443 新米皇帝発展記その七 竜帝の家づくり
おれはガイザードラゴンのアードヘッグ!
最近毎日が楽しいぞ!
何故かって、ここまで散々てこずってきたダンジョン作りが快調だからだ。
『ほほほーい! 出来るぞ! どんどん出来ていくぞぉ~!!』
テンション上がって口調もおかしくなる。
ガイザードラゴンのダンジョン竜帝城は、他のいかなるダンジョンとも異なる特殊な成り立ちを持っている。
ゼロからガイザードラゴンの放つマナだけで形成されるのだ。
他のダンジョンが自然マナの滞留を原因に生み出されるのと違い、一個の存在だけを起因としているダンジョンは竜帝城だけだ。
それだけにダンジョンの形は、大元であるガイザードラゴンのパワーとイメージ通りになる。
つまりおれだ。
新たにガイザードラゴンなりたてとなったおれは、それだけにまだ色々足りていなくて竜帝城を作り出せなかった。
何度も失敗した。
失敗しまくって、やっぱりおれはガイザードラゴンに向いていないんじゃないかと自信喪失してしまったほどだ。
でもやった。
試行錯誤の果てに、ついにおれは竜帝城を発生させるコツをつかんだのだ!
おれの場合ダンジョンとして実体化させるだけのマナ量には事足りていた。
ガイザードラゴンになった時点で馬力は充分にある。
問題はイメージだった。
実体化させる濃厚なマナを、どんな形にするのか?
明確なイメージが伴わなくては形になるものもならない。
俺のイメージ力が足らないばかりに最初はこじんまりした竜帝城を作製してしまったり、それどころか変なぐんにゃりした何かを生成してしまったものだ。
それが我ながらショックでな……!
才能がないんじゃないかと一時期ガチへこみしたものだった。
しかし今は違う!
実体化のコツはイメージだとわかって以来、すこぶる快調だ。
そう人も竜もゼロから想像することはできない。
誰もが過去の記憶を頼りに想像を具現化するものだった。
おれに足らなかったのはイメージ!
……の頼りにするための記憶!
今のおれは、過去の記憶から持ってきたビジョンを頼りに、マナで再現実体化することが容易に可能となったのだ!
参考にしたのは盟友アロワナ王の住む宮殿!
あれをそっくりそのままイメージ実体化することで、我が竜帝城も随分様になってきた!
『こないだ楽園島に行ってきたことも大きな収穫だったな!』
あそこに建っている庁舎や迎賓館は作りも立派で大きな参考になった。
アロワナ殿の結婚式に出席したのはあくまで盟友の慶事を祝う目的であったが、このような思わぬ収穫を得られるとは!
『これが人間の言う「情けは人の為ならず」というヤツですかな父上!?』
『煩いな。ドラゴンがニンゲンの格言をひけらかしてんじゃねーよ』
おれの隣に並び立つ小竜は、我が父ドラゴン、アル・ゴール。
先代ガイザードラゴンでもあった。
以前、おれやアロワナ殿たちが力を合わせて挑み、倒したことでガイザードラゴンから退位。
今やただのドラゴンとなって力も相当に弱まっている。
ドラゴンの姿も小鹿程度のミニサイズ。
ニンゲンの姿に変身する時も少年の姿だし、相当力が衰えている証拠なのだろう。
『好きで少年の姿に人化してるんだぞ』
『え? そうなんです?』
『お前らだって皆そうだろ。人化の際の姿形は等しく各々の趣味だ。おれは現役ガイザードラゴンだった時期から人化の際はあの姿だ』
そうなんですか。
現存するドラゴンの中でぶっちぎりの最長老であるはずなのに、好みの若作り……!?
いや、それはいい。
話が大いに逸れた。
今は竜帝城の作成参考にする資料を集めてやったぜ! という話だ。
特にこないだ行ってきた人魚国の楽園島。
『人魚族の外交窓口なんだって? そりゃ国家の威信に懸けて豪勢な造りにするだろうよ。なんでもドワーフに発注したとか……?』
『ドワーフ! モノ作りにかけては最高の技術を持つという亜種族ですな! なるほど彼らの技術が凄いんですな』
しかし物知りですな父上!
さすが先代ガイザードラゴン!
『最強種たるドラゴンが下等種族に学ぶというのも問題だが。しかし実際、今のお前に必要なのは学習することだろうからなあ』
なんです父上藪から棒に?
私は充分立派な竜帝城を作れるようになったと思いますが?
