表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
291/1423

289 最終決戦 陸遊記ファイナル

 オークのハッカイです。


 アロワナ王子の修行にお付き合いして、様々な場所を旅して回ってきました。


 今思い返しても、鮮やかに蘇ってくる……。

 ……ろくでもない思い出の数々。


 大体死にかけるからなあ。


 そんな私たちの旅も、そろそろ大詰めを迎えてきました。

 我々は最終ステージに立っています。


 ここを突破すれば、晴れて修行の旅も終わり。

 胸を張って故郷に帰るとアロワナ王子からの宣言を頂いております。


 そうして我々が挑む。

 修行の旅のファイナルステージ。


 それは……。


 皇帝竜ガイザードラゴンとの一戦です。


    *    *    *


 私たちは今ガイザードラゴンの住み処、龍帝城へ来ております。


 人類の住む大陸から遠く離れた孤島に存在する竜の城。

 周辺の海域は危険なほど渦巻いていて、人魚も近づかないと言います。


 そんな絶界に住むガイザードラゴンは、最強種族と呼ばれる竜の頂点に立つ、竜の王。


 最強の中の最強ということです。


 これまでも何度か話の中に出てきて、大きく不気味な存在感を出していましたが、ついに我々の目前に現れたのでした。


 そして戦いになりました。


『うおおおおおおおおおおおッ!!』


 まず当たったのは、同じドラゴンであるアードヘッグ様でした。


 ドラゴンの姿となって、父親でもあるガイザードラゴンにタックルをかまします。


『許さぬ! 許さぬぞ! これまで我々に語っていたのはすべてウソだったのだなあああ!!』


 ご立腹です!!


『後継者を定めると言いながら! その実目的は子から力を収奪し、みずからが頂点に居座り続けるための姦計だったとは! 見損なったぞ! 父上はもはや王でも英雄でもない!!』


 皇帝竜ガイザードラゴンは、老いて衰える自分を補うために子ドラゴンからパワーを吸収していたのです。

 後継者選びをするというのは方便で、より安易に力を奪い取る呪いをかけるための下地だったのです。


 その真実を知ったアードヘッグ様は怒り心頭。


『私は! アナタなどに力と知恵を奪い取られるわけにはいかぬ! 全力で抵抗させてもらうぞ!!』

『愚かなり我が子よ。グリンツドラゴンごときが、この竜の皇帝ガイザードラゴンに敵うと思うてか?』


 敵であるガイザードラゴンは、今まで見てきたどんなドラゴンよりも巨大で、禍々しい姿でした。

 特に翼が巨大で、広げると本体の十倍の面積は優にありそうでした。


『竜の王は世界の王。すべて我が思いのままになるのだ。お前たち子竜どもも、我が糧となれば本望であろう。大人しく智と力を捧げよ!』


 ガイザードラゴンから不気味な輝きが発せられて、アードヘッグ様に向かっていきます。

 光がアードヘッグ様を包もうとした矢先、逆に弾かれ霧散しました。


『何ッ!?』

『対抗呪詛は施してある! 下心を見透かされた約束など何の意味も伴わぬ!!』


 そのままアードヘッグ様は、父竜目掛けて攻撃を放ちました。


『くらえ必殺! 「灰色のブレス」!!』


 アードヘッグ様は、口から大量の火山灰をガイザードラゴンに吹き付けました。

 火山灰は極小のガラス片で、触れた者に微細な傷を何十万と刻みつけます。

 しかも極小だから呼吸と共に体内に入り、内側からも傷つける。


『今だ!! 父上は怯んだ! 一斉攻撃の時!!』

「あいさー」


 次に飛び出すのはソンゴクフォン。

 勿論皆いますよ。もはや大事な仲間であるアードヘッグ様をレッサードラゴンになどしてなるものですか!


