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527 急襲、第三勢力

「ぷ、プラティ!?」


 俺の奥さんが、突如会場に乱入しておる!?

 しかも彼女だけではない、その後ろからパッファ、ランプアイ、ガラ・ルファ、ゾス・サイラさん……。

 あのメンツは……!?


「狂乱六魔女傑ッ!?」


 人魚族における最高の魔法薬使い。

 それを指して『魔女』と呼び、皆が恐れながら憧れる。


 そんなアンビバレンツな存在たる魔女が六人集まって構成されたのが狂乱六魔女傑。

 我が妻プラティもその一人だ。


「魔族における四天王、人族におけるS級冒険者、それに匹敵する名声を人魚族の中で持つ者といえばアタシたち六魔女よ?」


 不敵に言うプラティ。

 それを囲み見る観客たちは、一体何事かと戸惑うのみ。


「要するに人類最高のチームを決めるこの競技に、アタシたちも緊急参戦ってわけよ。人魚のことをよく知らない陸の方々に、アタシたちの凄さを学んでもらうわ!」


 ちょっとちょっと!?

 さすがに我が奥さんのことなので冒険もできず、貴賓席から駆け下りて会場へと向かう俺。

 プラティの下へ駆け寄る。


「何やってんのプラティ!? ダメだよ予定を引っかき回したら迷惑でしょう!?」

「大丈夫よ! アタシたちの乱入自体は主催者側に申請を通してあるわ!」


 予定に織り込み済みのトラブルだった!?

 なんというプロレス感。


「今回のイベントを目の当たりにして思ったの! これから世界がどんどん開けてくる、その流れに人魚族も乗るべきだとね! 今まで海の中に引きこもってきた人魚族だけど、これからは率先して陸に上がり、他種族と親交していかなくては! 今回はその一環なのよ!!」


 言ってることは正しいとして……。

 ……唐突すぎやしませんか!?


「そこで急遽、我が同志である六魔女をかき集め、戦いに参加したのよ! この子たちの力を併せれば、陸の連中など鎧袖一触で粉砕できるということを示すのよ!」

「友好を示すためにきたんだよね……?」

「というわけでアタシは魔女の一人として、この子に勝利を捧げるために奮戦してくるからジュニアをお願いね旦那様」

「お、おう……!?」


 とここまで抱き上げられていたジュニアを預かる俺。


 魔王軍と冒険者のメンツを懸けた勝負に、闖入してもいいものだろうか?

 これではただ単にお祭り騒ぎになっちゃったりしない?


「あのー……、ちょっといいかのう?」


 そこへ口を挟んできたのは、プラティに引き連れられてきた陣営の中から。


『アビスの魔女』ゾス・サイラさんだった。

 お久しぶりです、パッファの結婚式の時以来ですよね?


「わざわざ政策として具申してきて何事かと思ったら……? お祭り騒ぎはいいんじゃが、これあくまで人族と魔族のイザコザじゃろう? 人魚族がわざわざ首突っ込んで話を複雑にするだけじゃないのか?」

「何よ、魔女のくせに常識ぶった意見吐いて? 宰相になって人生守りにでも入った?」

「誰が守るか!? わらわは生涯オフェンスじゃ! つーかお前らがこぞってわらわを宰相に就けたおかげで常識論を打たねばならんのじゃろうが!!」


 なんかいい争いしておられる……!?

 っていうか今なんて? 宰相? 誰が?


「つーかな、そう、ただでさえわらわ宰相業を押し付けられてクッソ忙しいんじゃよ? 毎日秒単位のスケジュールこなしてんじゃよ。そこに割り込んで、こんなお遊びイベントに参加させられたらマジで予定に押し潰されて死ぬんじゃが?」

「バカッ! これはお遊びじゃないわ! 種族のメンツを懸けた戦争よ!!」


 プラティの暴論が留まるところを知らない。


「これから時代が変わり、三大種族の行き来が開けるようになった時、我々人魚族が他種族から舐められるようになっちゃダメでしょう?『お前の尾びれ磯臭え!』とか言われたらどうするの!?」

「言われんわアホが!」

「そうならないように、ここでアタシたちが人魚族の強さを示し、舐められないようにするのよ! 人族魔族が互いのメンツを懸けた勝負の場で、アタシたち人魚族がすべてを蹴散らせば、誰もが人魚を恐れて一目置くようになるでしょう!?」

「禍根にならんかむしろ!?」


 激論を戦わせるプラティとゾス・サイラさん。


 周囲の観客たちは『一体何だ?』と呆れ戸惑うばかり……。


「ゾス・サイラ、これから人魚宰相として国を支えていくアナタが、そんな弱腰じゃ困るわよ? 人魚は気高く、たくましい種族としてこれから陸へと進出していくの。アタシたち六魔女は、種族最高の魔法薬使いとしてその先駆けになるのよ!」

「もうちょっと平和的な方法ないかのう?」

「ないわ! 歴史とは常に戦いの連続! 他の魔女たちだって自分たちの進む道を他種族の血で染め上げたいと思っていることでしょう? ねえ!?」


 プラティからの恐ろしい確認に、他の魔女メンバーはどう応えるのか?


