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292 究極の試練・実家挨拶

 楽園島と呼ばれる島には、美しい自然だけでなく建物もあった。

 気品ある様式の、大きな屋敷がいくつも……。


「他国の使者を迎える迎賓館や、滞在用の邸宅だな」


 一緒に歩きながらアロワナ王子が説明してくれる。


「侮られてはいけないため、これらの屋敷も一級のものを用意させた。大陸からドワーフの職人を呼んでな。すべて彼らが建てたものだ」

「ほおおお……!」


 歩いていくうちに、一番奥の建物に着いた。

 島にある中で一番大きく豪華な建物だった。


「王族の滞在屋敷だ」


 その家の前に男女が一人ずつ、計二人並んで立っていた。

 それなりに歳の行った、熟年夫婦といった感じだった。


 まさかあれが……!?


「パパ! ママ!」


 ジュニアを抱くプラティが言った。

 やはりあの夫婦が、人魚国を治める人魚王夫妻。


 プラティはジュニアを抱いたまま熟年夫婦の、奥さんの方の腕の中へと入る。


「あらあらプラティちゃん? アナタもお母さんになったというのに甘えん坊ねえ?」


 と熟年夫人は言った。


「我らの母、人魚王妃シーラだ」


 アロワナ王子が説明してくれた。


 アロワナ王子とプラティのお母さんだけあって、けっこうなお歳のはずだが、そうとは思えないほど若々しく美しい。

 せいぜい二十代としか思えず、プラティと並ぶと母娘どころか仲のいい姉妹のようだ。


 しかしそれでも年齢相応の気品は漂っていて、プラティよりもお淑やかなお姫様であるかのようだった。


 そしてもう一方……。


「もっす!」


 あちらの男の方は、プラティたちのお父さん人魚王で間違いないよな?

 外見気配共に年齢に相応しい、筋骨逞しい王者の風格。


「人魚王ナーガスだ……!」


 そう言ってアロワナ王子、父親の下へ進み出る。


「父上、不肖アロワナ、修行の旅より帰ってまいりました」

「もっす!」


 バゴンッ! と……。

 お父さん人魚王が、アロワナ王子を殴った!?


 なしてッ!?


「ぬうううううううぅんッ!!」


 しかしアロワナ王子、ハンマーを叩きつけてくるような父親の鉄拳を、真正面から受け止める!?

 荒ましい衝撃。足元の地面に亀裂が入るも、王子自身は一歩たりとも後退しない!?


「おお……ッ!?」

「ナーガス陛下のオルカパンチを受け止めきるとは……!?」

「アロワナ王子、修行の旅で本当に成長なされた……!?」


 と周囲にいる兵士やら執事やらメイドやら驚きどよめいている。


「もっす……!?」

「我が成長、おたしかめいただいただろうか? ではこちらからも……!!」


 バゴゴンッ! と……。


 今度はアロワナ王子が父親の

を殴り返す!?

 固く握った拳が、人魚王の胸板にヒット!


「もすううううううッ!?」


 凄まじい衝撃が、空気の圧となって四方八方に飛ぶ。

 パンチの威力に耐えきれなかったのか、人魚王は一歩、二歩よろめき後退した。


「……初めて、私の拳で父上を動かすことができましたな」

「もっす!!」


 父子は堅く抱き合うのだった。

 再会の喜びを噛みしめ合うように。


 ……。

 ところで何であのお父さん、さっきから「もっす」しか言わないの!?


