284 破壊の天使の噂
だんだん巨大キノコと意気投合していく。
いや、固有名称はマタンGOだっけ?
「つまりお前は、一度融合した菌糸なら何でも再現できるんだな?」
『しかも超スピードです! お任せください!』
試しに俺は『至高の担い手』で色んな種類のキノコが生えてくるように原木へ念じてみた。
『ほおおおおおッ! 来ましたよおおおおおッ!!』
そして実際にキノコが生える前からマタンGOは感じ取ったらしい。
原木の内部に広がる様々な菌糸の存在を。
ヤツはそれを取り込んで記憶し……。
色々原木から生やしてきた。
ブナシメジ、エリンギ、マイタケ、ナメコ、ムキタケ、エノキダケ。マツタケ。
……。
え!?
マツタケまで!?
色々ジャンジャン生えてくる。
「おおおおおおッ!? 採取しても採取しても次から次へと生えてくるぞおおおおおッ!? 無限キノコ収穫じゃああああああッ!!」
『どんどんキノコを生み出しますぞおおおおおおおおおッ!!』
キノコ祭り開催。
よく考えたらこんなに多種多様でたくさんのキノコ一度に食いきれねえよ。
「どうするかなこんな大量に……?」
シイタケは干しとけばいいとして。
他の種類のキノコは今日中に食い切らなきゃか?
「……皆に食わせるか」
順当な結論に達した。
* * *
「キノコ料理って何があるかな……?」
案外キノコを食材にして『これだ!』ってなる調理法がないよな。
キノコなくして完成しない、っていうことはないけど、何かの料理に加えたら絶対嬉しい。
それがキノコ。
無難なところで汁物か天ぷらにでもするか。
汁は何ぶち込んでも様になるし、天ぷらこそ何揚げても美味しくなる料理法さ。
あとは炒めたり鍋にしたり。
……キノコオンリーの炒め物とか鍋とかある意味豪快だな。
「参」
「上」
案の定、調理してるだけでプラティとヴィールがやって来た。
「旦那様、ごはん時でないのに料理してる?」
「知っているぞ! こういう時はご主人様が新しい食い物を創り出す時だ! 新たな感動に出会える時だ!!」
俺もキミたちが呼ばんでも現れることは知っている。
既に完成品が並べてあるんで試食してみなさい。
マイタケやブナシメジの天ぷらがあるぞ。
「えー? また天ぷらか? 目新しさがないぞ?」
「こないだ作ったばっかりなのにねえ」
と言いつつも天ぷら自体は美味しいとわかっている連中なので、割と迷わず口に入れる。
「なんだこの歯応えはああああああッ!?」
「肉!? 野菜!? そのどちらでもない食感よ!? シャクシャクして……、一体何なの!?」
コイツらも大概リアクションいいよなあ。
もはや食レポ任せていいレベル。
そしてコイツらの賑やかしに誘われてオークボたち他の連中も集まってくるパターン。
「お、何です何です?」
「奥方様たちの騒ぐところ、聖者様の新作料理あり」
「汁物、天ぷら、炒め物。見たことのあるような料理ばかりですが……!」
「新しいのは具材の方か」
もういつものことなので皆、特に断りなく並んでいる料理を抓んでいく。
キノコの天ぷらとか。ラーメンの麺ぐらいの割合でキノコぶち込んだ味噌汁とか。色とりどり数種類キノコのバターソテーとか、キノコ鍋とか。
「ほう! これは新鮮な食感」
「食材の繊維に沿って噛み千切れていく感触が、何とも独特!」
「スープやソースが染み込んでジューシー!!」
「天ぷらの衣のサクサク感ともマッチ!」
コイツらも食レポ上手くなったなー。
「我が君! このまったく新しい食材は何なのですか!?」
「キノコだよ」
……。
「…………」
「……………………!」
「……ッ?」
「………………………………ッッ!?」
え?
何この唐突な沈黙。
「き、キノコ……?」
「キノコと言えば……!?」
どうしたの? 集ったみんな顔真っ青にして?
「うわーーーッッ!? 死ぬうううううッ!?」
「キノコ食べちゃった! キノコ食べちゃったああああッ!?」
「毒で死ぬううううううッ!?」
そうか!
我が農場の皆には、外で自生している天然キノコをうっかり食べて毒に当たらないように厳重注意してるんだった。
そんな彼らにとって、キノコは皆悉くひっくるめて猛毒!
それを知らずに食べたので「もう死ぬ!」となっている。
「聖者様はどうして大量毒殺を企ててえええ……!?」
企ててねえよ。
「まさか、農場を強制的に終わらせるため毒殺を……!?」
しねえよ、そんな最悪な打ち切り!
農場は永遠に続いていくよ!
キノコには毒のあるものとないものがあって、調理したのは栽培した安全確実な無毒キノコなので大丈夫、ということを説明するのに大変苦労した。
料理そのものより疲れた。
「なるほどこのキノコは安全なキノコなのですな?」
「ではお代わり」
そして理解した途端、何の憂いもなくキノコを食べ始めた。
少しは不安を引きずれよ。
『ぬっふっふっふ……! 聖者様……!』
「お前はマタンGO!?」
原木から生えて移動できない巨大キノコが何故台所に。
『私の進化を侮ってはいけません』
「足が生えとる!?」
キノコの石突の部分から!?
それで歩いてきたのか!?
『私が充分役に立つことを証明できたようですな……!?』
「ああ、こうなっては認めざるをえない……! お前は最高だ!」
互いを認め合うようにハイタッチ!
ハイタッチ?
腕まで生えたのかキノコ!?
こうして我が農場は巨大キノコ、マタンGOのおかげで、いついかなる時もいかなる種類の食用キノコに困ることはなくなりましたとさ。
* * *
「しかし……」
ふと疑問に思った。
「どうしてお前はそこまで俺の役に立とうとするんだ?」
ちょっと尋常じゃない献身に思えるんだが。
別に恩返しとかじゃないよな?
『アナタに認めてもらいたかったからです……!』
認めてもらってどうするん?
『聖者様に認めてもらい、その力をもって倒したい相手がいるのです。森の頂点を争う、積年の宿敵を……』
宿敵?
なんか物騒な話になってきたな?
「誰かと戦ってるの?」
『はい、ヤツとは決着をつけねばなりません。戦うことを宿命づけられているのです。私がキノコである限り、ヤツと戦わなければ己を肯定できないのです』
また随分と気負った物言いだな。
一体誰と戦っておるのだ?
『はい……、ヤツの名は……!!』
――たけのこ魔人タケノッコーン。






