1500 ジュニアの冒険:いつか完成する世界に
邪神ゼウス、撃退完了!
僕は鋼鉄巨人に乗り込んだまま勝ち名乗りを上げた。
『おおおおおおおッッ! カッコいぃいいいいいいッ!!』
そんな僕に、興奮の視線を向けるクロノス神。
いや……僕自身ではなくて、この鋼鉄巨人にかな。
太古の神が、何ゆえそんなキラキラとした少年のような瞳を……!?
『だって、その姿はまさしくガン○ム! 空にそびえるくろがねの城! これに盛り上がらない男子がいようか! いやない!』
反語まで持ち出して興奮している。
そんなにも熱狂する要素が、この大スケールの人型をした、鋼鉄製の機動戦士にあるというのか。
僕は内部にいるので、何と実感が伴わない。
『設計・製作はやっぱりヘパイストスか。いい仕事をするなあ、あの我が孫神は。肩幅が広いのも要領抑えているなあ』
と巨人の外観を舐めるように眺めるクロノス神。
キラキラお目々がけたたましい。
しかしヘパイストス神がくれた何の変哲もない腕輪に、こんな隠し機能があったとは。
これほぼ、クロノス神を襲い来るゼウス神をブチのめすことにしか使えないんよな。
『それだけ父親が嫌いなんだろうヘパイストスは。気持ちはわかるがなあ、私とて父神のウラヌスのことは殺したいほど嫌いだったからなあ』
そしてクロノス神もゼウス神から戦争引き起こすほど嫌われている、と。
神の親子の因果は巡るなぁ。
僕たち人間は、この因果を引き継がないようにしないと。
『ともかく邪神に身を堕とした息子を撃退したのは、ヘパイストスの心配りと、それをこの地まで運んでくれた人の子のお陰だ。ジュニアよ、働き大儀であったぞ!』
いえいえ、そんな。
僕はなかば成り行きでこの世界に迷い込んだだけだし、ヘパイストス神の腕輪にこんな機能があったなんて予想だにしていなかった。
すべては偶然と、皆の頑張りが巻き起こした勝利ですよ。
『謙遜とは慎ましやかな人間よ。余程親からの教育がよかったと見える。その心意気を讃え、お前の活躍をこのアトランティスの創世神話として語り継ごうぞ!』
えッ?
『……その昔、世界の始まりの日に邪神現れし。そこへ異界より鋼鉄の巨人現れ、鉄拳振るいて邪神を砕き、世界を守護らん。いつか再び危機現れし時、巨人は復活し戦うであろう、世界の人々のために』
その何かのイントロみたいな語りやめませんか!?
何やら壮大なサーガが始まる!?
『それだけ、お前の功績が大きいということだ。お前は邪神からこの世界を守護ったのだから、伝説に残るぞ!』
しゅごる!?
などともごもご話し合っているうちに、何やら方々から集まってきた。
『うおおおおおッ! また現れやがったな邪神めぇええええッ!』
『オレたちが返り討ちにしてやらぁあああああッ!』
『あれッ!? いない!?』
と現れたのはどなた?
『我がティターン神族の仲間たちだ。クレイオス、ヒュペリオン、コイオス、イペアトス、メノイティオス、ポイペ、セレネ、他。世界構築のため各所に散っていたのが、邪神の気配を察知して集合してくれたのだ』
とクロノス神が解説してくれる。
『まあ肝心の邪神は、私とジュニアでとっくに撃退したんだがな。来るのがおせーんだよ、ばーか!』
『あぁああああああッッ!? せっかく作業中断して来てやったのに何だその言い草はぁあああッッ!?』
『っていうか待って!? ロボ!? 巨大ロボ!? カッコいぃいいいいいいッッ!?』
皆思い思いで賑やかなティターン神族であった。
彼らで協力して、これから世界を作り出していくんだろう。
……。
おッ?