「…………」


 俺や、それ以外の同行者全員が、あまりに豪快な展開に呆然としていると……。


 ドカン、と。


 さらに豪快な展開が発生した。


 なんとプラティが、父と兄であるナーガス王アロワナ王子に向かって爆炎魔法薬を投げつけたのだ。


「だから煩くしないで! ジュニアが起きちゃうでしょう!!」


 だからアナタの起こす爆発の方が轟音なんですが。


「あらあら、プラティちゃんもすっかりお母さんね。何よりも我が子のことを気にするなんて……!」

「ママ見て見て、これがアタシの赤ちゃんよ! ママにとっては初孫でしょう? 輪を掛けて可愛いでしょう?」

「アラ、もうアタシもお祖母ちゃんってわけ? 困るわあ、まだまだ現役でいたいのに」

「現役って?」

「恋の現役よ。まだまだ陛下の子どもを生み殖やしたいわあ」


 …………!?

 濃いぃ。

 人魚王家の一家濃いぃ。


 プラティを嫁に貰った俺も、今やその一員なんだけど。

 まともについて行ける自信がない……!


「あっ、そうだ!」


 プラティが弾けるようにこっちに帰ってきた。


「パパ! ママ! 紹介するわ、この人がアタシの旦那様よ!!」


 ついにこっちに紹介が来たあああああああッ!?


「あらあら」

「もっすもっす」


 ついに来るべき時が来た。

 ご両親への挨拶という、一世一代(そりゃ一生に何回もあったらダメだが)のイベントが始まる!


    *    *    *


「申し訳ありませんでした」


 まず土下座から始めた。


「娘さんとの結婚を許可なく進めてしまい、あまつさえ挨拶がこんなにも遅れて申し訳ありませんでした」

「旦那様、別にそこまで全力で謝らなくてもいいのに……!」


 いや謝る。

 謝りすぎて損することはない。


 既に場所は屋敷の内へと移り変わり、人魚王一家は揃って長いソファに座っていた。


「いいんですのよ、ウチの娘が押しかけてきたという事情は聞いておりますもの。むしろこんなジャジャ馬を貰ってくださって本当に感謝しますわ」

「もっす!」

「あの当時は、魔族や人族から無茶な要求があって複雑な状況でしたからドタバタするのは仕方ありません。結婚の申し出自体は有り難いのですが、他国の王室に嫁がせるのは娘が大変そうで……」

「もっす!」


 王妃様が話しているのは、プラティが国を出るきっかけの騒動のこと。

 プラティの英才を聞きつけて魔国人間国の双方から嫁取りを望まれたと、俺も聞き及んでいる。


「もっす!」

「娘には幸せな結婚をしてほしいと願っておりましたから、あの子がみずから選んだアナタの下に嫁いだということは私たちにとっても幸せなこと」

「もっす!」

「幸いプラティのことを大事にしてくださっているのは、色々な方を通じて伝わってきますし、こうして孫の顔まで見せてくださったのです。これ以上のことを望んでは海神様のバチが当たりますわ」

「もっす!」

「ふつつかな娘ではありますけども……」

「もっす!」

「どうか末永く可愛がってあげてください……」

「もっす!」

「……ましね」

「もっす!」


 もっすもっす煩え。


 しかしまあ、ご両親への挨拶は円滑に進んだようで一安心した。


「さあ、挨拶も済んだところで、本格的な歓迎をいたしましょう。プラティちゃんの旦那様には国を挙げて歓待いたしたいと思っておりますので、どうかこのまま人魚国の本国へとお越しくださいな」

「もっす!」


 人魚国本国?


 たしか現在地のここは、他国からの使者を対応するための迎賓館。

 人魚たちが住む人魚国の本国は、また別にあるという。


「凄いわ旦那様!」


 プラティが嬉しそうにはしゃぐ。


「人魚族以外で本国に足を踏み入れた者ってまだいないのよ! 旦那様が歴史上初めてになるんじゃないかしら!?」

「えー? おれたちも入れてくれるんだよな?」


 ヴィールが不安半分不満半分に言うと……。


「もちろんですわ。娘と婿さんのお友だちも大事なお客人。ともに本国で歓迎させていただきます」

「やったー!」


 喜ぶヴィール。


 そして俺たちは海の底、人魚国の首都へと進むことになった。

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