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1508 ジュニアの冒険:最強の観光資源

 魔島にて、村おこしならぬ島おこし観光強化策に協力している僕ジュニア。


 興が乗って第二案まで提案しようとしているところです。


 第一案であるところの歴史紀行政策は、宣材であるところの歴史小説の書き手が定まらないところから一時保留。

 後々父さんなり母さんなり魔王さんなりアロワナおじさんなりリテセウスおにいさんなりの人脈に頼って紹介してもらろう。

 歴史小説家になろう。


「一つ目の案も画期的だというのに、ただちに二つ目の案まで出せるとは! ジュニア殿は本当に名うてのアドバイザーじゃのう!」


 アドバイザーじゃないですが。

 本当にただの通りすがりの旅人ですが。


 しかしアゼルさんの信頼度がMAX越えてるのがヒシヒシ伝わってくる。

 さっきから敬称が“殿”になっているし。

 お殿様じゃないよ。


「してして、アドバイザー・ジュニア殿の二の矢は、どんな案なのかの?」


 子どものようにキラキラした瞳で尋ねてくる当主。

 さすれば答えましょう。


 いつぞや父さんが言っていたことを思いだしたんです。

『これさえあれば観光業勝ったも同然だな』と。


「そう言うのもっと早く思い出せよ」


 急に冷静かつ辛辣にならないで。

 目まぐるしいテンションの変動は先祖と共通なのか。


「してしてしてして、その勝ったも同然なアレとは!?」


 だからテンションを乱高下さすな。


 よかろうアンサーしましょう。

 父さんが僕に教えてくれた、最強の観光資源それは……。


「温泉! だ!!」

「おんせん!」


 温泉……温泉……温泉……(エコー)。


 そう温泉とは。

 極めてざっくばらんに言うと地中から湧き出すお湯。


「それは……火を使って沸かした湯と何か違うのか?」


 違うんですね、湧くお湯と沸くお湯は。

 なんつって。


「温泉は、地下の熱で温められたお湯で、飲むためのものではありません」

「何? 水を飲む以外にどう使うと言うんじゃ?」

「全身浸かるんです」

「浸かる!?」


 ううむ、概念自体から知らない人に一から説明するって大変だな。


「要は、天然のお風呂ですね。温泉は、地下を通って地中から様々な成分を含有します。その成分が肉体に作用して、色んな症状を改善すると言われています」


 肩こりとか、腰痛とか、リウマチとか、五十肩とか、高血圧とか。

 ……まあ、僕はまだ若いからどれも該当しないけれどね!


「えぇ~ッ! ワシ最近肩こり酷いから温泉浸かりたい!」


 そしてアゼルさんはやっぱり体のあちこちガタついていた。


 アナタがそう思うように皆が温泉に入りたがるのです。


 健康。それはすべての生きとし生ける者に課せられた命題。

 そしてお湯に浸かってリラックスするという快楽。

 それた非日常の体験。


 多くの要素を備えた温泉は、まさしく観光の一大コンテンツ。


 だからこそ温泉の湧きだした土地は、それだけで観光都市としての安寧を約束されるのだ!!


「なんと!?……いやでもホント?」


 急に疑い出した。

 テンションの上げ下げがご先祖に感化されてないですか。


「アドバイザー・ジュニア殿を疑うわけではないが……。ただお湯に浸かるだけで観光地になるんなら誰も苦労しないというか……。それにお湯に触れるだけで体の不調が治るというのもどうにも……」


 なるほど。

 たしかに温泉をまったく知らない人が、その効能及び観光的価値を聞かされてもにわかに信じがたいだろう。


 それならばやることは一つ!

 百聞は一見にしかずこずこずここしたんたん!


「行ってみましょう温泉地へ」

「なんじゃとうッ!?」


 口だけでは伝わりづらいもの。

 実際に来て見て触って、体験してこそ温泉の凄まじさがわかろうというもの。

 言葉ではなく心で理解できる。


 それでは早速、アゼルさんを抱えて、とうッ!


「ぎゃああああああッッ!? 高い高い高いッ!? えッ、飛んでる!? 飛んどるんだけどワシ!? いやワシを抱えたジュニア殿が飛んでいる!?」


『究極の担い手』の能力を利用した空中飛行。

 これでもって、どこであろうと目的地までひとッ飛び。


 さあアゼルさんよ、いざ共に行かん!

 約束の地、温泉街へ!


