554 オークボ城・追記
【お知らせ】
明日8/25(火)は『異世界で土地を買って農場を作ろう』七巻の発売日となっています。
是非ともよろしくお願いいたします!
ワシの名はサーベンホー。
人間国でもっともイカした職業、冒険者の一人だ。
しかもA級だ!!
A級は凄いぞ! 数万人といる全冒険者の中でA級は百人と満たない。
勇気と知恵と経験、そして実力のすべてが揃わなければギルドの昇格試験を受けることすら許されない。
そして実際に受けても合格できる者はごく僅か。
つまり選ばれし者ということだ!
そんなA級の上にはあらゆる超越者というべき五人のS級冒険者がいるのみ。
まあ、ヤツらは色んな意味で人間じゃないというか常識外れなので……。
……A級こそがまともな人間の到達しうる最高点というわけだ!
S級には及ばねど、A級にも上位冒険者として様々な支援、優遇措置がギルドによって保障されている。
ギルド直営のダンジョン管理街に行けば、最高の宿泊施設が割り当てられるし、最高級の料理や酒も食べ放題飲み放題。
ギルドの金でな!
何より行く先々での尊敬と歓迎が押し寄せてくるのが気持ちいい。
貴族やら大商人やら、偉いヤツらもワシがA級冒険者というだけで手揉みしながらすり寄ってくるし、女どもにはモテモテだ。
なんと言う役得!
A級冒険者最高!
と思っていたところ、取り巻きをしている連中がこんなことを言いだした。
「サーベンホー様ご存じですか? 難攻不落の城の話を?」
城?
そんなものがどうしたというんだ?
「地方の小領にある小城なのですが、計算し尽くされた地形に建てられた天然の要害で、かつ数多くの罠が仕掛けられ侵入は至難とのこと」
「城主はそのことが自慢らしく、年に一度だけ開放しては挑戦者を募集しているのだそうです。『侵入できるものならしてみろ』と」
フン、くだらん話だ。
どこぞの物好き貴族が考えそうなことだな。
「そして見事侵入を果たした者には褒美の品が贈られるのだそうです。それはもう豪華な!」
「A級冒険者のサーベンホー様なら、どんな城だろうと入るも出るも自由自在でしょう! いかがです? ここはサーベンホー様みずから乗り込み、身の程知らずな田舎貴族の鼻を明かしてやるというのは!?」
取り巻きどもが口々に囁くが、どうせこの街の酒にも飽きて退屈していたところだ。
その田舎領主自慢の小城に入り込み、酒でも宝石でもいくらでも頂戴していこうではないか。
何しろワシはA級冒険者なのだからな!
恐るべきダンジョンに比べれば、人間の作った城などまさしくオモチャのようなものだ!
プロの中のプロの実力を見せてやろうではないか!
* * *
……と、思って意気揚々と乗り込んだ。
目的の地はワルキア辺境領にあるというオークボ城なる名らしい。
自分から侵入者を迎え入れるなど、どんな物好き貴族が所有しているのかと思いきや……。
現地は、多くの人波でごった返していた。
「想像していたのとなんか違う……?」
まるでお祭り騒ぎ。
いやお祭りそのものだった。
周囲には出店が並び、ガキどもが愉快そうに駆け回っている。
ワシはこういう雰囲気が嫌いだ。
誰も彼もが浮かれて、ワシが特別であるということに気づきもしないからな。
「サーベンホー様! ただ今、受付に行ってきたのですが……!」
「A級冒険者だと告げても取り合わず、他の参加者と同じ扱いだと……!」
ほらこういうことだ。
A級冒険者であるこのワシを一般人扱いとは。
取り巻きどもが告げる報せは、実に不快だった。
「まあいい、バカには実力で思い知らせてやるまでだ。自慢の城をあっという間に攻略しA級冒険者に素人の浅はか工夫など無意味だということを教えてやろう」
「サーベンホー様!」
「さすがA級冒険者!」
取り巻きどもを引き連れて、ワシみずから堂々乗り込もうとしたが。
『場内放送です。オークボ城へお越しの皆様へお知らせいたします』
何だこの声は?
会場中に聞こえるような大きな声なのに叫んでいる声色じゃない?
『今回のオークボ城は、本戦を始める前にささやかな催し事を行う予定です。皆さま存分にお楽しみください』
これはまさか、何かの力で人の声を拡張しているのか?
まさか魔法?
