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410 ハンマーソングとダルマの塔

 こうしてジュニアのために積み木を作ってあげた俺。できるパパ。


 しかし積み木だけでは飽き足らずもう一品作ってみたくなった。

 ジュニアが賽の河原の石積みするのを見て思い出したのだが。


 あれによく似た造りの玩具。

 それ即ち……。


「だるま落とし!」


 円筒状に積み上げられたピースの一つ一つを叩いて抜いて落としていく玩具!

 崩さずに最後まで叩き抜ければOKというルール。


 ジュニアが理解するにはまだ時間がかかりそうな玩具ではあるものの、成長に先んじて用意しておくのも悪くなかろう。


 というか俺も久々に遊びたくなってきた。

 だるま落としで。


 素材は積み木作りの余りがあったのでそのまま流用し作製。

 ミエラルから塗料を分けてもらい、ピースごとに派手に色分けして完成した。


 異世界だるま落とし。


 異世界で作れば何でも『異世界○○』になるんだぞ。


「顔の部分だけ見るも無残な出来栄えになったが……」


 それは仕方ない。

『至高の担い手』は見る人によって評価が変わる芸術面には効果を発揮しないのだ!


 まあいい。


 早速俺自身がだるま落としで遊んでみよう。


「よーい、しょっと」


 積み上げられた円筒ピースの下から二段目をハンマーで叩く。

 カーンと小気味いい響きでピースが飛び出していき、空白となったスペースにだるまの上の部分が落下。

 まったく問題なく収まった。


「……いかん、『至高の担い手』が発動している」


 手にしたもののポテンシャルを最高以上に引き出す『至高の担い手』なら、持った木槌を通して絶妙の力加減でだるま落としのピースを叩き出すことができるだろう。

 というかそれ以外できない。


「まさか神から贈られたギフトでだるま落としを楽しめない体になっていたとは……!?」


 楽しんだけどね。

 スムーズに全ピースを叩き出して速やかにだるま落としをクリアした。

 無双、楽しい。


 しかし単純構造なのですぐ飽きる。難易度ゼロならなおのこと。

 ひとしきり遊んで、あとはジュニアが遊べる年齢になるまで保管しておくとしよう。


 と思ったが……。


「なんだこれ? 食い物じゃないのか?」


 既にヴィールが嗅ぎつけていた。


 俺が新作料理を作ると秒でやってくるヴィールが、食べ物じゃなかったために外れ認定していた。

 本来なら積み木を作製している時点で現れてもよかったが、食べ物出なかったのでセンサーが遅れたのだろう。


 しかもそのうち他の住人達も惹かれて集まってきた。


「珍しく食べ物以外のものを作られていると思ったら、これは一体なんだ?」

「うーん玩具?」

「こうやって遊ぶものらしい。横から木槌をドーン」

「おおッ!? 何と斬新な!?」

「だるま落としというのですか!? 素晴らしい!!」


 ここでそのセリフ来ちゃいますか。


「うわッ? 丸ごと吹き飛ばしてしまった!?」

「オークには力の調整難しそうだな」

「チマチマしているのは苦手だ……!?」


 だるま落としはジュニアの中で流行するより前に、農場の中で大流行になった。

 オークやゴブリン、エルフに人魚にサテュロスに大地の精霊、留学生たちもこぞってだるまの腹部を抉り取ることに夢中になる。


 たまには、そういうワイワイガヤガヤもいいかと思って放置していた。

 そして数日後……。


    *    *    *


 事態は思わぬ発展を見せていた。


「なんだこれは……!?」


 俺の前にうず高き塔が立ち並んでいた。


 数値にして四、五メートルぐらい?

 それぐらいに巨大な建築物が、実際のところは建築物ではなかった。


 玩具だった。


 建築物に匹敵する巨大玩具。


 その名もギガントだるま落とし!?


「お前らが作ったのか……!?」


 盛り上がっているオークやゴブリンやエルフらを見渡し呆れる。


 俺が作成した標準的だるま落としに感銘を受け、形だけ同じでスケールを何倍にしてコピー生産したようだ。

 オークの建築能力とエルフの技巧、あとゴブリンの万能性を合わせたら容易かろう。


 しかし、できることと実行することの間には同じようでいて隔絶された違いがある。


 何故実行した?