 一応、彼女と共にここまで登場してきた六魔女のメンバー……。


『凍寒の魔女』パッファ。

『獄炎の魔女』ランプアイ。

『疫病の魔女』ガラ・ルファ。


 いずれも感情を読めない深遠なる表情をしていた。

 思えばこの面子が揃うのもけっこう久しぶりだなあ?


 パッファとランプアイは、前まで農場に住み込んでいたものの結婚を機に人魚国へ帰ってしまったから。

 彼女らの元気そうな顔を見られたのはとりあえずの収穫だが……。


「……すまんプラティ、アタイ今回は欠席するわ」

「えええええええええッッ!?」


 そこへまずまさかのパッファが出場辞退。


「どうしたの義姉さん!? まさかアンタまで王妃に収まって人生守りに入ったって言うの!? 最後までツッパリ根性止まらぬと思っていたのに見損なったわ!?」

「人生守りに入って何が悪い!? それに今、守るべきはアタイ一人の体じゃねえんだよ。だからなおさら荒事には参加できねえ」

「え?」

「今、妊娠中だからよ……」

「えええええええええええええッッ!?」


 人魚王妃パッファ様、まさかのご懐妊。


 先日アロワナさんとついにご成婚され、かつ先代から王位を譲渡され人魚王妃となったパッファ。


 その彼女が身籠られたということはお相手は当然アロワナさんであり、その子どもといえばお世継ぎ。


 なんとめでたい!

 でかしたパッファ! 王妃の第一義務を果たしたな!?


「おめでとー! おめでとー!!」


 俺、率先して拍手!


「おお、これはめでたい! 祝福いたしますぞアロワナ殿!」

「かたじけない……!」


 いつの間にか貴賓席に人魚王アロワナさんまで列席して、皆から祝辞を述べられている!?


「おめでとう!」

「おめでとー!!」

「王子万歳!」

「ならこっちは美しい王女殿下に乾杯だ!」


 身内に限らず、その場に居合わせた観客が人魔の隔てなく祝福の拍手を送った。

 新たな生命誕生という誰がいつ見てもめでたいことだからそうなるな!


「妊娠おめでとう! 早く言いなさいよ、このぉ!!」


 プラティも自身母親であるだけに、手放しでパッファの懐妊を賞賛。


「だったら競争なんてさせるわけにはいかないわね! この時期の無理な運動が赤ちゃんにどんな悪影響を与えるかわからないわ! こんな大事な時に何戦おうとしているの、アホなの?」

「お前が用件も言わずにここまで連れてきたんだろうがあ!」


 やっぱりプラティの強引な進行だった。


 妊娠初期の不安定な時期に戦わせるわけにはいかないから、当然パッファは参戦辞退、夫アロワナさんが待っている貴賓席へと移る。


「思わぬおめでたでパッファが不参加になってしまったけど、まだまだ大丈夫よ。何しろアタシたちは六魔女。絶対数は四天王より多いんですからね!」


 それでも正体を隠したい『暗黒の魔女』シーラ前王妃が最初から不参加なんで、結局のところ残り四人なんですが。


「あの、プラティ様……」

「何? ランプアイ?」


 気分をとり直そうとしているプラティへ、今度は『獄炎の魔女』ランプアイが言う。


「わたくしも妊娠しました」

「はああああああああああああああああああッッ!?」


 そういえばランプアイも同じ時期に結婚して人魚国へ帰っていったっけ。

 ご懐妊の時期が同時でもまったく問題ない!!


「というわけでわたくしも今回見学させていただいてよろしいでしょうか? お腹の子に何かあっては夫たるヘンドラー様に顔向けできませんので」

「……おめでとう! 体をいたわって!!」


 またしても会場全方向から『おめでとう!』『おめでとおおッ!?』『健康を気遣ってーッ!!』と万雷の拍手。

 優しい世界だなあ。


「……だ、大丈夫よ! 三人に減ってもアタシたちは魔女! 必ずや優勝してこの世界に人魚ありと知らしめることができるわ!!」

「諦めて帰らんか!? 残り三人ったって、コイツはどう考えても戦闘向けじゃないじゃろ!? 実質わらわとお前の二人ぼっちじゃろ!?」


 益々追い詰められて重苦しいゾス・サイラ。

 なんとか戦わずにことを収めようと必死だ。


 そしてそんな両者に挟まれる三人目の魔女『疫病の魔女』ガラ・ルファは……。


「大丈夫です! 非力な私ですが皆さんの足を引っ張らぬよう頑張ります!」

「お前が前向きになってどうするんじゃああああああッ!?」


 こうしてゾス・サイラの抵抗虚しく人魚族代表狂乱六魔女傑(実際参加三人)の参戦が決まった。


 つまりこれは……。


 魔族の魔王軍四天王。

 人族のS級冒険者。

 人魚族の狂乱六魔女傑。


 三大種族それぞれのビッグネームが入り乱れての三つ巴の戦い!?

 お祭りの盛り上がり度が上がったことだけは間違いあるまい。

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― 新着の感想 ―
ゾス・サイラも温泉宿の常連になるべきでは?w
[一言] >「だったら競争なんてさせるわけにはいかないわね! この時期の無理な運動が赤ちゃんにどんな悪影響を与えるかわからないわ! こんな大事な時に何戦おうとしているの、アホなの?」 >「お前が用件…
[一言] 歩く細菌兵器が参戦してしまった.....
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