくもなんともないからねえ!
いっそ失敗してくれたらどんなによかったか!
無事なる成功が、今は恨めしい!
『さて、練習も済んでコツを掴みましたからのう。これから本命を手掛けていくとしようか』
「れっつらごー!」
先生は、ロイヤルハニービーの女王蜂と連れたって、進んでいく。
まあたしかめずとも農場留学生の作製したモニュメントのところだろうな。
先生にとってはあれこそ世界の終りまで残しておきたいものだろうし。
このクリーチャー像を残して。
ホントどうするんだよこれ?
下手に捨てて、地層に埋もれて数十万年後に出土したら偉いことだぞ?
未来人を混乱と騒乱に陥らせてしまう!
とかしているうちに先生は、色んな作品を型取り直してマナメタル像化するのに成功していた。
ご自分お気に入りのモニュメントだけでなく、ドワーフエルフたちが作り出したベラスアレス像やヘパイストス像も。
『せっかくなので希望があるものはすべて銅像化しましたぞい。皆も記念に残った方がいいでしょうからな』
まあ、皆が喜ぶならそれもいいか。
それならうちのジュニアが作った仏像たちも……。
『それなら断られました。この世に移り変わらぬものは何一つないと申して……』
ジュニアがそれ言ったの!?
とても子どものセリフとは思えないが、その一方でウチのジュニアならいかにも言いそうと思うのは……!
「……ま、まあ記念に残すのはいいことでしょうね。先生はこのモニュメントどうするんです?」
『もちろん我がダンジョンに飾りますぞ!』
ですよなあ。
先生のダンジョンが、殺風景な洞窟からますます賑やかな感じになりそうだ。
「じゃあ、こっちのベラスアレス像とヘパイストス像だけども」
「そのことで相談があります聖者様」
と話しかけてきたのはエルフのミエラルではないか。
この像の製作主だな。
一方会場では、記念に残しておきたいものの銅像化が終わって本格的な後片付けが始まろうとしていた。
本格的に諸行無常が顕在化していた。
「で、相談とは何だいミエラル?」
「この銅像に直したベラスアレス様の処遇なのですが……」
そうだなあ。
農場に置いておくにしてもかなり巨大なものになるし、置き場所とか管理とか困ることになりそう。
それでもミエラルたちが一生懸命作り上げたものだから、農場のどこか邪魔にならないところに飾っておくのは吝かじゃないけれども?
「いえ考えたのです。今回の雪まつりをより思い出に残すために、この像はプレゼントにしようと」
「プレゼント?」
「今回のイベントで大きく話題になった人に、記念として贈呈してみるのはどうでしょう? たとえば雪合戦大会で優勝した人とかに……!」
それもいいなあ。
大元のイベントであるオークボ城では、天守閣まで制覇した人にもれなく賞品を贈呈したんだから、それに倣って優勝者に何かさし上げるべきだろう。
それが雪像展示で話題になった作品のレプリカ銅像。
うん、いいね。
「それならワシらの像も使ってくだされ」
お、ドワーフ王のエドワードさん。
「元は我がドワーフ地下帝国に飾る予定だったヘパイストス像ですが、ワシらはモノ作りの一族。我々の作ったもので他の誰かが喜んでくれるならそれが一番よい」
さすがは自分の手で作り上げたモノを売って生計を立てる一族。
サービス精神が旺盛だった。
ああ、そう言えば雪像をコピーするのにマナメタルを素材利用したのは大丈夫でした?
エドワードさん、マナメタルを視界に入れたらすぐ心臓止まって死ぬから……。
「ハッハッハ大丈夫ですわい! 今日はすぐ傍にノーライフキング様がいたので心臓止まってすぐさま蘇生していただきました!」
それを大丈夫とは言わない。
頼むから心臓を鍛えてほしい。神像じゃなくて。なんつって。
「じゃあこの像を優勝賞品にするとして、贈り先は……!」
俺は思い出した。
魔国宰相ルキフ・フォカレさんに、シルバーウルフさんやゾス・サイラさん、マモルさん等……。
通称クローニンズと呼ばれるあの方々。
いつも苦労している彼らが少しでも報われるように豪華なプレゼントにしないとな!
「では、誰にどれを送ろうか?」
「心配ありませんぞ聖者様! マナメタル神像は、型さえあればいくらでも複製可能なのですから!」
なるほどそうか。
誰にどれとかケチ臭いことは言わない! 優勝チームのメンバー全員に、神像一揃えプレゼントしようじゃないか!
世界最高の金属といわれるマナメタル製の、軍神と造形神の像をセットで!
なんて豪華なんだ!
きっとみんな喜んでくれるよね!?
もちろん、優勝チームの五人目だったネヨーテくんにも贈るぞ!
優勝インタビューで住所は既に聞きだしているから問題ナッシン!
ネヨーテくんも、いかにも苦労していそうな感じの子だったから、プレゼントが届いたらきっとビックリするだろうなあ。
「ということで先生! 神像セット、複製お願いします!!」
『心得たー』
あ。
念のために先回りで言っておきますが、あのクリーチャーゼウスの像は複製しなくていいですからね!
悲しいクリーチャーはあの一体だけで充分ですので!
* * *
という感じで、展示物の後始末が滞りなく完了したところで……。
最後の大物を片付けに行こう。
この俺が作った雪の東京タワー。
これはさすがに複製できない大きすぎて。複製する気もないが……。
それ以前に下手な解体もできないしなあ。何しろ原寸大の東京タワー、あまりにも大質量すぎる。いかに材質が雪とはいえ一気に崩壊したら近隣への被害は甚大なものとなろう。
そこで俺は考えた。
ヴィールやプラティに協力してもらい、雪東京タワーの下部に超強力推進剤をセット。
「お前のお陰で雪まつりは大いに盛り上がった。ありがとう」
敬礼しながら、発射スイッチを押す。
するとさっき仕掛けた推進剤が燃え上がり、直上にある雪東京タワーを押し上げて上昇する。
さながらロケットのように。
誰もが夢想したことがあるはず。
東京タワーがロケット飛翔するアホな光景を。
俺は異世界に来て現実に目にすることができたぜー。
雪の真っ白な東京タワーをだけどなあああああッ!!
そして急上昇していく東京タワーは、天空神の住む天界を突き破り、そこからさらに上昇して大気圏へと突入し、空気との摩擦熱で当然のように雪は解け、重力圏外へ脱するのを待たず水蒸気となって消え去ったのだった。
……うむ。
実に見事な散りざまだった。
雪まつりのラストを飾るに相応しい壮麗さだったぞ!
イベントの最後を祝う、これが本当の打ち上げってね!!







