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407 オークボ城ダイジェスト:観客編

 第二関門で敗退してふてくされた俺を迎えてくれたのは、プラティとジュニアだった。

 この二人に迎えられたら、どんな時でも笑顔になる。


「おつかれー、旦那様ホントあの転がる岩、鬼門ね」


 起こったことをありのままに表現しないで……!

 辛くなってくるから。


 プラティの腕に抱かれながらジュニアが『俺ならもっと上手くやる』的な顔つきをしていた。

 来年から彼も参加するのだろうか?


 しかしよく見てみると、ここの観客席やけに華やかだな?

 母親が四人も並んでいる。


 まずウチのプラティとジュニアでしょう? そしてアスタレスさんと魔王子ゴティアくん、第二魔王妃のグラシャラさんに魔王女マリネちゃん。

 そして地元領主夫人であるヴァーリーナさんが生まれたばかりの男の子を抱えていた。


 これが国際結婚カップルとの間に生まれた第一子か。


「いや、ご出産おめでとうございます」

「その節は大変お世話になりまして……!」


 ヴァーリーナさんはお子さん共々深々お辞儀した。

 かつては魔王軍の一員として領主を監視していた立場なのだから、元魔王軍四天王で現魔王妃のアスタレスさんグラシャラさんと並ぶのはさぞかし胃が痛そう。


 そして子どもたちの中で一番年長のゴティアくんは随分大きくなった。

 もう歩けるのかな。

 この子こそ来年はオークボ城に出場して父親以上の記録を弾き出すのかもしれない。


「まあ早期敗退しても気を落とさないでいいわよ。今年はこっち側も楽しめるようにできているから」

「こっち側?」


 それはこの観客側という意味か?


 参加者の倍増に合わせて、観客も凄まじい数になっていた。

 対応としてゴブリンたちが迷子センターを設立したそうな。


 ……ゴブリンが運営する迷子センター。

 不安そうだが安心だ。


「たくさんいる観客を飽きさせまいと、あの手この手の工夫ができているわ。向こうなんかホラ」


 プラティが指し示す先には、レタスレートがいた。

 先だっても大活躍の彼女だったが。


「寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 戦いは城内だけじゃないわよ!」


 何をやってるんだアイツは?


 よく観察すると、アイツの背後に何かしらセットが組まれて、そこにお客さんが殺到している。


「何をやっとるん?」

「あッ、セージャ。見てわかるでしょう出店よ!」


 出店!


「ルールは簡単、皿に乗った豆を箸で挟んで、隣の皿に移す! 制限時間に一つでも多く豆を移すのよ!」


 そんな箸使いの練習みたいなゲームを!?


「移せた豆はそのまま持って帰っていいことになっているわ! 大豆小豆ピーナッツソラマメ納豆、色んな豆から好きに選べる! 至れり尽くせりのサービスで、ここでも一番人気を狙うわよ!」


 ん?


「今納豆って言った?」

「当然よ、設営にはホルコスちゃんが関わってるんだから」


 ホルコスフォンが関わったら納豆出てくるのが当然なんだな。

 それもそうか。


「これがあるから反乱の現場に血相変えて駆け付けたのか」

「そうよ、出店の準備にどれだけ心血注いだと思ってるの! それを台無しにするなら誰であろうと平和の生贄となってもらうわ!」


 そうか。

 今年は観客席に出店が並んで観戦以外の楽しみがあるんだな。


 オークボ城そっちのけで豆挟みに熱中するお客もいるようだ。


 俺もあとでやってみよう。


 本戦よりも出店で儲けようと目論むのはレタスレートだけでない。

 他にもいた。


「がははははははは! ここがおれの頂点なのだー!」


 ヴィールがいた。

 アイツは歩くバランス崩壊者だから、オークボ城には関門サイドでも挑戦者サイドでも参加できないんだよな。

 ここに生き場を見出したか。


「下等生物どもにドラゴンの英知を教えてやるのだー! 見よこの絹糸のように流れるうどんをーッ!!」


 ヴィールが設営したのは手打ちうどん教室のようだ。


 博覧会より引き続き、コイツのグルテン個性化が顕著だ。

 それでいいのかドラゴンよ?


