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566 何にでもミルクを混ぜる女

 さて始まりました。

 農場主催、コーヒーvsお茶、より美味しいのはどちらか頂上決戦。


 コーヒーサイドの代表者はドワーフのエドワードさん。

 さらに豆サイドの縁者としてホルコスフォンとレタスレートが応援に駆けつけております。


 対するお茶サイドはエルフのエルロンが代表を務めております。

 というか因縁の二人です。こうして互いに鎬を削るのはただの私怨でないかと思われます。


 実況は俺、解説は我が妻プラティとヴィールのお馴染みコンビでお送りいたします。


「妊娠中はお茶もコーヒーも飲めない! 妬ましい!」

「ジュニアも飲めないのだー、正直おれたちにとってはどうでもいい催しだ」


 解説のお二人が既にやる気ない!


 こんな中でも当の二人がボルテージアップで充分盛り上がっております。

 エルロンとエドワードさんです。


「始終言い争いしてるけど結局アイツら仲いいでしょ!」

「ケンカするほど仲がイーアルサンスーなのだー!!」


 のっけから核心を突くな解説。

 解説がやっちゃダメなことだろ。


「果たして本当に美味いのは、お茶か? コーヒーか?」

「それが今日決まる! 敗者には死あるのみの!」


 なんか知らんうちにデスマッチになっていた。


「で、勝敗の基準は何なの? どうやって決めるの?」

「それはもちろん審査あるのみ! 農場の住人たちを対象にお茶とコーヒーを飲み比べてもらい、どちらが美味しいか選んでもらう!」

「得票数の多い方が勝ちじゃ!」


 案外普通の方式で争うんだなあ。

 ウチの農場内での出来事だからもっと突拍子もない方法でするかと思っていたが。


 お茶とコーヒーを入れたカップをそれぞれの頭に乗せて、こぼさずに殴り倒した方が勝利とか。


「農場に住む連中は舌が肥えているからきっと正当な判断を下してくれるはず! 勝敗をつけるのには最適だ!」

「みずから敗北を舐めに行くとは見上げた根性、褒美に一息で引導を渡してやろう!」


 ノリノリのエドワードさん&エルロン。

 早速農場の住民による審査が行われたが……。


「にがーい」


 ……概ね評価は低かった。


「苦い! 苦いです!」

「口の中がいがいがになるー!」

「黒いのも緑のも苦過ぎる!」


 エルロン以外のエルフとか、サテュロスたちとか、農場留学生たちとかが試飲して出た感想がおおむねそんな感じ。


 そりゃ若い人たちの過敏な舌に、抹茶やコーヒーの苦さは辛いことでしかあるまい。


 結局加齢で感覚の死にかけた舌にしか程よい刺激にしかならないんだ。苦さとは。


「「な、なにいいいいいいいッッ!?」」


 そして意外な結果に揃って衝撃を受ける者たち。


「そんな、私が粋を凝らして演出した抹茶の味が……!」

「ワシのコーヒーが……!?」


 製作したのは俺ですけどね。

 この勝負、一体どういう方向に行ってしまうんだろう?


「新しいお菓子を開発したのだ。ドラゴンエキスを練り込んで作ったドラゴンパイなのだー」

「うわぁ、夜のお菓子に最適ね!」


 プラティやヴィールも審査員に飽きて私語を始めるし。

 もうグダグダだ!


 この状況を何とか打開できないものか!?


「では、私がなんとかしてみせましょう」

「おおッ!? キミは……!」


 新たにこのバカ騒ぎへ参入してくる者は……、頭に角を生やしたサテュロスのパヌであった。

 この農場で働く女性の一人で、出身種族から乳製品の製造を得意とする。

 なんせヤギの獣人だから。


 先日のオークボ城を観戦して、密かに自分も『じゅーせーかいほぉー!』と練習しているのは秘密だ!


