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612 筋書きのないドラマという筋書き

 勇者モモコよ。


 私が会議室に訪れると、奇妙な顔ぶれが並んでいた。


 これから決勝で戦うはずのピンクトントンさんと……。

 なんかやたらと豪華な印象の金髪美少女?

 誰よ?


「お、やっと来たわね? 早く座りなさいよ、あとの予定がつっかえてるのよ!」

「あの、そういうアナタはどちら様?」


 可愛いことは可愛い子だけれど……!?

 他の可愛い子にはない独特な印象を感じる子だわ!?


 ゴージャス?

 いやロイヤルね!


 ロイヤルなお嬢様ね!


「え? もしや私がわからないの?」

「すみません、どこかでお会いしましたでしょうか?」


 気まずいッ!

 人に会ったことを忘れるなんて失礼ぶっちぎりだわ!


 しかし正直に詫びることができる私よ!

 ヘタに知ってるフリしてさらなるドツボにハマっていくなんて展開はマンガで何回も読んできたからね!

 教訓を得たのよ!


「まあ、正確に会ったと言えるかどうかわからないけど、こうすればわかる?」

「ああッ!?」


 ロイヤルお嬢様、脇に置いてあったマスクをとると頭に被って……。


「貴様は、ミス・マメカラス!?」

「いかにも私が豆の伝道師! 千の豆を持つ女! 謎の覆面レスラー、ミス・マメカラスよッ!!」


 アンタがマメカラスだったのかあああああッ!?

 覆面してたから誰かわからなかったじゃないのよ!


 っていうかマスクマンがそんな気軽に素顔を晒してていいの!? 素顔を見られたら死ぬんじゃなかったっけマスクマンって!?


「だってマスクって暑苦しいんだもーん。こんなの四六時中つけてたら蒸れてハゲになっちゃいそうだわ」

「じゃあなんで着けてるの!?」

「そりゃ正体を知られないためよ。アンタだってずっと昔に素顔でも会ってるはずなのに、まだ気づかないのね? 世の中の皆、アンタぐらい鈍感だったら私も素顔で出場できたのに」


 え!?

 過去に会ったことを忘れている失礼はまだ続いていた!?


 ちょっと待ってください今思い出しますので!

 ヒントをくれませんか、二つほど!


「それくらいにしましょうレタスレート王女。モモコちゃん弄りに時間をかけすぎては決勝戦までの時間がなくなってしまいますわ」


 と口を挟むピンクトントンさん。


 というか今、何て言った?

 レタスレート王女?


 それってもしや……誰だっけ?


「思い出そうとしたけど思い出せなかった顔したわね今」

「本当この子の頭の回転が鈍くて話が進まないわ」


 ええい、頭の可哀想な子を見るような目をするな!


 思い出したわよ!

 人間国の王女レタスレート!


 たしかに勇者召喚された時、一回だけ謁見を許された覚えがあるわ。

 いかにもワガママ王女様って印象しか持てなかったけど……。


「何でいるのよ!? 人間国の王族って全員処刑されたんじゃないの!?」

「そこは深くツッコまないでよ消されるわよ」

「押忍!」


 王女の迫力に圧し込まれて、思わずいい返事してしまった。


「レタスレート王女には、私の方から出場をお願いしたのよ」

「ピンクトントンさん!?」

「彼女の煌びやかな気質がスター選手に向いていると思ったんでね。予想通り彼女はたった数週間のドサ回りで揺るぎなき人気を獲得したわ! 戦いもせずチャンピオンの座について、他選手の挑戦を受ける立場になっても誰も文句を言えないほどに!」


 た、たしかに……!?


 で、でもお姫様がチャンピオンってそんなことありえるの?

 スター性はそうかもしれないけれど、チャンピオンになるなら他にもう一つの要素が不可欠なはずでしょう?


 そうよ『強さ』よ!


 お姫様なんてもっとも貧弱な生物の一種にカテゴライズされてもいいはずなのに、なんでそんなか弱い乙女がオープニングセレモニーで巨岩砕なんてパフォーマンスできたのよ!?


 あッ、そうねトリックね!

 最初から岩にヒビを入れてたとか何とかで割れやすくしておいたんでしょう!?


 なんて姑息な、そんなペテンを使ってまでチャンピオンになろうなんてやっぱり王族ってズルい連中なのね?


「何を思っているのかなあ?」

「があああああああああああああああッッ!?」


 強い強い強い強い強い強い強い強いッ!?


 レタスレート王女が片手を差し出しただけで捻り潰される私!

 両手でも全然押し返せない!

