1460 ジュニアの冒険:ジュニア参戦
くっそう……!
何かお祭りやらケンカやら天下一武闘会やら巻き起これば、関わらずにはいられない。
それが父から受け継いだ僕の特性だとでも言うのか!?
「そうよ」
率直に肯定しないでシーラおばあちゃん!
受け入れるのに時間がかかるんです、若さゆえに!
「でもちょうどいいじゃない。魔女武闘祭じゃ観戦者側ですることまったくなかったし、体を動かすいい機会でしょう?」
うむむむむ、そう言われたら……。
終始観戦者に徹していた魔女武闘祭のみならず、そのあとの老姫の乱でも活躍するのは四魔女のお姉さんやシーラおばあちゃんばっかりで、僕何もしていなかった気が……。
……存在感が薄れていく。
よし!
僕、参戦します!
この場において僕という存在を強くアピールしていきます!!
「その意気よ! さすがジュニアちゃんノリがいいわね!!」
この決断をノリのよさで片づけていいものか。
いや、ここまで来てぐだぐだ考えるのはやめよう。すべては若さに身を任せてしまえばよい!
とうッ!!
僕は海中を泳ぎ、アロワナおじさんの隣に並んだ。
ちなみにだが武泳大会は巨大魚ジゴルの外の海中で行われて、男人魚たちもそこに集結。
僕は引き続き魔女さんたち開発のエアもずく(三倍素)を咀嚼中にて海中でも問題なく呼吸可能だ。
まずは軽くご挨拶。
「皆さん初めまして! 僕が聖者の息子ジュニアです! 今日は皆さんを皆殺しにして帰ります!」
おおおおおおおおおお……ッ!
どよめきの歓声が上がった。掴みはOKのようだ。
「じゅ、ジュニアくんは意外に闘志が熱いのだな」
困惑交じりに言うアロワナおじさん。
そうっすかね?
「ジュニアくんが参加してくれれば、久方ぶりの陸からの参戦者だからな。皆盛り上がるというものだ。かつては聖者殿も参戦してくれたのだがなー」
記憶あります。
観戦席で母さんと二人、危うげに戦う父さんを応援していた。
「しかし何年か前に土下座して『もう勘弁してください』と頼まれてな。あそこまでされたらさすがにもうお誘いできぬ……」
父さんは戦いが得意じゃないから。
得意じゃないというか好きでもないんだよな。ちょっとしたケンカですら心底嫌な顔するし。
そんな父さんでも血を見ることも辞さず聖剣ドライシュバルツを振るうのは、家族始め近しい人が脅かされんとする時と、食べ物を粗末にされた時だけだ。
「だからこそ聖者様のご子息であるジュニアくん参戦には盛り上がるのだ! かつて聖者様本人が初参加された武泳大会は史上類を見ぬほどに盛り上がったのでな。あの興奮の再来と皆も期待するものよ!」
今の僕の期待値は『聖者の息子』としてのもの……。
それを僕自身の期待値に変えられるかは、これからの戦いで決まる。
「では、ジュニアくんの参戦が公表されてからこその次なる参戦者の発表だ……!」
何ですそのいわくありげな前置きは。
「可愛い甥の参戦に、この私もジッとはしておれぬ! この人魚王アロワナも、この武泳大会に復活参戦だ!!」
うおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!
かつてないほどに場が盛り上がる!?
一体何ごと!?
っていうか話の流れからしてアロワナおじさん参戦してなかったんです!?
「うむ、数年ほど前に十連覇を達成してな。それを機に殿堂入りして参加を控えるようになったのだ。見る側も、毎回トップが同じ顔ではつまらんだろうしな」
カラカラと笑うアロワナおじさん。
軽く言っているが十連覇って、物凄いことなのでは。
人魚王の面目躍如というべき大快挙だ。
「しかし可愛い甥が初参戦というのに指を咥えて見ている道理はない! ジュニアくん、かつて聖者様とそうしたように決勝戦で相まみえようではないか、はっはっは!!」
無茶なこと言うアロワナおじさん。
しかし大会の異変はまだ収まらない。
「ジュニアくんに誘われて戻ってきた闘士は私だけではない! 皆も覚えているはずだ、忘れようはずがない! 人魚界の真の伝説、皆の心に刻まれた理屈を超えた最強者。そう……!」
満を持して現れる巨体。
あれは……!?
