212 成果
「ってなわけで売れました」
レヴィアーサの報告を受けて、我が農場は大騒ぎ。
「うそおおおおおおッッ!?」
「完売いいいいッ!?」
「しかも予想より遥かに高くうううううううッッ!!」
もっとも興奮しているのは、当然というべきか木像制作を直接手掛けたミエラル班の面々。
自分たちの作業が認められたのはさぞ嬉しいのだろう。互いに抱き合って涙まで零している。
「で、これが代金ですね。……よっこらしょ!」
「うお、凄い」
一抱え以上もある大きな袋がパンパンではないか。
中身。もしや硬貨的なもの?
「金貨ですよ」
「「「「うきゃああああああああーーーーーーッ!?」」」」
エルフたちの歓声が、もう声の域に留まっていない。
「随分高く買い取ってくれたものだねえ。一体誰がこんなにたくさんのお金を……」
「ただの酔狂な人ですよ」
レヴィアーサは多くを語らなかった。
ただ、あとになって気づいたけど多くの神像に交じって俺の像と、ノーライフキングの先生の像まで売れちゃったんだよな?
あれ本当によかったの?
先生の像ならまだ神々しさもあるだろうけど、俺の像とか完全に場違いじゃない?
あんなのまでセットで買っていただいて。
テレビ通販でよくある『今ならおまけでもう一品!』的なポジションですか?
「よくやった! よくやったぞレヴィアーサ!」
レヴィアーサの上司であるグラシャラさんもご満悦だ!
「これだけ高値の売り上げならアスタレス側にも負けないぜ! これでアタシの株も大いに上がったな!!」
満足するグラシャラさんの目の前で、レヴィアーサのことをエルフたちが胴上げしていた。
「レヴィアーサさん有能!」
「本当に有能!!」
「すべてはレヴィアーサさんに任せておけば上手く行く!」
「レヴィアーサ先生!!」
「レヴィアーサ四天王先生!!」
エルフたちのレヴィアーサを讃える勢いが半端ではない。
「…………」
それを眺めるグラシャラさん。
「……なあ、本当にアタシの株上がったのかな? 上がったのはレヴィアーサの株じゃないかな?」
「そんなことありません」
レヴィアーサが胴上げ体勢からシュタッと華麗に着地。
「この私は、今でもグラシャラ様の忠実な部下。部下の手柄は上司の手柄。これ世界の常識です」
「そうか! そうだよな! いい部下を持ってアタシは幸せだなあ!!」
上手く丸め込まれるグラシャラさんを見て「レヴィアーサ、マジ有能だな」と思った。
* * *
しかしすべてが丸く収まったわけではない。
喜び溢れるエルフたちの隣で、プンプンと頬を膨らませるエルフもいた。
「なんだよ! ミエラルのばっかり売れてさ!」
ご立腹なのはエルロン。
エルフチーム、陶器制作班の班長だ。
今回レヴィアーサが売り込みを引き受けてくれたのは、ミエラル班の木工製品と、エルロン班の陶器製品の二種。
今回売れたのは、そのうち一方だけ。もう一方のエルロン製品にはまったく手つかずで、品物は手元に残っていた。
他にもマエルガ班の革製品、ポーエル班のガラス製品がアスタレスさんルートで売れまくっていることを鑑みれば、エルロンのところ一班だけ取り残されたような感じだ。
拗ねる気持ちもわかる。
「そう慌てないで。物事には順序というものがあるのです」
レヴィアーサが宥めるようにエルロンに向かって言う。
「アナタたちの作った陶器は、とてもよくできたものです。だからこそ相応しい値段で捌く役目が私にはあります」
「有能!」
レヴィアーサさんをそのまま『有能』って呼称するのはさすがにやめませんか。
「だからこその順番です。先方は、今回の神像でガッツリ信用してくれました。『コイツの出すものに外れはない』と。その信用を使って陶器も高値で売りつけるのです!!」
「あくどいことしてないよねキミ!?」
「そこで……」
「?」
「聖者様にご相談があるのですが……」
「?」
* * *
レヴィアーサから詳しい話を聞くところによると。
現在魔国では、陶器の主な用途とされる食器類などの価値は、一律して低いらしい。
たとえば一般的な庶民の使う皿も、魔王さんのような王侯がパーティで使う皿も大して違いはないのだそうだ。
そういった傾向は魔国の生活全体に行き渡っていて。
――道具は使えればそれでいい。
という考えが支配的だという。
しかもその考え方は旧人間国においても蔓延していて、だから一般的な価値観だと言ってもいい。
そんな世の中でも女性が美しくありたいという気持ちは不滅だから服は売れたし、ポーエルのガラス細工は水晶宝石類を連想させ珍しがられた。
「だからこそエルフたちが作った陶器を売り出すにも慎重にならなければなりません」
有能なレヴィアーサさんが言う。
いつの間にか「さん」付けだ。
「最初、エルロンさんの作った陶器を見た時、その変わった見てくれに驚きました」
「変わった見てくれ?」
「ただ使えればいいはずの皿やカップが、緑や赤や黒や青、様々な色が塗られ、中には模様までついている。形は歪で歪んでいるようなものもありますが、何故か失敗作とは思えない……!」
……。
……ああ。
それはね、俺が前の世界にいた時にハマった漫画で、そういう芸術性に富んだ器を作りたいみたいな欲が湧いて……。
俺が色々注文するとエルロンも興味を持ってくれて。
色んな釉薬を試したり炉を改造したりして。
ノリと勢いでただひたすらに作りまくった……。
……変わった食器を。
「これは、売り方を工夫すれば、ただの食器としてより遥かに価値のあるものとなります。そこで聖者様にご教授いただきたい」
「何をですか有能?」
何を教授しろというんですか有能?
「これを作ろうとした時、どんな気もちだったんですか!? セールストークに使用しますんで、詳細にわたって解説してください!!」
「解説!?」
「微に入り細に穿ち!」
そういうのは作った本人のエルロンに聞くべきでは!?
大本の指示出したのは俺だってバレてる!?
そう!?
……こうして俺は、作品制作中の自分の心境を解説させられるという小っ恥ずかしい行為を強制させられた。
そして……。
* * *
翌日。
「全部売れました」
「有能!?」
レヴィアーサの快進撃は留まるところを知らない。






