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335 九千八百一体目の夢、壊れる

 私の名はマリアージュ。


 天才魔法研究者である。


 私は才能を持って生まれた。

 それまでの常識を覆し、新しい常識を開始させるに足る才能である。

 私は世界を変えるために生まれてきた。


 私の才能を立証し、世に広めるためには権力者の後援がいる。

 私は魔族に生まれたので、魔族における最高権力者・魔王の下に赴き、私の天才を思う存分アピールしてやったのだが……。


『夢物語はいらんぞえ』


 ……そう言われて抓み出された。


 なんというバカ者か!?

 私の天才を理解できずに追い出すなど、どれだけの世界への損失かわからないのか!?


 世界は、在り方を間違った。

 あんな無能を魔王に祭り上げるなど、世の中が間違っているに違いないではないか。

 この私を認めないなど、世の中が間違っているに違いないではないか!!


 いや、これはむしろ天啓だろう。


 間違った世界を叩き壊し、正しい世界へ作り替える。

 そのために私の天才があるのだと。


 私は私の才能の使い方を悟った。


 そういう意味では記念すべき日だった。

 私を認める世界を作り出すために、今ある世界を壊そう。


 この私の天才をもってッ!!


    *    *    *


 そう決意してから早三十年。

 私の夢は叶えられそうになかった。


 我が独自魔法理論を実用化して形と成した自動人形。

 これの完成に三十年も費やしてしまった。

 たった一体作るのに。


 ここまで来ると『あれ? 私ってひょっとして天才じゃなかったんじゃ?』という気もしてくる。

 なんてったって三十年だもの。

 無根拠に自分を信じられたのは若さゆえ。その若さも時の経過ですっかり失われてしまった。


 当初の予定じゃたった一年でこれ完成させる手筈だったのになあ。

 それを三十年て……。

 自分の要領の悪さが改めて浮き彫りとなる事態でしかなかった。


 自動人形。


 たしかに我が才能のすべてを込めた最高傑作ではあるが、これ一体だけでは何も変えられない。

 せめて一万体を超える大軍団ぐらいでないと。この世界を変えることもできないし、魔王軍と戦えない。


 これからその一万体を作り出す?


 無理だ。

 完遂するより先に確実に我が寿命が尽きる。


 これが私の才能の限界ということか?

 結局私は、世界を変えることなど能わぬ凡才だったというのか?


 いや、ここで諦め現実を受け入れてしまっては、自動人形作りに費やした三十年がそれこそ無駄になってしまう!

 それだけは認めない、絶対に認めるものか!


 よしこうなれば、新しいプランを立てよう。


 計画達成までに私の寿命が足りないというなら。寿命を継ぎ足せばいい。

 老いて朽ちるこの体を捨て、新しい体に替わるというのはどうだ!?


 幸い新しい体にはアテがある。

 自動人形だ。

 我が才覚が生み出した魂なき稼働体に、私の記憶意識を移し替えればいいのだ。


 天才の私にかかれば、それぐらいお茶の子さいさい朝飯前!


 よし、どうせならば新しい体は最強の体がいい。

 第一号機が完成にしたことで、自動人形開発のデータはしっかり揃っているからな。

 これを基礎とし、さらなる改良最適化を加え、戦闘型の最強自動人形を、我が新たなる体にしてやるのだッ!!

 その完成の暁には、その超絶戦闘力によって今度こそ魔国を滅ぼし、私の才能を認める新世界を作り出してやるのだああああッ!!


    *    *    *


 ……それからさらに四十年が経った。

 さすがにもう私、ヨボヨボ。

 年中腰が痛いし、歩くのもしんどい。歯が抜けた。


 こんなザマなのに山奥の研究所で一人生活できているのは、四十年前に完成させた自動人形一号機が身の回りの世話をしてくれるからだった。


 ありがとう、本当に助かったよ。

 ……ごはんはさっき用意してくれたろ?

 同じ指示を絶えず繰り返すのがコイツの試作機たるところだよな。自動人形一万体製作プランは廃案だって言ったのに、暇を見ては自分の同型機を量産してるし……。


 しかし、コイツの世話になるのも今日で最後。

 四十年の歳月をかけて、ついに私自身の新しい体が完成したのだから!

