561 農場のお茶会
ようし!
抹茶の素晴らしさをヴィールに教えてやるためにも俺も全力を尽くそうではないか!!
まずケーキを作るぞ!
小麦粉、卵、ミルク、バター、そしてビビる量の砂糖といつもの具材を混ぜ合わせ、ケーキ生地を作るのだ!!
そこに抹茶(粉末)を投入!!
「うおおおおおおッ!? どういうことだご主人様!? ケーキに青汁を混ぜるなんて!?」
だから青汁じゃねーよ。
抹茶だよ!!
粉末状じゃ見分けつかないのはわかるが、別物だから!
それをわからせるためにも必殺のコイツを完成させる!
オーブンで焼いて!
抹茶ケーキだ!
「緑色だあああああああッ!? ケーキが緑色だああああああッ!?」
ケーキと言えば大抵は黄色じみたクリーム色、もしくは生クリームをまとって純白に彩られるのが定番。
その定番を打ち破るものこそ抹茶ケーキ。
瑞々しき青葉のごとく濃厚な緑色という、既定のスイーツにはあるまじき色合いにヴィールは度肝を抜かれていた!
「いいのかこれは!? 食べていいものなのか!? 緑色ってアレじゃないか!? カビが生えているのだ!?」
失礼なことを言うんじゃねーよ。
食べても大丈夫なものなのは俺が保証するからさっさと食ってみろ。
「これはビターな大人のケーキねえ?」
「うわプラティ!?」
いつの間にか我が妻プラティが、ジュニアを伴って現れた!?
彼女も高度な食い物センサーを搭載していて新作料理を作ろうとしたら必ず出来上がる頃に駆けつけてくるのだが……。
最近になってヴィールより遅れて馳せ参じるようになったのはジュニアの世話で動きが鈍くなったからか?
しかしタイミング的にはより絶好なところで来るしなあ。
今のように。
断りもなく抹茶ケーキを賞味するプラティ。
冬も深くなり、懐妊中の第二子もすくすく大きくなって、そろそろお腹も目立ち始めている。
「……これぞ大人の味」
食レポし始めた。
「この、いつものケーキにはない爽やかな苦み、全体を緑色にしている新しい素材のせいと見たわ。ただ甘いだけのケーキに苦味も加え、大人向けの味わいに進化したという感じね。……ジュニアちゃんも食べる? はいあーん」
成長して色々食べられるようになったジュニアも抹茶ケーキを一口イン。
じっくり味わって『これはいつもと違いますね』という表情をした。
違いのわかるジュニア。
「とにかく、この緑ケーキは大人の味わい! それがわからないヴィールはまだまだお子様と言っていいわね!!」
ズビシ! と指さすプラティに、ヴィールは怯む。
「だ、誰も不味いなんて言った覚えはないのだー! というかちゃんと美味しいのだ! はぐはぐ! メチャうめー!!」
「ジュニアもおかわりほしいの? はい、あーん」
「ケーキが美味しいのは当たり前だが、こういうビターな感じもまたよしだ! 甘みもほのかに上品だー!」
とりあえずなんか食レポしようとするヴィール。
とりあえず抹茶ケーキが気に入ってくれたところで手を緩める俺じゃない。
ここからさらにドンドン畳みかけていくぞ!
抹茶チョコレート!
抹茶ホットケーキ!
抹茶蒸しパン!
そして抹茶チーズケーキだあああああッ!!
「「「ほきゃあああああああッ!!」」」
抹茶に彩られて新生する、我が農場で過去開発されたスイーツたち。
あれだ、過去の悪役がブラック化して復活するみたいな。
抹茶はスイーツを蘇生させるゾンビパウダーだったのか!?
違うな。
まあ焼く前の生地に混ぜ込めるだけでOKな抹茶は何であっても併せやすいからな。
使用のハードルが低いのは間違いない。
「どうしたのだご主人様!? 一度にこんなにたくさん作って! いくら何でも一度にドパッとしすぎなんではないか!?」
「あまりにも大盤振る舞いしすぎてジュニアが困惑しているわよ!? どうするの! 子どもはちょっとしたことでも大きなショックを受けるのよ!?」
いや、ちょっと興が乗っただけだけれども。
それにそこまでビビることもないだろう。
あとの展開はわかりきっているのだから。
こうしてスイーツを作ると……。
「「「「「きゃああああああああああああッッ!?」」」」」
農場中の女子が押し寄せてくる。
甘い香りに誘われて。
それはもう運命のように決まりきったことだったんだよ!!
