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329 留学生vs農場五番勝負その一

「ベレナ様……!?」

「ベレナ先生……!?」


 若い女魔族の登場に、もっと若い学生たちは注目。


「皆さんごきげんよう、アナタたちをブチのめす役目を仰せつかりました。『自称無能』のベレナです」


 その二つ名まだ使うのか……!?


 学生たちはベレナのことをよく見知っていた。

 ただでさえ前職・魔王軍四天王補佐ということで魔族組の子には名が知れているだろう。

 そうでなくても学生たちの授業にはベレナが教師の一人として参加。魔王軍仕込みの戦術論を教えていたのでみんな彼女のことを知っている。


 ……余談だが、ここ最近は自己の存在意義を求めて葛藤することはそんなになくなったベレナだが、それでも新しい仕事を与えると尋常じゃなく喜ぶよ。


 そんなベレナと対峙して、人魔人魚の学生たちは困惑する。


「ここで、キミたちの対戦相手五人の選考基準を前もって説明しておこう」


 何故五人なのかという、数の意味を含めて。


「五人のうち三人は、各種族の最強という基準で選んでみた。人族、魔族、人魚族の中での最強だ」


 もちろん『我が農場の住人の中で』というさらなる選考基準も重なる。


「ベレナは、ウチに住んでいる魔族の中で最強というわけだ。なので呼ばれた」


 魔王さんやアスタレスさんは、たしかに魔族で俺たちの大切な友人だが、農場住まいではないため外れたとご理解ください。


「ベレナ先生が、魔族最強……!?」


 説明を聞いて学生たちは、納得する顔納得いかない顔半々だった。


「……ということはベレナ先生のあとには最強の人族や、最強の人魚族が出てくると?」

「あくまで農場の枠内のね」


 この農場の強さレベルを知りたい若者たちにはもってこいの顔触れだと思うけど?


「あの……、五人のうち三人がそうなら、残る二人は……!?」

「大かた察しはついてるんじゃないの?」


 俺の含みたっぷりの物言いに、学生たちがお通夜みたいな雰囲気になった。


「さ、質問がなければ早速始めるよー」

「ちょっと! ちょっと待ってください!!」


 俺が試合開始の合図を発しようとするのを留めて、学生たち密集する。

 作戦会議か。


「皆……、どう思う? 行けると思う?」

「先生やヴィール様ならどんなに足掻いても勝てるわけないけど、ベレナさんだろ?」

「たしかに一対一なら勝てないだろうけど、こっちは何十人でやるわけだから数の暴力で押し切れない?」

「オレもそう思う。さすがに勝てるだろう何十対一なら」

「さすがにアタシらのこと舐め過ぎだよねー?」


 真剣に話し合っておる。


「そもそもベレナ先生って、どれくらい強いの? 教えて魔族組?」

「かつて四天王だったアスタレス魔王妃の副官だったから、そりゃ強いだろうけど……!?」

「評判から言えば、アスタレス様のあとに四天王になられたエーシュマ様や、『魔犬』バティ様の方が派手だけど」

「なんか地味な印象あるよねベレナ様……」


 おい、もういいか?

 ベレナさんも待ちくたびれておるぞ?


「よし! 行きます大丈夫です、やれます!」

「我々もやる時はやれると聖者様にお見せします!」


 よし、その意気だ。


 それでは留学生vs農場代表五闘士、第一戦。

 ベレナ戦。


 開始!


「右手から獄炎霊破斬……」


 先に動いたのはベレナだった。


「……左手から青雷極天光を、交互に十七連射」

「「「「「ぎゃああああああああッ!?」」」」」


 ベレナの右手左手から機関銃のように放たれる爆炎と雷光。

 若き学生たちは一方的に吹き飛ばされて終わった。


「勝者、ベレナー」

「ちょっと待ってーッ!?」


 やられた学生たちの中で、比較的ダメージの少ない子が叫んだ。


「何ですか今の、何なんですか今の!? 知ってますよオレ、獄炎霊破斬も青雷極天光も四天王クラスが奥の手として使う最強魔法じゃないですか! なんでそれをポンポン連発できるんですか!?」


 小パンチみたいな連打テンポのよさだったよね。

 そこのところどうなのですかベレナさん?