「おおパヌ! たしかにキミなら審査員に相応しい!」

「お茶かコーヒーか! その舌で美味しい方を選んでくれ!!」


 エドワードさん&エルロンに詰め寄られるが、パヌは動じずたじろがず……。


「お二人は……、間違っています」

「「何ぃ!?」」

「お茶とコーヒー。……どちらもとても美味しい。それなのにあえて優劣を競う必要がどこにありましょう? どっちが正しいかなど、どっちが上か下かなど、どうでもいいことではないですか」


 なんかそれっぽいことを言うパヌ。


「何故ならば……どっちもミルクをかければ美味しくなるからです!」


 そして何かわけのわからないことを言いだした。


「たとえばご覧ください! この濃く抽出したコーヒーに! 同じだけの量のミルクを混ぜます! あと砂糖も!」

「うわああああああッ!? なんて量の砂糖を混ぜるんだあああああッ!?」

「これで苦いコーヒーがまろやかになって飲みやすい! 聖者様から教えていただいたこの飲み物の名は、カフェ・オレ!」


 コーヒーとミルクを1:1で注いだ飲み物。

 お好みで砂糖も入れてください。ってパヌは引く量の砂糖を入れたな。


「た……ッ、たしかに甘い砂糖とまろやかなミルクを入れた分、コーヒーの苦味が消えて飲みやすく……!」

「そして次は抹茶! 抹茶と砂糖とお湯を掻き混ぜて、最後にやっぱりミルクを注ぐ! そしてできたものが……抹茶ラテ! 基本的にカフェ・オレと同じ!」


 ちなみにカフェ・ラテはエスプレッソとミルクを混ぜたものなので、普通のコーヒーとミルクを混ぜるカフェ・オレとはちょっと違う。


「こ、こっちも砂糖の甘さとミルクのまろやかさで抹茶の苦味をマイルドに……!?」

「さあ、こうしてミルクと砂糖を加えたものを、今一度試供してみましょう!」


 再び農場の住民たちに配られるカフェ・オレと、抹茶ラテ。

 その味は大好評。


「甘い! 飲みやすい!」

「さっきの苦いのとは全然違います!!」

「やっぱり甘くないと! 苦いのはダメです!!」


 実に若者らしい感想。

 しかしそれが真理だ。


「そんな……! コーヒーは地上最強だと思っていたのに……!」

「苦いだけではダメなのか……!?」


 その結果にショックを受けて崩れ落ちるエルロンとエドワードさん。


「いいえ、コーヒーも抹茶も素敵な飲み物。若い人たちも歳を経るごとにその良さに気づいていくことでしょう。それまでの間を埋めるのがミルク。ビターな大人の味をまろやかにし、どんな年代の方の口にでも合うようにする、それがミルク!」


 ミルクをかければ大体何でも美味しくなる。


「砂糖を入れれば何でも甘くなる!」


 そらそうだ。


「ミルクと砂糖の力を借りることによって、抹茶もコーヒーも老若男女どんな人でも美味しく飲めるようになる! これこそがミルクの力! 万能飲料!」

「ミルク様ー!」

「ミルク様は万能じゃああああ!!」


 なんか崇め祀られだしたパヌ。


 コーヒーvsお茶。

 今日の勝負の結果は、すべてに調和してまろやかにするミルクの勝利。

 あと砂糖も。


    *    *    *


 とりあえず、何でも砂糖とミルクぶっこんどけばイケるよ、という結論で落ち着いた。


 しかし、ブラックや侘び茶のすべてが否定されたわけではない。


 我が農場の中でも違いのわかる者たちが、コーヒーや抹茶単体でもその微妙な苦みやコク、香りを楽しむ者たちがたしかにいた。


 誰かというとオークボやゴブ吉たちを始めとするオーク、ゴブリン軍団である。


 もはや大人の貫禄を充分に備えた彼らは、ブラックコーヒーや茶室で立てた抹茶のよさも充分に理解できる。


「けっこうなお手前で」

「香りがいいですな」

「ミディアムローストの細挽きで……」


 となんか通っぽいことまで言うようになった。


「仕事の合間に飲むのがいいな」

「頭がスッキリして作業が捗ります」

「働く者たちの頼もしい味方だぜ、お茶もコーヒーも」


 カフェインで作業効率を上げることを覚えたようです。


「仕事は戦いだ、だが休息は欠かせない」

「今日も頑張ったね」

「オレも頑張ったよ」

「この農場を支える人を支えたい」

「農場は誰かの仕事で出来ている」


 なんか缶コーヒーのCMみたいなことを言いだした。


 まあ、この農場を主に支えているのはオーク、ゴブリンたちの仕事っぷりだから言う資格は充分にあるけれど。


 コイツらなら缶コーヒーのCMにも出られるか。

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― 新着の感想 ―
[一言] 唐突に浜名湖名物っぽいものが!
[一言] この回の広告が某コーヒーでした。 オークボ達の後ろに口笛が聞こえるところまで想像しました(((*≧艸≦)ププッ タイミングって素晴らしいですね。
[一言] びじゅチューンかな?w
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