680 雪まつりの締めくくり
本日5/25(火)は異世界農場書籍版9巻の発売日です! よろしくお願いいたします!
はい、俺です。
俺主催、雪まつりはおかげさまで好評に進んでおります。
基本的に大きく話題を呼んでいるのは、俺の作った雪東京タワー、エルフドワーフ両族が威信をかけて建立したそれぞれの守護神、ベラスアレス像ヘパイストス神像。
それからジュニアの作った雪の三十三間堂千体千手観音立像。
しかし、喜ばれたのはそれらだけではなく、我が妻プラティが仕切る雪合戦大会も白熱の様相を呈したようだ。
俺は運営の方に注力して参加しなかったけれども、何やら注目の選手がいたとか何とかで大盛り上がり。
観客席からは『クローニン! クローニン!』と称えるコールが鳴りやまなかったとか何とか。
……苦労人?
他にも好評を博した施設はまだまだあり、もう一つのプラティ作アトラクション、雪製スーパー滑り台は、主に彼女と同族の人魚族にヒットした。
いつかの相撲大会がきっかけで、より多くの人魚が地上に興味を持ち、訪れるようになったからな。
十のカーブ、六つのスピン、三つの宙返りポイントのある雪滑り台は、大海を泳ぐ人魚のスピード魂に火をつけたらしく、わざわざ人魚の姿に戻って滑り、ベストタイムに挑戦する者が続出。
人魚王であるアロワナさんですら、雪合戦に出場せずそちらへ全力疾走するほどだった。
だから雪合戦で見かけなかったのかあ……とも思った。
ちなみにアロワナさんが五十四秒という最短時間で滑りきり、ベストスコアで優勝を勝ち取った。
そういう施設じゃなかったんだがな……。
あとなんだ? 神様が来たのも話題になったな。
『先生またいつの間に神様呼んだんだろう?』と思ったが、どうやら違うルートでのご登場らしい。
やってきたのはアポロン神。
前にも会ったよな、この神様?
いつぞやの農場博覧会で太陽の塔をパクったモニュメントに惹かれて地上へ落ちてきたそうだが、今回も俺の作った雪の東京タワーに注目しすぎて足を踏み外したんだとか。
……そんなに塔が好きなの?
しかし折角来たからと言うので、雪まつりの展示物を一通り見て楽しまれて行かれた。
芸術神を名乗っているからな、こういう分野も得意なのだろう。
ただ、この神、無闇な批評が得意じゃないのか、何を見てもふんわり褒める方向でまとめていたけれど。
……気を使う神様だなあ。
そのうち事態に気づいたヘルメス神が迎えに来て、連行気味にお帰りになられたが。
バイバイ、アポロン神。
また地上に遊びに来てくれたまえ。
で、そんな神様にも好評だった雪像群なのだが、既にある完成作品に感化されて自分たちでも『なんか作りたい!』と言う人たちのために自由制作スペースも用意したんだぜ。
雪像設置スペースの隣辺りに、それこそ広大な平面と雪の山を用意したんだが……。
主に小さなお子様たちが利用し、雪だるまがたくさん並ぶことになった。
それはそれでほんわか朗らかな背景だが、中にはガチな人もいて高技術ハイモチベーションで、それこそガチな作品が出来上がったりもした。
俺も見かけたがアレ何?
手がたくさんあって、足と頭もたくさんあって、しかも胴体が獣めいたオッサンの像。
クリーチャーかと思ったわ。
え? これがゼウス神の像?
まさかあ?
そのあまりの怪異な姿に、目撃した子どもらが泣き出すものだから、主催者権限でブチ崩そうかと何度思ったことか。
まあやらんかったけどね。
さすがにその程度の分別はあったよ。
あの貶し下手のアポロン神が、何とか取り繕ってやんわりと褒めてくれたおかげで尚更壊しにくくなったしなあ。
この異形の像は、これからも皆のトラウマとして心の中に残り続けていくことだろう。
こういう記憶の残り方は嫌だなあ。
……まあ、苦い思い出の話はそれくらいにして。
もっと明るい話をしよう。
今回の雪まつりでも出店が大いに繁盛した。
こういう時溌剌とするのがレタスレート&ホルコスフォンのコンビ、それにヴィール。
それぞれ推しの豆とラーメンを、多くの雪見客へと振舞ったのであった。
今回は特に雪まみれで寒々しいので、温かい食べ物があるだけでも大盛況。
レタスレートたちは小豆をふんだんに使った御汁粉や、納豆入りのミソスープなどメニューに工夫を凝らした。
ヴィールは、普通にラーメンで充分温まる。
ただヴィールは、今回終日ジュニアを見てもらっていたので『出店なんか開く暇あるの?』と不安になっていたものの、実際に出店の様子を覗いてみたら、なんか別の人たちがラーメン屋を切り盛りしていた。
あの人たちはどこかで見覚えがある……?