 何故できるからと言って実際作った?


「だって楽しそうじゃないですか?」

「試してみて来年のオークボ城の新アトラクションにしようかと!」


 そんなことまで意図していたのか?


 とにかくはじまった等身大だるま落とし。


 違うのは大きさだけではない。

 円筒状に積み上げられた巨大ピースの頂点は、だるまの顔ではなかった。


 人だった。


 なんと上部に人が乗っての巨大だるま落とし!?


「ぐはははは! おれに負けるためによくぞ集まったのだー!」

「いやアンタこーいう催しごと大抵負けてるじゃないの」

「森の中で培われたバランス感覚! エルフの本領を見せてやる!」

「いやーん高いところ久々ですわー」


 見たところ巨大だるま落としの頂上に立っているのはヴィールとプラティとエルロン。

 そしてサテュロスのパヌの四人であった。


 何故このチョイスかは知らないが、とにかく競技スタート。


 地上では、餅つきに使うんじゃないかという大きさの木槌を用いてオークたちが叩く。

 対象が大きければ怪力でも問題ないということで、オークたちの動作はフルスイングバッティングのようだった。


 当然オークの全力で叩かれたからにはだるま落としの円状ピース、凄まじい勢いで飛び抜けていく。


 周囲の見物人たちに飛び込みそうなところをゴブリンたちが寸前で受け止めるほどだった。

 そして上部では。


「うわッ!?」「きゃあッ!?」「はッ!」「フフン……!」


 頂上に乗る四女性、上部ピース諸共重力に引かれて落ちてくる。

 その衝撃、揺れはそれなりのもので普通なら立っているのも難しいだろう。


「まさかそのための……!?」


 オリジナルだるま落としにはない、巨大だるま落としの勝敗要素。


 上に乗っている者がバランスをとれず、衝撃に倒れ落ちてしまえば、その際も失敗。


 下選手が素早くピースを打ち抜き、上選手がバランス感覚を駆使して踏みとどまる。

 これがこの競技の神髄ということか!?


「思ったより衝撃強いわね……!? 反動で飛んじゃいそう……!」

「ぐふはははは、この程度で取り乱すとは所詮下等生物なのだー!」


 上部の様子は、やはりヴィールが最強生物ドラゴンの貫禄を見せつけていた。

 どんなに勢いよく落ちても、まるで衝撃が伝わってこないかのようにビクともしない。


「くッ!? あれぐらい姿勢が盤石なら、下もガンガンピースを落とせるわね!?」

「一番早く下に到達できるのはおれなのだー! トップはいただきだなー!」


 そういうルールあったの?

 全部のピースを撃ち出して、上部選手を地上に向かえる。それをもっとも速く完遂したら優勝ということか。


 なるほどそういうことなら上部選手のバランス感覚のよさは勝敗にダイレクトに直結する。

 上が安定するまで下は次のピースを打ち抜くことはできないんだからな。

 ペースの速い遅いに直結する。


「しかしヴィールの安定感が半端じゃない……!」


 まるで衝撃がまったく伝わっていないかのように微動だにしていない。

 これなら下の選手もハイペースで打ち続けられるだろうし、後続を引き離すのも容易い。


 さすがヴィール。

 ドラゴンはいつも空を飛んでいるだけに、空中での平衡感覚に長けているということか!?

 まるで本当に浮いているみたいではないか!?


「……あれ、ちょっとまって?」


 ヴィールのヤツ、本当に浮いてない?

 ドラゴン形態で飛行する際にも使用している浮遊魔法を人間Verでも使用しているな。


「ちょっとズルいわよ! そんなことしたら振動が伝わってくるはずないじゃない!?」

「うわー、バレてしまったー!?」


 不用意にトップをひた走って注目を集めたのがアダになったな。

 ヴィールはルール違反にて失格。


 その他で最初に地上へ到着、トップの栄冠を勝ち取ったのはプラティでもエルロンでもなく、サテュロスのパヌであった。

 ダークホースであったが、山羊の獣人である彼女はそもそも山岳の超悪路での踏破能力に長け、垂直な崖だろうと難なく駆け登ることができる。


 バランス感覚も実は農場随一だった。


 こんな感じで農場に新しい遊びが生まれ。

 世界中へと広がっていきそうだ。

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