 試作機の一号より遥かに高性能な発展型自動人形! これこそ私の新しい体に相応しい!


 ……結局一号機よりもさらに作成時間かかっちゃったけど。

 さらに、ちょっと色々新機能を搭載しすぎて、それを整合するために拡張を繰り返したら、いつの間にかドラゴン並の巨大さになっちゃったんだけど…!?

 ……まあいいか。

 デカいは強いだ。巨大自動人形と化した未来の私が、魔都を破壊し尽すその姿が目に浮かぶよう!


 よぉし!

 ではついに最終工程。私の意識を巨大自動人形に移し替える!

 それが達成された時、巨大自動人形はこの私マリアージュ自身として完成を見るのだ。

 この意識転送用台座に座って……。


 転送開始!

 全データ転送完了予定時間……。


 八十年後!!


    *    *    *


 ……始める前になんで気づかなかったのだろうか?

 人格データの転送時間が長すぎる。


 それだけ知性体の持つ記憶やら感情やら意識やらのデータ容量が大きいということだろうが……。

 元の私の体は、データ転送が開始されると同時に生命活動を停止して後戻りもできないし……。

 記憶意識は一旦転送装置に保管されるから、元の体は腐ろうが乾こうが全然問題ないんだが……。

 何で吸い出すのは一瞬なのに、新たな体へ流し込むのには数十年もかかるんだ。


 いやもういい。

 すべては済んだことだ。


 まさに今日、八十年の時を越え人格データ転送作業は、ここに完成を見たのだから。

 ここに爆誕。


 巨大自動人形マリアージュ2!!


 試作機自動人形を作り出すのに三十年。自分自身の新しい体とするために発展型自動人形を製作して四十年。その体に人格データを移すのに八十年!


 ……しめて百五十年かかってしまった……!


 しかし過ぎ去った時間も過去のもの!

 大切なのは今!


 今こそすべての準備が整って、魔国への復讐が始まるのだ。

 旧き世界をぶち壊して、新たな世界を創造する。


 そのために甦った私は、機械仕掛けの巨神なのだ!!


 さあ、巨神体を設置してある研究所最下層部から這い出すぞ。

 研究所にもはや用なし、倒壊したってかまわない。


 ……ん?


 なんかえらく残骸が多いな? しかも自動人形の残骸ではないか?

 一号機のヤツ、私が人格データ移行作業に入ったあともせっせと量産していたというのか?

 でもなんで壊れてる?


 ともかく地表に出てみると、思ったより様子がかなり違っていた。

 何やらたくさんの者たちがおる。


 魔族やオークゴブリン……、人族まで?

 その中に交じっている、あの背中に翼の生えた女は何族だ?

 よくわからん。

 このバラエティに富んだ顔ぶれは……?


 よくわからんがまあいい。

 本格稼働した私といきなり出会うとは不幸以外の何者でもなかったな。


 この機械仕掛けの巨神マリアージュ2による新世界創造の前祝いとして、全員死ぬがいい!


 この巨大自動人形機体に搭載された腕部は、オーク四百体分の筋力を持つ!

 一薙ぎしただけで、地表すべてを根こそぎにする!

 目の前にいる魔族も、人族も、オークやゴブリンごとき擬人モンスターなども!

 何百人束になって掛かったところで、まったく相手にならぬわ!


 あの翼の生えた女も、ちょっぴり研究心を刺激されるがどうでもいいだろう。

 我が天才的偉業の前では些末な問題に過ぎない。


 命あるものもすべて皆殺しにしてやるわああ!!


 ……と思ったら。


「マナカノン斉射」

「獄炎霊破斬と青雷極天光!」

「セイントオーク拳!」

「我がオリジナルレシピ爆炎魔法薬を食らいなさい!」

「豆パワーラリアット!」


 なんか物凄いものの一斉攻撃が来て、私はあえなく木っ端微塵になった。


 なんで?


 やっと完成した結果がこれなのか……!?

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書籍版19巻、8/25発売予定!

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