僕が乗る鋼鉄巨人が、身震いしたと思ったら突如分解。
細かなパーツに分かれたと思ったら急速に収縮し、パーツパーツが重なり合って小さくなっていく。
ただの腕輪が鋼鉄巨人へと膨張していくのとまったく逆の過程で、今度は鋼鉄巨人が何の変哲もない腕輪へと回帰していった。
『私が込めた神力が尽きて、戦闘モードを維持できなくなったのだろう。動力源として我が力を設定しておくとは、ヘパイストスも心憎い演出をしおるわ』
そのお陰で、この腕輪が能力を発揮するのはこのアトランティスに限定されるわけだからな。
本当にヘパイストス神は、嫌いなゼウスをブッ飛ばしたいがためだけに、この腕輪を用意したんだな。
すっかりただの装身具に戻った腕輪を見て、コイツがまた起動することは今後二度とないんだろうなと思った。
発動条件が特殊すぎるし。
『ジュニアよ、異界からのマロウドよ。改めてお前の働きに礼を言おう。お前の名はこの世界に語り継がれることだろう』
やめてください。
こんな草創期に名を残したら、どんな脚色されるかわかったものじゃない。
『ここで謙遜するとは益々憂いヤツよ。どうだ、あと五年はここに留まって歓待を受けていったらどうだ? なんならこの世界の最初の王になってもいいし』
遠慮させていただきます!
僕にも、元々生まれた世界でやらなきゃいけないことも残っていますし!
迂闊にマレビトにはなれないんですよ!
これは……これ以上ここに留まっていたらなし崩し的に定住させられかねない。
なんで神の世界はどこも例外なく永住させようとしてくるんだ。
本質的にトラップな世界なんだ。
なのでこれ以上は身の危険を感じるので、僕は早急に元の世界へ帰還することにいたします。
『そうか? もう少し長くいればと思うのだが、たしかにこの築いたばかりの世界では見どころも少ないからなあ。次来る時にはもっと名所を増やしておくことにしよう』
あ、ハイ。
期待させていただきます。
『ジュニアよ、お前たちが崇めるモノどもとは別系譜であるが、神としてお前たちの繁栄を陰ながら祈っておこう。お前たちの故郷に繁栄あれ!』
お気持ちありがとうございます。
では元の世界に帰るにはどうしたらいいんだっけ。
「ジュニアお帰りですかー。したらば私の背に乗ってください」
アナタは大怪獣ケートスさん!?
そうか帰りはアナタが乗せてってくれるって言っていましたよね!
よかったちゃんとした帰還の手段があって!
神々の遣いとしては至極真っ当なケートスさんの背にライドオン!
クロノス神の見送りを受けて、いよいよ本格的な帰還モード。
『オリュンポスの連中が変なことやりだしたらすぐ連絡するのだぞ! その時は私が直々に叱りにきてやるから!』
はい、是非ともお願いします。
この作りかけの……これから大きく発展していく世界をあとに僕らは駆け出した。
はー、やっと帰れる。
そんな安心感が胸中にあったのは秘密だ。
「これよりオリュンポスの地上世界へ帰還します。所要時間は一時間を予定しています。その間快適な海の旅をお楽しみにください」
そんな観光的な案内をしなくても。至れり尽くせりだな。
ケートスさんの背に揺られ、僕は速やかなる帰途についたんだが……。
* * *
それから波に揺られること数十分。
ケートスさんの背に乗って爽やかな海の旅。
「もう人間界の海ですね。どこの陸地に寄せましょう? ジュニアさんの希望に合わせますよ」
そんなにサービスいいんですか?
なんとも至れり尽くせりだ。
「そもそもこちらが無理言って連れまわしたのだから当然ですよ。元の楽園島に戻ってもいいですし、他に希望の行き先があれば遠慮なくどうぞ!」
そしたら大陸に戻るのもいいし、どこか他に行く場所あったっけ?
と僕がウキウキ考えていたら……。
「……ムムッ、敵影!?」
とケートスさんが緊張感を伴った声を放つ。
というか敵の影?
敵?
その言葉尻の不穏さに周囲を見渡すと。
水平線の上の開けた空に、やけに大きな影が飛んでいる。
あの大きさはカモメとかじゃないな……!?
『バババーン 英雄ペルセウス登場!』
変な人が現れた。
『すみませんジュニアさん! ヤツは唐突に現れては私を狙ってくる通り魔的存在です! このままではアナタも巻き込まれてしまう!』
といって半ば無理やり僕を放り出すケートスさん。
『残念ながら、私がお送りできるのはここまでのようです! あとは自力で帰ってください、よい旅を!』
言い終えるか否かも微妙なタイミングで、空から飛来してきたへんなヤツとの戦闘に入るケートスさん。
え?
ここ海のど真ん中なんですが?
ここから自力で帰るって、どうやって?







