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1503 ジュニアの冒険:魔島へようこそ

 鳥!

 いや島!!


 島に着いた。漂流の憂き目にあっていた僕が久方ぶりに土の上へ。


 この僕ジュニア、大地に立つ。

 それだけで感動できるものなんだな。地面の上で生活できることがどんなにありがたいことか再確認できた。


 海岸から砂浜まで上がって、そこでさすがに気が緩んで倒れ込んだ。

 砂の上に。


 ……ぺっぺっぺ!?

 口内に砂が入った!?


 なかなかしっかりと安心できないな……。

 だが、陸地に戻ってきただけでも大いなる進展だ。


 僕は帰ってこれる!


 それを信じて僕は進み続ける。いつか故郷に帰れる日を信じて。


 それで……ここはどこなんだ?

 遠目からは孤島のように見受けられたから、魔国や人間国のある大陸にはまだ戻って来れたわけではないらしい。


 ならば僕の困難はまだ続くのか。

 一先ず島を見て回るか。人が住んでいて、集落があって、どこか大きな港町への定期船なりが出ていたらサイコーだけれど。


 多くは望むまいか。


 当面はとりあえず火に当たれたらそれ以上に望むことはない。

 枯れ木を集めて、木と木をこすり合わせて摩擦で火を熾して焚火を燃やしたい。


 しかしその前に……やっぱり島を調べよう。

 人が住んでいたらそれだけでも大当たりだから、島の中心部へと向かってみよう。


 森林部へと草を掻き分け、苦労しながら進んでいく。


 ぐわッ!? 枝が顔に当たる!? 葉っぱが口に入る!? ギャー蜘蛛の巣!?


 やっとの思いで草むらを突っ切ると、道らしい平地に出た。


 道!?

 道があるということは、人が住んでいるということ!?

 じゃあここは無人島ではなく、有人島!?


 有人島という言葉はあるのかどうか知らんが……。


 やったぁあああああ! 僕は人里へとたどり着いたんだぞぉおおおお!!


「あんれまー、どうしただ、そんなに葉っぱまみれでよぉ?」


 人がいたぁああああああッッ!

 やった! 僕は帰ってきた!

 神界から人の世界へと、無事到着!!

 なんでこう神界って、いつもいつもやっとの思いで帰ることになるのか?

 いや、それが普通か……神の世界だしな……。


 それよりも、そこのオジサン!

 この島は、いずこの島でしょうか!?


 僕ちょっとした遭難者で、様々な困難の果てにここまでたどり着いたんですが!

 いい加減そろそろゴールしたい!


「そうなんッ!?……ハァ、そうなんすかぁ」


 そうなんですよ!


「まさか、海から流れ着いてきたのかぁ!? そりゃ大変だなぁ、よく命があったもんだぁ!」


 自分でもそう思います。

 ですから……あの……、どこか人がたくさんいるところに案内してくれませんか……!


「もう大丈夫だぞぉ、オッサンが安全なところに連れていってやるからよぉ! 水飲むけ? それかドライフルーツでも食うべ?」


 いえ、食事ならさっきしましたんで。

 こんなにボロボロで息も絶え絶えなのは、道なき草むらの中を突っ切ってきたからです。

 こんなちゃんとした道があるなら、見つけてそこ通ればよかった……!


「安心せい、魔島の住人は情け深いからよぉ。必ずおめぇさんを父ちゃん母ちゃんのところへ送り届けてやるからよぉ」


 ん? 魔島?

 どこかで聞いたような……?


   *   *   *


 僕はその後、偶然通りかかった親切なオジサンのリヤカーに乗せられて運ばれた。

 集落部は、ちょうど僕が流れ着いた海岸の向こう側にあり、僕は人里の反対方面に上陸したってことか。


 間が悪いというか……。


 それよりも魔島というこの島。


 その名の通り、魔族の人たちが住む島らしい。

 となるとここは魔国の一地方? と思ったが、そこが微妙なところのようで……。


「島主様! 島主様ぁ! 大事ですだ! 緊急事態ですだぁ!!」

「どうした? 山からイノシシでも降りてきたかぁ?」


 人里でもっとも大きなお屋敷にリヤカーごと担ぎ込まれる僕。

 そこで遭遇したのは、何やら異様に背のちっこいオジサンだった。


 オジサン? だよな?

 背が小さいだけで子どもじゃないよな?


「大人じゃ! 大人ぁ! なんじゃこの不敬なガキはぁ!?」


 すみません、神界から生還した気疲れで建前が上手く使えなくて……。


 僕、ジュニアです。

 世界を旅する半人前の若者です。


 そしてアナタはどなた様?