 ただ手打ちうどん教室は観客からもなかなか盛況で、できたうどんはそのまま持ち帰りできると言う。

 もしくはオークボ城挑戦者に漏れなく振る舞われる豚汁に入れてOKなどという解説まで付いて本気ぶりが窺える。


 まあヴィールもこのイベントを楽しんでくれたなら何よりだ。

 さっきもシルバーウルフさんに嫌がらせしたりと積極的に絡んでいたしな。


 ヴィール、ホルコスフォン、レタスレートと博覧会でも活躍していたメンバーがのさばる観客エリア。

 しかしさらに大掛かりで豪快な出し物があった。


 観客席エリアのさらに外側の開けたスペースに、なんか細長いものが並んでいた。


 細長いが巨大だ。

 それが斜め六十度くらいの角度で天を仰ぎ、まるで大砲が横一列に並んでいるようだった。


 いや、あれはある意味大砲の列だろう。

 撃ち出すのは砲丸ではなく人間だが。


 そうあれは、反乱鎮圧にも使った人間カタパルトだった。

 あれを場外アトラクションとして利用しているのがアレだった。


「さー、いらはいいらはい! 空を飛んでみませんか? 今なら鳥の気持ちが味わえますよ!」

「反乱鎮圧にも大活躍した人間カタパルト体験! 土産話の種にもなりますよー!」


 ゴブリンたちが客引きしていた。


 そうこれは、人間カタパルトで撃ち出されて空を飛ぶ体験をするアトラクションのようだ。

 絶叫マシン系?

 バンジージャンプと同じ扱いをするのが一番近いのかもしれない。


 元々こういう使い方をするために開発したものだからな。

 真実実際のところはオークボ城本戦に使いたかったが、スペースなどの問題で不採用になった。


「ああいう形で再活用するとは……!」


 人間カタパルト体験は主に子どもから人気のようだ。


 衝撃吸収魔法をかけ、カタパルトに乗り、オークから押し出されて飛ぶ。

 そうして遥か向こうに確保してある着弾エリアへと向かうシステムだ。


 安全は保障されているものの、さすがに万が一の不安はある。

 そこでウチのゴブリンたちが体験希望者とベルトでしっかり繋がり一緒に飛ぶ。

 スカイダイビングでお客とインストラクターが一緒になるのと同じシステムのようだ。

 そうして万全の体制で空飛ぶ体験を楽しんで、思い出を作ってもらおうということか。


「お!? 我が君!」

「我が君もどうです人間カタパルト!?」


 接客のゴブリンたちに見つかってしまった。


 うむ。

 いいかもな。


 俺も人に生まれたからには一度空を飛んでみたいと思ったところなんだ。

 こないだ海底にも行ったから、ここで空を飛んだら陸海空制覇だな!


 ルール通りにゴブリンの一人とベルトで繋ぎあい、しっかり固定した上でカタパルトに乗り、オークに押されて飛んだ。


 楽しかった。


    *    *    *


 そうした楽しげなイベント目白押しで第二回風雲オークボ城は続いていった。


 全日程三日間に代わる代わる人々が訪れ、終わる頃には前回の何倍という観客数を記録したのだった。

 今年のオークボ城も大成功となって、第三回への弾みがついたように思う。


 しかし今思うと……。

 ここ最近お祭りの連続だったな。


 秋終わりの人魚国での武泳大会に始まり。

 魔国での農場博覧会。

 そして人間国での風雲オークボ城。


 奇しくも人魚、魔、人間の主要三ヶ国全部でお祭りを行ったことになる。

 なんだ俺たちはどんだけお祭り好き集団なんだ? と苦笑してしまうが、そのお陰でこれまでにない賑やかな冬を過ごすことができた。


 そう冬。


 大地が雪に覆われてしまうために農作業ができない暇な冬だ。


 農場がある地域は豪雪地帯だが、お祭りしているうちに雪も解けて黒い土が顔を出してきた。


 そろそろ俺たちもいつもの生活に立ち返る時。


 いよいよ春がやってきた。

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