『そりゃ最初に比べれば随分マシになってきたが、それでもまだまだ足りんよ。まず規模という点でおれが作った前の竜帝城に遠く及ばない』
『ぐぬおッ!?』
『お前の構想力が全然足らない証拠だな。頭の中空っぽになるまで出し尽くしても。竜帝城となるべき敷地全部を埋めることができないんだ。もっと知識量を増やさないと壮大な世界観は生み出せないってことだな』
おれのイメージが貧弱ということか……!?
たしかにおれもドラゴンだから人類に比べりゃ長寿だけども。
ニンゲンたちの造る建築物なんて興味がなくてまじまじ見たことなんてなかった。
しかし、そのままじゃいけない。
これからはあらゆることを見聞し、知識量を増やしていかなければ立派な竜帝城は作れない。
ガイザードラゴンとなるにも物知りでなきゃ恥ずかしいだろうし……。
『……今後の方針が決まったな』
となれば呼ぶ名は決まっている。
『姉上! 姉上!』
おれはブラッディマリー姉上を呼ぶ。
どうせその辺にいるんだろうと思いきや……。
『…………』
どうしたんだマリー姉上は?
なんで茫然と海など眺めて過ごしてるんだ? 心ここにあらずという感じ?
『マリー姉さま? どうされたんですか? ボーっとしてないで一緒に遊びましょう?』
その周囲をシードゥルのヤツが鬱陶しく飛び回っている。
恐怖のグラウグリンツェルドラゴン相手に物凄い度胸だな!?
『……綺麗だったなー、あの花嫁』
なんかブツブツ言っておられる。
先日アロワナ殿の結婚式に参列して、帰ってきてからずっとこうだ。
『わたくしも結婚したらあのドレスが着れる……? あの純白の……? ダメよ! 白はアレキサンダーの色だもの! それに対抗してわたくしは何でも漆黒でいることに決めたのよ! 鱗の色も着物も……! 今更純白なんて着れるわけがないじゃない!!』
『そんな理由で黒キメしてたのかコイツ……!?』
父上が超絶呆れ顔で言った。
なんだマリー姉上?
ウェディングドレスを着たパッファ殿のことが羨ましくなったのか?
そりゃ姉上だって女の子だものな、いろんな服を着てオシャレしたいだろう。
『だったら着ればいいじゃないですか、純白のドレスを』
『ぴぃッ!?』
我らドラゴンは竜魔法で自由に姿を変えられる。
着ている服だって自由自在だ。
何を着たっていいじゃないか。自由こそドラゴンの本分だと父上も言っていた。
『着ていいの? わたくし着ていいのウェディングドレスを!? これがもしやプロポーズ!?』
『違うと思いますわー』
シードゥルが間延びした口調で否定していた。
何を?
『そんなことより聞いてください姉上! 今後の方針が決まりましたぞ!』
『何よ! ウェディングドレスの話題は「そんなこと」呼ばわりされちゃダメだわ! ……いや待って今後の方針て、もしやわたくしとアナタの未来について!?』
シードゥルがまた『違うと思いますわー』と呟いていた。
だから何が?
『アードヘッグお前いつか後ろから刺されるぞ?』
『何ですか父上まで!?』
まあそんなことはいい。
おれはさっきまで話題に上っていたイメージと参考資料の話をマリー姉上にも聞かせた。
その上で……。
『より豪華な竜帝城を築き上げるためにも、おれはもっと勉強せねばならんと思うのです! イメージの元となる知識を掻き集めるためにあちこちを巡って見学しなければ!』
そして思ったのが……!
『余所様のダンジョンを見学しようと思うのです! 実力ある主が築き上げた上級ダンジョンを見学し、優れた部分を取り入れ、おれの竜帝城作りに活かそうと思うのです!』
『! なるほど。アナタの言いたいことがわかったわ……!』
マリー姉上、久々に最強格ドラゴンの貫禄を表す。
『わたくしのダンジョン「黒寡婦連山」を見学したいというのね? 普通ならライバルに見せてやるなんてしないけど、アナタなら特別に案内してあげてもいいわよ?』
そういやマリー姉上も自分のダンジョン持ってるんだったよなあ。
なのに何故ここに入り浸っているのだろう? 謎だ?
『いいえ、おれとしてはやはりまず最高のダンジョンから見学していこうかと』
『えッ!?』
『おいやめろ、それ以上言ったるなや』
父上が慌てて止めに入るが、既に言いかけているので最後まで言おう。
『アレキサンダー兄上が治めるダンジョン「聖なる白乙女の山」に見学に行こうと思うのです!』
だからマリー姉上も一緒に行きませんか?
と誘おうとしたところ。
言うより早くグーで殴られた。