と記憶を探っていたら、思い出した。いつぞやブラッディマリーさんと一緒にラーメン対決を繰り広げたメスドラゴンの方々ではないか!?
一体何でこんなことに? とヴィールに聞いてみたら『ヤツらにもラーメン屋として修行させてやらねばなー』とわけのわからぬことをほざいていた。
何にしても雪の中、冷え切った体を温めるラーメンも御汁粉も最高で、大盛況であった。
納豆味噌汁も。
そんなこんなで千客万来の雪まつり。
楽しい騒ぎも、いつか必ず終わりが来るということで、終焉の日が近づいてきた。
いや、それでも当初の予定よりだいぶ長く開催されたんだが。
予想より遥かに多くの人が来場し、同時に開催延長の要望も多く寄せられたので調子に乗って延長することにしたのだ。
ジュニアもまだ千手観音像作り足りなそうだったし。
結局何千体作るつもりなの?
ということで延長また延長を繰り返してきたけど、そろそろ無理って感じになってきた。
そろそろ春がきそうだから。
春になったら溶けて川になって流れていくのが運命の雪。
その雪で形作られた多くの雪像も、段々温かくなってくるうららかな日差しに照らされて溶けて春の夜の夢のごとくなるのは必定。
そうでなくとも、ここ最近の気温で天気が崩れようものなら雪ではなく雨になるのは間違いないし、雨なんぞ降ったら雪像は一発アウトであった。
ということでなし崩し的に終わるよりもしっかり区切りをつけようと思ってオークボ城・緊急変則企画・雪まつり編は今日で終了と相成りました。
ご来場、ご愛顧ありがとうございました。
* * *
ということで、無事幕を下ろして次にすべきことは、後片付け。
どうしようかなあ。
このあまりにも多くの雪像をどう片付けるか?
放置してもいずれ溶けて川になって流れていくんだろうが、それまでここに放置しておくのも邪魔だし、時間をかけてゆっくり溶けて、見苦しい姿を晒すのもよくなかろう。
なので一思いに破壊しつくして、残った雪は川なり海なりに投げ込むのがよいだろうと思ったが、それがどうにもできない!
だって皆が精魂込めて思いを込めて作り上げた大作だぞ!
それを叩き壊すなんて、どんなに心が痛むことか!
しかもそれが一体ならず数十体。
一体壊すだけでも俺の心のライフポイントがゼロになるというのに、全部なんて耐えられるか!?
あのクリーチャー像をぶっ壊してライフ回復できるとしてもとても足らない!
これどうすりゃいいんだろう?
本家の雪まつりの方々は毎年こんな苦しみを胸に秘めてるの? なんてタフネスな方々だ?
そんなこんなで悩んでいたら……。
『フフフ、聖者様、心配無用ですぞ』
「先生!?」
ノーライフキングの先生が現れた!
農場留学生の卒業制作を目の当たりにして以来、毎日この場にやってきては飽きずに眺めている先生!
今日も、留学生たちの作製したモニュメントを見にらっしゃったんですか!?
でもすいません!
それも今日崩してしまう予定なんですよ!
見納めですし、既にイベントとしては最終日を迎えてお客も入れていませんから、心行くまで眺めていてください壊されるその時まで!
『いいえ、壊しはしません』
「え?」
何を言ってるんだ先生?
『生徒たちが心を込めて作り上げたモニュメントを、このまま消し去ってしまうなどもっての外。自分が不死化した時には対して思いませんでしたが、今こそ一層強く乞い願いますぞ、永遠が欲しいと!!』
先生が永久不滅を望み出した!?
『そこで、今日を迎えるまでにいろいろ研究を重ね、ついに確立いたしましたぞ! 雪像を永遠に残す方法を! これよりご覧いただきましょう!』