「必要な魔力をしっかり溜め、詠唱を省略し、精霊とのパスをしっかり繋げれば不可能ではありません」

「不可能ですよ! それらの前提が不可能ですよ!?」


 ベレナがやってのけた超絶魔法運用に皆、常識を破壊される気分なようだ。


「おあー、やってるやってるー」


 すると外野から、農場に住むもう一人の魔族娘バティがやってきた。

 裁縫作業の休憩がてらかな?


「物凄い音がしたんで来てみたらやっぱりですねー。ベレナは本当こっちに来てから強くなりましたねー」


 その言い方。


「最初から、こんなに強くはなかったと?」

「当然ですよ。最初に出会った時ここまでできてたらオークボさんたちに一方的に負けたりしなかったでしょう?」


 アスタレスさんに付き従って攻め込んできた時ね。

 言われてみればたしかに。


「ベレナは、自分の存在理由を求めて右往左往してた時期がありましたから。その時に先生に学んで滅茶苦茶魔法のレベルを上げましたからねー」

『ベレナは、ワシが教えた中でもとりわけ熱心な生徒でしたぞ』


 観戦席の先生がお褒めの言葉を。


「私なんか針仕事にのめり込んで戦闘訓練疎かでしたから、今やベレナの方が圧倒的に強いですわー。もしかしたら現役の四天王より強いかもですねベレナ」

「それはないでしょう、ベルフェガミリア様がいるから」

「さすがにねー」


 などと言い合って朗らかに笑うかつての相棒同士。

 それをボロボロになった生徒たちは雲の上の会話に感じたことだろう。


「農場で生活して四天王級の実力を手に入れたなんて……!?」

「そんな……」


 数十人で袋叩きにしたら勝てると思っていた学生たち、格の違いを見せつけられる。


 そこへベレナ、指導者然とした口調で言う。


「皆さん、私はかつて、この土地で自分を見失いかけました。必死に自分を探し、できることは全部やってたら力を身に着けていました……」


 自分探しも捨てたもんじゃないな。


「皆さんも、この土地で自分が何者になれるかよく考えてみてください。今日の経験もちゃんと糧になるはずです。先生の下で習えば、皆さんもすぐ私ぐらいの魔法使いになれますからね!」

「いや無理だと思うよ?」


 若者たちの前でなんか教育者っぽく振る舞って見せるベレナは、まだまだ迷走が続いている気がした。


「さて……」


 これで第一試合ベレナ戦は、学生たちの惨敗という結果で終わった。


「では次二回戦ー」

「「「「ちょっと待ってえええええッ!?」」」」


 学生たちから悲痛な叫び。


「もう行くんですか!? 次行くんですか!? こんな完膚なきまでに負けたのに!?」

「勝っても負けても五回戦うって言ったでしょう? まだ一回戦が終わったばかりだよ?」

「そう言われましても! オレたちベレナさんの情け容赦ない攻撃によって全員ズタボロなんですけど! とても戦闘続行不可能なんですけど!?」


 情けないことを言うなあ。


「でも大丈夫だ。そのために先生に来てもらったのではないか」

『では行くぞお』


 先生が杖を振ると、緑色の安らかな光の粒子が無数に散る。

 その光は雪のように舞い散りながら落ちていき、大ダメージを負った学生たちの体に付着する。

 緑光が弾けると同時に、体の傷も消えていき健康な状態へと戻っていく。


「先生の回復魔法なら死んでも甦る。皆、気兼ねなく玉砕するように」

「鬼かッ!?」


 準備が整ったところで今度こそ二回戦目と行くか。


「さっきも説明した通り、対戦者の選抜基準は、各種族の農場最強というコンセプトだ。次の相手は、農場の最強人族」

「農場で一番強い人族……!?」


 前口上に反応して学生たちの緊張感も上がっていく。

 農場最強の人族とは誰なのだろうか、と。


「それでは登場してください!」


 元人間国の王女レタスレート……!!

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