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290 誕生と帰還

 はい、俺です。


 生まれました。

 ついに。


 俺の子が、プラティのお腹から生まれました。


「わーい!! やったー! やったー! わーいわーい! どっせーい! うおおおおおおッ!!」


 喜びのあまり、農場を三周するぐらい駆け回って、最終的には心配したオークボたちに取り押さえられた。


 俺の子であった。

 男の子だ。


 プラティは本当によく頑張ってくれた。

 彼女は母親になり、俺は父親になった。


 自分が新たなステージに立ったと言うことを実感する。

 そして我が子が愛おしい。


 とにかく誕生を祝うのもそこそこに、新たに生まれた子に名前を付けてやらねば。


「うぅむ……!」


 色々考えた結果。


「聖者キダンJr」


 かなり安直な名前になった。


 まあ俺自身この名前あんまり使ってないし、そのままこの子に上げてもいいかなって思ったのだ。


 当面はジュニアと呼ばれることになるだろうが。

 いつか、その日が来たら彼こそが聖者キダンとなるのだ。



「我が君……! おめでとうございます!」

「本当におめでとうございます……!」


 オークボやゴブ吉も涙ながらに駆け寄ってくれた。


「我ら、身を尽くして御曹子の盾となり産着となってお守りいたしましょう!」

「ありがとう、ありがとう……!」


 こうして共に息子の誕生を祝ってくれることが何より嬉しかった。


 それ以前に大量流入した若手留学生たちに、我が子ジュニアの誕生も加わって農場がフレッシュになった気がする。


 平均年齢が下がったとも言うべきだが。


 そんなお祝いごとに沸き返る我が農場に、さらなるよい出来事が舞い込んできた。


 アロワナ王子が修行の旅を終えて帰還したのだ。


    *    *    *


「あー、疲れた」


 パッファの転移魔法によって、瞬時に農場へと帰還するアロワナ王子。


 どれぐらいぶりのことだろう?

 少なくとも俺から見たら一年は会ってなかったと思う。


 一年かけて諸国漫遊してきたアロワナ王子は、たしかに総身からたくましくなっていた。

 顔つきも、放つ覇気も、旅立つ前とは段違いに違う。


「お帰りなさいアロワナ王子……!」

「聖者殿、ご無沙汰しておりました……!」


 力強く握手を結ぶ。

 そこから伝わってくる力の強さですら、王子の成長が察せられた。


 他の旅のメンバーたちも。


 旅に付き添わせたオークのハッカイは、久々に再会したモンスター仲間に囲まれていた。

 ……何だろう?

 帰還したハッカイは他のオークと比べてなんか印象が変わったような……?

 え? 彼も変異した?

 フラミネスオーク?

 何それ?


 一方、前にも一度農場に来たことがあるソンゴクフォンも、同族のホルコスフォンとの再会を果たしていた。

 そして火花を散らしていた。


「旅も終わったしぃー、テメェーとナシつけんのもいータイミングッつーかー?」

「よろしいでしょう。今日こそアナタに納豆の素晴らしさを刻みつけてあげます……!」


 なんで対決ムードなの?


 さらにあと一人……。

 何だかやけにドッシリとした印象の紳士がおられる。


 あの人は初めて見るなあ。

 何者?


「そうだ……! 聖者殿に紹介しておこう……!」


 アロワナ王子も気づいて、俺と紳士を引き合わせてくれる。


「旅の途中で仲間になったアードヘッグ殿だ」

「ほいー?」

「ドラゴンだ」

「ほいッ!?」


 ビックリして舌噛みそうになった。


 ドラゴン!?

 またドラゴンが現れたですか!?


 アードヘッグさんとやらは、俺のことをじっと見詰めて……。


「あの……、何か……?」

「ダメだ、わからん」


 本当に何なんだよ?


「アロワナ殿! この御仁は英雄か王かわからない! おれの目をもってしても! そのどちらでもないような気もするし、あるような気もする! 一体何なのだ!?」

「ふふふ、それが聖者殿の魅力なのだ」


 本当一体何なんですか?


 俺が困惑しているうちにアードヘッグさんは、ドラゴンらしい移り気の忙しさであっちへフラフラ行き……。


「おお! ヴィール姉上ではないですか! こちらにいらっしゃると伺っていましたが! 本当にお会いできるとは!!」

「ん? 誰だお前?」

「お忘れですか!? アナタの弟竜、グリンツドラゴンのアードヘッグです!」

「……? ……あー、思い出した! お前ダルパーか!!」

「違います! アードヘッグです!」

「そうかすまん! 今度こそ思い出したぞ、シードゥルだな!?」

「アードヘッグです!!」


 ヒトの顔を覚えないヴィールであった。


 あと最後のメンバーとしてパッファがいるが、彼女はかねてから農場と旅先を行き来しているので久しぶりという気もしないはずなのに……。


 ……なんだろう?

 ……彼女が一番変わった気がする?


 旅を終えて帰ってきたパッファは、最初の頃の尖ったナイフのようなアウトロー感が随分消え去って、穏やかな印象になっていた。


 それどころかむしろ大人びた魅力に包まれて見た目は同じなのに別人かと疑ってしまいそうだ。


「……あの、これは……?」


 パッファのあまりの豹変ぶりに戸惑う俺は、アロワナ王子に縋らざるをえなかった。

 一体何があったんです?


「うむ、実はな……!」


 アロワナ王子が照れた口調で言った。


「結婚することにしたのだ」

「ああ、なんだ。おめでとうございます」

「驚きが薄いな!?」


 いや、だって。

 アロワナ王子とパッファが結ばれるのは予定通りすぎて驚愕の要素皆無ですから。


 おめでとうと祝う気持ちは大きいけれども。


「ああ、それでパッファは魅力が段違いに上がっているのか……」


 あの匂い立つようなムンムンの色気は、人妻の色香だったのか。

 まだ婚約段階だろうに気の早いヤツめ。


 アロワナ王子が、依然照れた口調で続ける。


「一緒に旅を続けていくうちに、身を固めようという気になってな。やはりパッファほど、私をよく支えてくれる女性もいないと確信できたのだ」

「はいはい」

「人魚国に戻ったらその足で父と母の下へ向かい、結婚の許可を取ろうと思う」


 大変不思議なことだが。

 自分自身結婚して子宝に恵まれリア充に極みに達したとしても、まだ他のリア充が憎いものだ。


 とにかく慶事が立て続けに起こるものよ。


 俺とプラティとの間に子が生まれ、アロワナ王子とパッファが結婚。

 しばらくお祭り騒ぎが途切れそうにないな。


「これはいい機会かもしれないわね」

「おや、プラティ」


 ジュニアを抱えて、今や母となったプラティが現れた。

 ジュニアは今お昼寝中か? スヤスヤと寝顔が可愛いなあ。


「アタシも一回パパとママに会いたいと思っていたところなのよ。ジュニアの顔を見せに」

「おお、それはいいな!」


 人魚国の王様も、孫の顔をさぞや見たいことだろう。


「兄さんが人魚国に戻るなら、一緒に里帰りするのもいいタイミングだと思うのよ。しばらく留守にしていた兄妹そろって訪ねた方が、きっとパパママも喜んでくれるでしょう?」


 それは大いに賛成だが。

 俺はその間、農場でプラティとジュニアの帰りを待っているの?

 寂しすぎて死にそうなんだが?


「もちろん、付いて来てくれるでしょう?」

「え?」

「アナタも一緒に、人魚国に」

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