「前人魚王にして武泳大会殿堂入りの元祖! ナーガスだ!!」
「もっす!!」
ナーガスおじいちゃんまで参戦!?
それに参加者の男人魚たちが益々盛り上がる。
「ナーガス前王まで参戦なさるのか!?」
「殿堂入りが二人一気に……、これは聖者参戦の年以来の大波乱になりそうだぜ」
「この大会で優勝するとなったら、生半可じゃ無理だぞ……!」
「それだけに血が騒ぐぜ……!」
それらしく血を滾らせる参戦者たち。
一方、復活を果たしたレジェンドに盛り上がりも最高潮だ。
「ナーガス!」「ナーガス!」「ナーガス!」「ナーガス!」「ナーガス!」「ナーガス!」「ナーガス!」「ナーガス!」「ナーガス!」
「もっすもっす!」
ナーガスおじいちゃん大人気だな。
先代の人魚王だからなるべくして……という感じだが。
「父上は、私より前に十連覇を達成し、殿堂入りした御方でもある」
それを傍で眺めるアロワナおじさんは言う。
「その圧倒的な戦いぶりをリアルで見てきた私の世代、伝聞でしか知らぬ後の世代にも心に深く刻まれた。まさしく人魚界のレジェンドという人だ。私がこれからどれだけの功績を積もうと、きっと後世に燦然と輝くのは人魚王ナーガスの名であろう」
そういうアロワナおじさんは、どこか誇らしそうでもあった。
シーラおばあちゃんの話を聞くに、ナーガスおじいちゃんはこの世界そのものをすくった経験のある人。
そんな人物、この世界では多分ナーガスおじいちゃんぐらいしかいないのではないか。
そんな人が彼のお父さんであり、僕のおじいちゃんでもある。
たしかに誇らしいことだった。
「……以上が、今年の武泳大会の参加者である! 例年にも増して豪華な顔ぶれになったと自負している! お前たちの武勇を示すのに不足ない場所だ! そうは思わんか!?」
「思うー!!」
フツーに元気な返事がきた。
何やら巻き込まれた気がしないでもないが、これを元に僕も激戦を勝ち抜く覚悟を……。
「ちょっと待ったぁあああああああ!!」
……と思ったのに現れる乱入者!?
まったくスケジュール通りにいかない大会だ。
何者だ?
この幼い声は?
「今年の武泳大会、オレの参加も認めてもらうぜ! この人魚王子モビィ・ディックがな!!」
モビィくん!?
我が従兄弟のモビィくんも参加表明!?
「いやいやいやいやいや……!」
突然の乱入者にアロワナおじさんも困惑気味。
何しろ実の息子だからな
「さすがにお前の参加はまだ早すぎるのではないか? 人魚王子といえども……!」
「もっすぅ……!」
ナーガスおじいちゃんも難色を示している。
「やだやだやだやだ! ジュニアのアニキも参加するんだろう! だったらオレも参加していいじゃん! 従兄弟だぜオレたち!」
「それはそうかもだが、ジュニアくんはお前よりずいぶん年上だし……!」
戸惑いがちに僕と我が子を見比べるアロワナおじさん。
しかし、僕は言い添える。
モビィくんに味方する形で。
「いいんじゃないでしょうか?」
と。
だってモビィくんってたしかノリトと同じ年でしょう?
アイツなんか反抗期真っ盛りでいち早く親から独立し、いまや一大集団の首領にのし上がっているぐらいです。
そんなノリトと同年のモビィくんが、やってやれないとは思えません。
「さっすがアニキ! 若者の気持ちがわかってやがるぜ! オヤジももうちっと見習ったらどうだ!?」
「ううぅ……!」
タジタジになるアロワナおじさん。
これは武泳大会十一回目の制覇に向けての強力なライバル登場だな。







