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1463 ジュニアの冒険:叔父という生き物

 アナタは……テトラおじさん!?


 現人魚王アロワナの実弟にして、同じく王妹たるプラティの息子である僕から見れば伯父……いや、叔父!


 母の弟、血縁者。


「よう、久しぶりだなジュニア、元気してたー?」


 はい、僕は元気です……。

 ノリ軽い。


 そういえばテトラおじさんはこんな感じの人だったな。

 王族の割に軽いというか……チャラいというか……。


 僕とテトラおじさんの関係は血縁以上に深い。

 何しろ僕の幼少期を一緒に過ごしたから。


 テトラおじさんは他の多くの人たち同様、一時期を農場で過ごした。

 農場で修行し、能力を養うためだ。


 ただ時期的にも僕が物心つくかどうかぐらいのタイミングだったので特に印象深い。

 比してエンゼルおばさんなどは、農場滞在していたものの僕が物心つく前に巣立っていったため印象で言えばやっぱりテトラおじさんの方が色濃い。


 ……そういえば、いつの間にか農場から去っていたなテトラおじさん。

 やっぱり印象薄い。


「いやいや、ちゃんと農場学校卒業して送別会も開いてもらったぜ! 先生とも涙のスクラムを組んだし! なんで覚えてねえんだよお前が!?」


 なんででしょうかねえ?

 農場学校卒業生って言ってもたくさんいるんでねえ?


「血縁というアドバンテージがあるのに!?」


 それよりもテトラおじさん、卒業後は人魚国で何を?

 エンゼルおばさんや四魔女のお姉さんたちみたいに、農場で培ったものを全力発揮していらっしゃるので?


「特に何も」


 ……ニート?


「王弟っていう立場を最大限活用させてもらって日々気楽にやらせてもらってるよ。まあ、かといって貴種の務めを投げ出してるわけじゃないぜ。たまに軍に参加してモンスターの掃討とかしてるしよ」


 フリーター?


 様々なネガティブワードが脳裏をよぎっていったが、とりあえず武泳大会の本戦に出場し、一回戦を圧勝でパスした以上実力はあると見える。

 きっと農場で学んだことは血となり肉となりテトラおじさんを形作っているはずだ。

 だから彼が農場で過ごした日々はけっして無駄ではないはずなんだ。

 けっして。


「わー! オジサンやったぜー!」


 そこへ飛び込んできたのはモビィくん。

 問題の人魚王子。


「お、わざわざオレの勝利を讃えに来てくれたのか? うい甥だぜー!」

「あとジュニアのアニキも初戦勝利オメ」


 どうも。

 どうも温度差があるような。


 テトラおじさん、モビィくんから懐かれている?


「そんなことないぜー、これぐらい普通だよ、な?」

「なー?」


 いや、この和気藹々とした感じ。

 そうかモビィくんは親族の中ではオジサンが一番好きってことか。


「オジサンはいいヤツなんだぜ! 今日のオレの出場もオジサンが手伝ってくれたんだからな! お陰で会場にも忍び込めたし、乱入タイミングもオジサンが指示くれたんだぜ!」

「面白そうなこと企んでるなーと思ってよ。それならもっとも面白くなるよう演出してやるのがオレの役目よ!!」


 そんな役目ないと思います。

 なんかアロワナおじさんが頭抱える様が目に浮かんできた。


 ただでさえ腕白盛りの息子に、放埓オジサンの知恵と権力と財力のバックアップがついたら、それこそ手が付けられないじゃないか。


「さって、一回戦も終わったし次の試合まで暇だから出店でも回るか。武泳大会の出店祭りも立派な風物詩だからな。食いたいものがあれば言え! オジサンが何でも買ってやるぞ!」

「わーい、オジサン太っ腹ー!」

「ジュニアも来い! お前だってまだまだお金は貴重だろ? こういう時こそ大人の財力にひれ伏しとけよー!」


 ああ……ハイ。

 奢ってくれるというならここは素直に奢られておこう。


「オジサンー、オレ牡蠣食べたいー」

「おッ、いいな。じゃあ店主、焼き牡蠣三人前くれ!」


 気前よく奢るなあ。

 まあ、大人ってだけにそれだけの財力があるってことだよな。


 まだ独身のようだから家庭に回す資金も最小限で済み、それだけに自由にできるお金が有り余っている。

 さらには直接的な責任もない甥を無制限に甘やかすことのできる叔父!


 これが叔父という生き物か……。


「あッ、そういえば……」


 テトラおじさんが僕に向かって言ってきた。


「オレさあ、新しいジャケット買ったんだけど、そうすると古い方着なくなるからジュニアにやろうか? 古いっつっても買ってから一年経ってないからまだまだ着れるぜ?」

「え~、オジサン、オレには?」

「いやぁモビィにはサイズ合わないんじゃねえかな? お前にはウニ焼き買ってやるから、それで我慢してくれよ、な?」

「わーい、ウニーッ!」


 たった一年の新古品が流れてくる!?