遠い地に住む魔族は、そうした能力を持っていると聞くが……。
「こんな田舎の貴族の計画した催しなど、きっとくだらないものに決まっていますよ!」
「そうです! A級冒険者のサーベンホー様がお出ましになればすべて吹き飛びます!」
取り巻きどもがはやし立てるが……。
そうだな、一足早く顔を出し、話題をかっさらっていくのも悪くない!
『S級冒険者シルバーウルフ様とゴールデンバット様による競争。オークボ城攻略エキシビションマッチです』
ん!?
今なんて言った?
S?
S級冒険者といったか!?
そんなバカな!
こんな田舎にS級冒険者が来ているというのか!?
S級といえばA級よりさらに希少。世界に五人しかいないというのに、こんな田舎の祭りに現れるわけがないではないか!?
「いや、やっぱりいたあああああーーーッ!?」
エキシビションと言われた会場に並び立つのは、見覚えのある犬顔と蝙蝠顔!?
あの特徴ある顔つきは忘れない!
S級冒険者のほとんどは獣人族で占められているんだから!
「ど……、どうしてS級が……!」
アイツらが出てきたんじゃ、せっかくのワシのA級も霞んでしまうではないか!?
目障りな!
どうする!?
いや、ここはあえて出場するというのはどうだ?
好成績を上げて注目を受ければ、ワシの方がヤツらより優れているという評判が立つやも。
そうすればワシこそが新たなS級冒険者に!?
よし俄然燃えてきた!
早速参加の申請だ!
……何!? 上級コースがある!?
ならばそちらに参加させろA級冒険者であるワシなら当然だろう!
ケチケチ言うな、何が参加資格だ!? 一回クリアした経験がないと上級に参加できないとは!
ワシはA級冒険者だぞ、資格などそれで充分ではないか!
つべこべ言わずに上級コースに参加させろ!
* * *
そして。
ワシは第一関門で脱落した……!
しかも上級ではなく一般コースで。
結局どんなにゴネても主張が通ることはなく一般コースで参加するしかなく、それでも颯爽とクリアして存在を見せつけてやろうとしたところ、全然望まない結果になってしまった!?
あの程度の細い橋の上を渡ろうとして足を踏み外すなんて……!?
どういうことだ!?
S級冒険者どもを前にして動揺してしまったか? それとも昨日の酒が残っていたか?
「無様なものだなA級冒険者サーベンホー」
誰だワシを呼ぶのは!?
……ヒィッ!? S級冒険者シルバーウルフ!? しかも次期ギルドマスターになると宣言された……!?
「長年のブランクが表面化したようだな。A級の特別扱いに浸りきって、各地の接待を受けるばかりでダンジョンに入ることなく、体が鈍りきっている。それではオークボ城の第一関門も突破できんわ」
「な、何故それを……!?」
「知らないと思ったか? A級以上の冒険者には大きな便宜が図られるだけに責任も伴う。常に厳しい監視が付けられているのを気づかなかったか?」
獣のような鋭い眼光で睨みつけてくる。
いや実際コイツの顔は獣というか狼なのだが……!?
「このオークボ城は、冒険者ギルドにとってもいい催しなのかもしれん。お前のような名ばかり上級冒険者の化けの皮を剥がすのに、あのアトラクションはちょうどいい」
「うごごごごごご……!?」
「サーベンホー、お前からA級からC級へと格下げにする。そのまま引退するもよし、いまだ冒険者としての情熱が残っているなら改めて這い上がってくるのだな」
「何を言う!? いくらS級だからと言って他の冒険者の階級を上げ下げする権利がお前があると……!?」
「今日の展開を見ていなかったのか? 私は次期ギルドマスターだぞ?」
そう言われた瞬間体が凍った。
たしかにそうだった。
「早速ギルドマスターのお仕事励んで頼もしいにゃーん!」
「初仕事が、こんな無能冒険者の首切りとはな……!? しかし、既に元傭兵が大いに流入して冒険者ギルドの人員整理にはいい時期なのかもな」
「魔国への進出が本格的になったら魔族の冒険者も生まれるかもしれないにゃん! 混乱なく変革を迎えられるかはシルバーウルフちゃんにかかっているにゃーん!」
「プレッシャーをかけるな!!」
こうしてワシは特権をはく奪され、一般冒険者からコツコツやり直していくしかなくなった。
こんなことになるなら真面目にコツコツダンジョン探索しておけばよかった……!?