 向こうは片手っていうか……よく見たら私に指一本しか触れてない。


 指先一つでダウンされようとしている!?


「王女、それ以上いけません。大事な決勝戦出場選手なんですから」

「たしかにそうね」


 王女、真実滅茶苦茶強かった!?


 どういうこと?

 これなら別に勇者召喚しなくても王族が戦えばよかったじゃない!?


「前振りが長くなってしまったけど、アナタを呼んだのは他でもないわ。これから始まる決勝戦のことよ」

「は、はあ……!?」

「私たちは、このイベントを最高の盛り上がりでまとめたいの。そのためにはどうするのが最善か、皆で話し合うのよ」

「えッ!?」


 それってどういうこと?

 試合なんだから全力でベストを尽くすだけじゃないの!?


「プロレスは、競技であると同時にエンターテイメントでもあるのよ」


 王女様、なんですそのわかったような顔つきは!?


「だから、ただ勝った負けただけで満足しちゃダメなの。戦って競い合って、それを見るお客様が興奮し感動し、楽しんで、満足して帰っていただかなくてはならないのよ!」

「は、はい……!?」

「そのためには試合に、興奮したり感動したりする要素がないといけないの! 何の見せ場もない泥試合の末に、タイムアップで判定勝ちなんて負けるより悪いわ! いいこと、私たち選手に一番必要なのは、お客様を楽しませようというエンタメ性なのッ!」

「はいッッ!?」


 何なのこのお姫様!?

 まるでプロレスのすべてを知ったかのような口ぶり。アナタだってつい最近までシロウトだったんじゃないの? 元々この世界にプロレスという概念がなかったことを考えれば。


「今までの試合は前座のようなものだったし、スター格の選手が散り散りになっていたから普通にやっているだけでも面白かった。しかし決勝ではそうもいかないわ! 対戦するのは双方スター格、さらには頂点を決める重要な試合なんだから、万が一にも失敗は許されないのよ!」


 偶発的にもいいのが入って一発ノックアウトとかなったら拍子抜けにもほどがある。


「そうならないように今のうちから綿密な打ち合わせをしておくのよ! どうすれば一番よく盛り上がり、お客さんウケがいいか! 試合開始まで時間は少ないけどしっかり話し合うのよ!」

「は、はあ……!?」

「そこで勇者モモコちゃん、試合を盛り上げるために必要なことは何だと思う?」「なんでしょう?」


 考えることを放棄する私。


「善役と悪役を決めることよ!」


 ほいほいほい。


「人はね、イイモノが勝って、ワルモノ報いを受けて破滅することが何より大好きなのよ! 物語も勧善懲悪が基本だし、実際の世の中だって悪者が倒される方が拍手喝采なのよ! だからこそこないだの戦争で人間国が負けた時も……!」


 お姫様、なんか急に言葉に詰まって……。


「皆さん大喜びだったし……!」

「泣かないでお姫様……!?」


 なんで自分から心を抉りに行くの?


「大丈夫よ! 私はしっかり心の整理をつけたのだから! 今の私には豆があるから幸せなのよ! 話を戻すわよ!」

「はいはい」

「要するに試合にも善玉と悪玉をしっかり決めて進めた方が盛り上がるってことよ! 悪玉ヒールがお客様の敵意憎悪を一身に受け止め、善玉が(ベビーフェイス)が諸共打ち砕くことによって熱狂! 心が一つとなるのよ!」


 それはよくわかります。

 マンガやアニメでも、いかにして爽快に主人公が悪役を倒すか重要ですもんね!


「したらば、これから決めるべきことは……!?」

「この中で誰がヒールを請け負うか!?」


 正体が判明した覆面レスラー、ミス・マメカラスことレタスレート王女か?

 ピンクトントンさんか?

 それとも私か!?


 もちろんヒールになったら、悲しい目に遭うかもしない。

 お客さんからの憎悪が一身に集まって空き缶を投げられたり生卵をぶつけられたりするかも。


 しかし、それは試合を盛り上げるために必要なこと。


 いつだってユーザーは、最後に正義が勝つことを求めているのだから。


 イベント全体の成功のため、一体誰が汚れ役を買って出るというの!?

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書籍版19巻、8/25発売予定!

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↑コミカライズ版こちらから読めます!
― 新着の感想 ―
[一言] このJK指先一つでダウンとかホントに転移時点でJKだったのかすら怪しい
[一言] 姫り潰されるw (元)姫様だけにwww
[良い点] タイトルからして内容がエンタメが良い感じで浸食している点は農場ではなかったところでした。 浮雲オーク城だって障害物が悪役みたいなもの。あのからくりを知っているのはリアルタイムであの番組を…
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