「いっくよー、この旅で集めたマナドライブを一斉励起!!」


 ヘルメス神が、ソンゴクフォンの成長のために各地にちりばめたパワーアップアイテムは、既に旅の果てに回収済みでした。


 それらを全部一斉に発動させることで、ソンゴクフォンは隠された最強フォームに変身します。


 ソンゴクフォンは天使ですが、最新Verに調整された際ゴテゴテした翼は取り外されました。日常生活に支障が出ると言って。

 しかし最強フォームとなった今、再びその背に大きな翼が広がります。


「ファイナル・エンジェル・アターック」


 広がった翼は、本体であるソンゴクフォンを包み込むように渦巻きながら、錐のように鋭くなって先端がガイザードラゴン目掛けて走ります。


『ぐああああああッ!?』


 錐は見事にガイザードラゴンに突き刺さり、そのまま貫通して向こう側へと走り抜きました。

 さすが我らパーティのエース。

 破壊力は抜群です。


『舐めるなあ……! 竜の王者たるおれが、この程度の傷で絶命するものか……!?』


 ガイザードラゴン。

 体に穴が開いても死なないとは。


 ならばもうひと押し。

 今度は私の番です。


 このハッカイも、皆さんの旅の仲間。

 この旅の中でそれなりに成長してきました。

 オークボリーダーや他のオークの仲間たちと違う進化を踏み、フラミネスオークとなった私の強さを発揮します。


 セイントオーク拳!


 聖属性のオーク攻撃が、ガイザードラゴンに多段ヒット!


『ぐのおおおおおッ!? 小癪なあああああ!?』


 やっぱり先のお二人と比べて効き目が薄いなあ。

 上手く属性が噛み合えば上級精霊すら一撃粉砕させられるはずの攻撃なんですが。


 いや。

 やはり最後の花は、あの方たちに持ってもらうことにしましょう。


 お願いいたします!


「うむ!」

「いくよ旦那様!!」


 アロワナ王子とパッファ様が並び立ちます。


 今こそ、この最強竜との戦いと、またこの旅自体への幕引きとなる最後の一撃を放つ時。


「パッファ……、共に行くぞ……!」

「アナタとならばどこへでも……!」


 二人は手を取り合い、その握り合わせた手をガイザードラゴンへ向けます。


 標的は、度重なる攻撃のダメージで思うように動けません。

 今が絶好のチャンスです。


 アロワナ王子は、この旅の途上で海神ポセイドスからの祝福を賜りました。

 そしてパッファ様も元より海神妃メドゥーサからの祝福を受けています。

 この夫婦神の祝福を揃えた男女が愛し合うことで、神の祝福は何倍にも効果を増幅しあうのです。


「この一撃こそ……、修行の旅の集大成……!」

「邪悪なる竜の王よ、愛の力の前に滅び去れ!!」


 海と愛の力が合わさり高まった、最後の一撃。


「「ラブラブ海神破ッ!!」」


 何処からともなく現れた海流が、凄まじい勢いで走り、ガイザードラゴンの巨体に命中しました。

 元々大きな竜の全身を飲み込んでしまうほどのさらに大きな海流です。


『ぐおおおおおおおおッ!? バカなああああッ!? 竜の王であるおれが、世界の頂点に立つ最強者が、人類ごときにいいいいいいッ!?』


 海流に飲み込まれ、沈みながらガイザードラゴンはそれでももがきます。

 しかし、どんどん疲弊して力を失っていきます。


『矮小な虫けらに過ぎない人類があああああッ!? 我が食料に過ぎない子竜どもがああああッ!? 何故こんな者たちに我が負けるのだあああああああッ!?』

『父上、アナタの時代は去ったのです』


 敵に一番近しい関係者であるアードヘッグ様が言いました。


『それを受け入れず、時代の頂点に居座り続け、あとから来る者を弾き返し踏みにじりすらする。それがアナタの罪なのです。罪を犯して裁かれない生者はいないのです』

『黙れえええええッ! おれの複製品の分際でええええッ!? い、いい気になるなよ……! 老いたおれなど倒しても、結局お前は皇帝竜にはなれない。アレキサンダーがいる限りいいいッ!』

『おれは皇帝竜になる気はない。ただ英雄たる者、王たる者を見守り続けるだけでいい』

『おげえええええええッ!?』


 なんか『我が滅びても第二第三の……』的な捨て台詞を残したあと、ガイザードラゴンは海流の中に沈んで消えていきました。


 これで決着がつきました。


「…………」


 すべてが終わりました。

 修行の旅の集大成として、最強ドラゴンの討伐は相応しい締めとなったでしょう。


「では、帰るか」

「おつかれー」「あー、大変だった」「姐さん、おっぱい揉んでいいー?」


 ここにアロワナ王子の武者修行。

 陸遊記。


 ひとまず一巻の終わりとあいなりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
bgb65790fgjc6lgv16t64n2s96rv_elf_1d0_1xo_1lufi.jpg.580.jpg
書籍版19巻、8/25発売予定!

g7ct8cpb8s6tfpdz4r6jff2ujd4_bds_1k6_n5_1
↑コミカライズ版こちらから読めます!
― 新着の感想 ―
[気になる点] Gガン○ム?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