「ワシはアゼル! この魔島の統治者である! 偉いんだぞ、控えおろう!」


 偉い人だった。

 この島の主なんて、そんな重要人物に大した手続きもなく即、会えるなんて……。


 偉いのに大らかなヒトなんだな、見習わねば。


「いや、そんなに偉くねえだよ。ただ単にわしら一般ピーポーと距離が近いだけだあ」

「言い方ぁ! 違うもん! ワシは民草にも気軽に会ってあげられるほど懐が広いだけだもん!!」


 と小さいオジサンはがなり散らす。

 その振る舞いから、懐の広さはあまり感じられなかった。


 で、この魔島というのは……?

 魔都まではどれぐらいの距離があるんでしょう?


「ん? 小僧、魔都まで行きたいのか? けっこう遠いぞぉ」


 そうなんだ。

 恥ずかしながら魔島という地名、僕にはサッパリ覚えがない。


 だから魔国の首都である魔都へどうやってたどり着くか。我が故郷、農場との位置関係もまったく想像がつかない。


「なんじゃ小僧、魔島を知らぬとは勉強不足じゃのう。仕方ない、この魔島の主たるワシがレクチャーしてやらねば、他に誰がやるというかの」

「そんなことより、あったかいスープでも飲ましてやったら、どうだぁ?」


 そして魔島で一番偉いというアゼルさんから、魔島の歴史について訥々と語られるのであった。


 ……彼が言うには魔島に住む魔族は百年前、大陸の魔族から枝分かれした人々らしい。

 その当時、とあるノーライフキングが国内を荒らしまわって魔族は滅亡寸前まで追い込まれた。


 その時に一部の人々が海に出て避難したという。

 ノーライフキングの魔の手から逃れること、ただそれだけを望んで海上を彷徨った末、彼らは地図にも載っていない小さな島を発見した。


「それがここ、魔島じゃ」


 魔島の主アゼルさんは言う。


「魔島に降り立った我らが祖先は、この地を新たな故郷と定めて開拓を進めていった。開墾して畑を作り、港を開いて漁業を発展させていった。そうして今日、我らが穏やかに暮らせる魔島が出来上がったというわけじゃな」


 ほうほう、そりゃ知らなかった。


「島主様、それより彼の介抱を……!」

「そんな魔島に転機が訪れたのが、今より十年ほど前。長い間音信不通となっていた魔国本土との交流が復活した。我々は、本土の魔族はとっくに滅びておったと思っていたし、本土の者たちはそもそも我らの存在自体を予想だにしておらなんだ。まったく未知の遭遇であったよ」


 そこから様々な話し合い……時には衝突もあって、ついには互いを尊重し合った国交が成立した。

 魔島は、魔国に組み込まれることなく独立を保ったまま、友好的な付き合いができるようになったという。


 それが十年前の話。


「これも現魔王であるゼダン殿の計り知れぬ器の大きさ……それに慈愛の心あってこそ。さすがは地上統一を果たして『歴代最高の魔王』を名乗るだけのことはある!」

「まあ、魔王様の考え方次第じゃ軍隊送られて無理やり支配下に入れられる展開もあり得たからよぉ。ホントにいいタイミングで見つかったよなあ」


 と僕をここに連れてきたオジサンもシミジミ同調する。


 なるほど、魔島の歴史と現在はそうやって築き上げられたというわけだね。


 結論。

 魔王ゼダンさんは偉大。


「しかぁし! 魔王殿一人だけで平和は保たれるだろうか!? 断じて否! この魔島の主アゼルが粉骨砕身、妥協と対立を織り交ぜながら双方料率の着地点を模索し続けた結果! 魔王殿が偉大ならワシも偉大! ミートゥー!!」


 魔島の成り立ちはわかりましたが、そろそろ僕についても議題に駆けてくださいませんかね。

 ベッドに飛び込んで休みたい。

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― 新着の感想 ―
あー、アゼルさんや、何だかんだでキダンさんの手回しでそのへんいい感じに落着したでしょ?リテセウス君の5人抜きで…その聖者キダンの息子ですジュニア… そしてこの魔島、コーヒーが名産品でお陰で交易でウッ…
超竜アレキサンダーのとこにはいかないのかな?
そうか! ジュニアが行ってない場所はない!と、思ったが魔島がまだあったか! なら、まだ行ってない場所があるのか? で、思い出したのがドワーフの住む場所! エルフの住む場所は行ったがドワーフはまだのはず…
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