「たしかに、これはいつものパターンなのだ……!」
「用意しておくのも、ただ純粋な未来への対応というわけね」
そういうことだ。
そうしてなし崩し的に始まった抹茶スイーツ祭り。
春先に不○家がやってそうな催しだが、やるならやるでけっして手抜きしないのが俺だ。
スイーツを食べるのに本来欠かせないものを俺は手に入れたばかり。
それを振舞うことも欠かさない!
それは……。
「紅茶だ!」
そうスイーツと紅茶、その二つが取り揃っての美味しい午後のティータイム。
甘いお菓子と美味しい紅茶が揃ってこそのお茶会なのじゃああああああッ!
ということで紅茶を入れます。
ティーポットとか専用の器具が揃っていないので有り合わせになってしまうが。
また煮立った鍋のお湯に直接茶葉をぶち込んで、抽出できたらザルで茶葉をこしとって、ティーカップならぬ適当なコップに紅茶を注ぐ。
「ゴールデンシロップ!!」
紅茶が美味しくなる魔法の言葉を唱えて、あとはお好みで砂糖かミルクを入れてお召し上がりください。
抹茶スイーツと紅茶で『困ったな、お茶とお茶で被ってしまった』みたいなことにならないか心配ではあったが、幸いいい感じで合う。
これにて始まる農場初の本格お茶会!
英国仕立てのお茶尽くし!
さて、我が農場のスイーツ女子たちは振舞われた紅茶を見て……。
「……なんですかこれ?」
「茶色い水……体に悪そう……?」
あれッ!?
紅茶の得体の知れない色合いに困惑している!?
そんなバッカスが作ったウイスキーと似たような色じゃないか!
だからきっと慣れてるだろうって……。
ああ、女の子はウイスキーとか飲まないか。もっぱらワインかカクテルか。
そしてスイーツは女の子ばかりが食う。
範囲が重ならない!?
「ふッ、甘いわね小娘ども……! これだから子どもも生んだことのいないおぼこはダメね……!」
あッ、プラティ!?
「出産経験でやたらマウント取りに来ようとするプラティ様!?」
「アタシは、旦那様と一緒に過ごしてきた期間がそろそろ半端ではないのよ。積み重ねてきた実績と信頼が違うわ! アタシは今まで何度も旦那様の作った料理を食べてきた! そして不味かったことなど一度もないわ!」
積み上がったの俺の実績と信頼じゃん。
「だから今回だって美味しいのよ! たとえ一杯の水であってもね! ……というわけでいただきます! 熱いッ!!」
そりゃ淹れたての紅茶を、ふろ上がりの牛乳みたいに呷ったらそうなる。
「……でも美味しい! 水にほんのりとだけど独特の味があって……! 渋味があってまろやかだわ! それがケーキの甘みを引き立てて! 美味しい! 水じゃただケーキの味を薄めるだけだけど、こういう風に口の中を洗いつつお菓子の味を引き立てる方法があるのね!」
さすが実績豊富と自負するだけにレポートの内容が具体的だ。
他の女の子たちも背中に圧されるように恐る恐る紅茶を口にし……。
「美味しい!」
「これは上品な味わいだわ!」
「ケーキを味わうのにこんな方法があるだなんて! 聖者様の世界は本当に奥深いのね!!」
皆が紅茶とケーキの組み合わせに感動し、バクバク食らうのもプラティが食レポしてくれたお陰だった。
やはりプラティは俺の妻として欠くことのできないパートナーだ。
今度はさらに二人目の子供まで生んでくれるし。
……ん?
そういえば?
「妊婦にカフェインって駄目じゃなかったっけ? プラティダメだ! それ以上の紅茶は! 多分ある程度はOKかと思うけどッ! しかし出産するまでは!」
プラティには妊娠中のお茶禁止令が言い渡されブーブー言われた。