 これが叔父の力。

 子どもにとってはありがたみが深すぎる……!


「ここにいたか」


 と出店エリアに現れたのはアロワナおじさん。

 この自由奔放な叔父の兄。


「テトラよ……、あまりモビィのことを甘やかさんでくれるか? コイツにも未来の人魚王として慎みとか……!」

「えぇ? オレは叔父として普通に接しているだけだぜ? 大丈夫大丈夫、オレこう見えてけっこう稼いでるからウニぐらい奢っても懐痛まないって!」

「そういうことを言っているのではなく……!」


 アロワナおじさんも何と言っていいかわからず、渋面を作っている。


「お前も蓄えは作っておくべきだろう。年齢的にもそろそろ身を固めねばだし、家庭を持つとなったらお金なんて際限なく出ていくぞ。そもそも相手も見繕ってはいるのか? 私の耳にはよくお前の艶福な噂話が届いてくるが?」

「そ、そういう話はまた日を改めて……!」

「私としては、互いに割り切れているなら必要以上の介入はしない。お前も相手もいい大人だろうからな。しかし、母上がそういうの大嫌いだということはお前も知っているだろう。母上をキレさせたらフォローに回るのは私だということを努々忘れずにいてほしい」

「うぬぅ……!?」


 放漫な弟に釘を刺す兄の図!

 これが大人の兄弟関係か……。

 僕も十年二十年経ったらノリトに対してこういうことを言うんだろうか?

 ……。

 むしろノリトから注意を受ける僕の想像しか浮かび上がってこない?


「で、でもさあ、可愛い甥をもてなしてやりたいという気持ちはガチなわけよ。特にジュニアとは久々だから、今まで会えなかった分をさあ。アニキも同じオジとしてわかるだろ!」

「むう、それはそうだが……!」


 アロワナおじさんの熱烈歓迎ぶりも凄かったもんな。

 勢いが凄いのが伯父で、もてなしが凄いのが伯父か……?


「それに何よりさ、甥っ子への甘やかしが凄いって、オレより遥かに格上なのがいるだろ」

「格上?」

「聖者の義兄(アニキ)だよ」

「……」


 伯父、叔父に続いて、義理のおじが参戦してきた。


「あの人の甘やかし凄えぞ。一回モビィが遊びに行くのに付き添ったことがあるが、おもむろに『お年玉だぞー』って言ってマナメタルのインゴット取り出した時には卒倒するかと思った」


 すみません。

 ウチの父が限度もなく放埓ですみません!


「さすがにプラティの姉貴から飛び蹴りくらって止められたけれどよ。それに比べればオレの甘やかしなんて可愛いものだろ!」

「いや、聖者様は存在そのものが規格外なのだから比較するにも……!」


 ウチの父が規格外ですみません!!


 そう言えば僕自身の見聞からしても、ゴティア魔王子の誕生日プレゼントにマナメタルで聖剣打とうとして母さんに止められたことがあったっけ。

 父さんが親戚友人の子どもを甘やかそうとするために世界経済のバランスが乱れる。


「まあ、モビィよ。せっかくなのでここからは父と出店を回ろうではないか。あそこで上手そうなヒジキごはんでも……!」

「あッ、もうすぐオレの試合だ。じゃあオジサンもアニキもまたねー!」


 上手いこと逃げた。

 ガックリと肩を落とすアロワナおじさん。

 大丈夫ですおじさん。アナタの愛はいつかきっと伝わりますよ!


「試合といえば、忘れちゃいけねえぜ。次の二回戦、お前の相手はオレだってことをよ」


 テトラおじさんが鋭く言い放つ。

 たしかに第一試合を僕が勝って、第二試合の勝者がテトラおじさんであれば。


「オレとしても叔父としての威厳を保たなきゃだからなあ。悪いが全力で行かせてもらうぜ。コテンパンに負けたからって姉貴にチクんないでくれよ」


 二回戦も困難な戦いになりそうだ。


   *   *   *


「農場神拳奥義! 農場有情新血愁!!」

「ぐはぁああああああッッ!?」


 そんなでもなかった。

 僕、武泳大会二回戦突破。


 そういえば段々思い出してきた。

 テトラおじさんが農場にいた頃よくこうやって制圧していた。

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― 新着の感想 ―
あーそーだったそーだった。 そーいえば昔チビッコだったジュニアくんがよくテトラくんをボコってましたねw
ああ…またやられてしまった…テトラ君… 叔父さんあるあるネタ満載…それよりヤバいキダンの甘やかし…
地位のある遊び人ほど 政治的に利用価値がありかなり便利 色んな意味で
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