   *   *   *


 漂流している時は方角がわからなかったので迂闊に飛べなかったが、魔島にたどり着いて位置情報を頭に叩き込めば、思い通りの場所へ行くことは容易かった。


 まず海を経由して魔国に入り、上空から魔国を横断して山奥へ……。

 そこにたどり着きし秘境。


 温泉街であった。


「ぬおおおおおおおおーッ!?」


 同行したアゼルさん、まず驚愕。

 何に驚愕したのか、人の多さにだ。


「なんだ、この人ゴミは!? 人、人、人!? 今日は祭りの日なのか!?」


 いいえド平日です。

 この温泉街は大体いつもこの程度混んでいる。


 何しろ昨今『皆が行きたい観光地ランキング』の三年連続トップに輝いたらしい。

 今や魔国からだけでなく人間国、遠くは人魚国からもやってきて温泉に浸かる。


 それほどまでに魅力的なコンテンツと言えよう温泉は。


「この大群衆が温泉とやらのために押し寄せているというのか? そんなにも温泉というのは凄いのか!?」


 そうなんですよ。

 人ごみを直に見て、温泉の集客力を実感できましたかね。


 では今度は体験をしてみましょう。温泉を。


「おおー、温泉とやらに浸かれるのか?」


 予約なしじゃ難しいかもですが、幸い僕、この地にはコネがある。

 それで何とか日帰り入浴ぐらいはさせてもらえないだろうか。


「ほほう、こんな栄えた地にまで繋がりがあるとは、さすがアドバイザー・ジュニア殿! さすアド!」


 いや僕は凄くないですよ。

 何しろ親のコネですからね。


 元々この温泉街を建てたのが、僕の父なので。ここの皆さんは僕にまで恩義を感じてくれるんです。

 父さんが、この温泉街を建てたのが十年そこら前になりますか。


「なにぃッ!? それは我が魔島が本土と交流を持ったのとほぼ同時期ではないか!? その間にこの土地はこんなに栄え、我らは観光地化に失敗し……、どこでこんな差が?」


 ホント父さんって、ただ『温泉宿建ててみたいなあ』という動機で温泉の掘削からやってのけるんだから。

 我が父ながらやることのスケールが超然しすぎて戸惑いしかない。


 それを解き明かすためにも温泉に入りましょう。


 さーて、父さんが直々に建てた温泉宿は……どこだったか?

 ここ十年で旅館もバンバン増えたしなあ。

 需要が高まり、それにこたえる形で乱立する旅館やホテル。


 その中でも父さんが建てた元祖温泉宿は、断トツの人気を誇るはずだ。

 何しろ原点にして頂点だから。


 だから一番繁盛してそうな宿に入ればいいのか。


 ちわー、僕ジュニアです。


「ハァ!? だから何アル!? ウチは忙しいアル予約がないなら帰るよろし!」


 うわぁ、違った!?

 ……よく見たらそんなに賑わってもいなかった。


 ここかな?

 今度こそトライ、僕ジュニア。

 総当たりで顔パスしようとする僕カッコ悪いな……。


「あらあら? ジュニア坊ちゃまではないですか? ようこそ温泉宿『でうす・えくす・まきぃな』へ……」


 そんな店名なの!?

 知らんかった!?


「開店当初はウチ一軒だけだったので“温泉宿”でよかったんですが、後追いで他の宿ができると見分けをつけるために名前が必要となりまして。ちなみに命名は私たちの合議で行いました」


 そ、そうなんですか……。

 ところで温泉に入りたいんですけど大丈夫です?


 予約してないんですが、日帰り入浴だけでもさせてくれませんかね?


「何を仰います。大恩ある聖者様のご子息に、湯を浴びただけで追い返すとなったら我が宿の名折れですわ。ウチでは常に最高級の部屋を非常用にキープしておりますので、今宵は是非ともそちらにお泊りください!」


 いいえ!

 さすがにそこまでやると親の威を借るとなって父さんからも母さんからもバチクソ怒られる!

 そんなバスターされるトラブル側のムーブ、ウチの親が一番イラつくヤツなので!


 僕は許される範囲と許されない範囲の境界線を慎重に見極めて、どうにかこうにか無難に親のコネを使い倒したい。


 それができる二世ムーブ!!

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― 新着の感想 ―
ジュニアさんよー なんでせっかくの温泉宿に爺さんと来てるのさ! 爺さん帰してシェミリさんと交換して! 早く!
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