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1432 ジュニアの冒険:用務員潜入

 そんなこんなでマーメイドウィッチアカデミアを見学することとなった僕ジュニア。


 そこでふと疑問に思うことがあった。


「あの……ここっていわゆる女子校ですよね?」


 と傍らにいるカープさん……カープ学園長に尋ねる。

 こんなのが学園の長とか不安しかない。


「そうですね、我が校は人魚国に相応しいレディの育成を目的として設立された学園ですので、在籍しているのはすべて女子となります」


 ふむ……。

 だとするなら、ここ校門より先は乙女の花園、男子禁制。


 さすれば紛れもなき男の僕が足を踏み入れるのは厳禁ではないのだろうか。


 入った途端に食い殺されたりしない?


「しませんよ、どこのアマゾネス帝国ですか? 心配せずとも我が校はただ女生徒しか在籍していないだけで厳密に男子禁制ではありません」


 そうなの?


「生徒は女子のみながら教員には男性もおりますし授業参観や三者面談の際には男性の保護者様にもおいでいただいています。さらに設備補修などに男性業者を敷地に入れることもありますし、政府高官等の見学者も性別に関係なく受け入れております。今回がまさにそうですね」


 なるほど。

 僕は他国からのやんごとない見学者扱いか。


「なので余計な心配はいりませんよ。さあ、何の気兼ねもなくマーメイドウィッチアカデミアの見学を! 我が校の素晴らしさに触れて、是非ともプラティ様の説得に前向きになってください!」


 まだ諦めていないのかこの学園長。

 どうやったらこの人の不信任案出せるんだろうと考えていたところで、ふと閃いた。

 いや不信任案出す方法じゃなく。

 マーメイドウィッチアカデミアを見学するにあたってのナイスアイディアを。


「学園長、相談なんですが……」

「なんでしょう? プラティ様を復学させる方法についてですか!?」


 だからそこじゃなく……。

 退学から二十数年経った人を復学させようとするなって、だから。


   *   *   *


 そして幾ばくかの時間を経て……。


 ……用務員の僕、爆誕!!


 説明しよう、用務員と言えば学校の設備管理のために様々な雑務をこなしていく人たちのこと。

 マーメイドウィッチアカデミアもまた学校施設である以上、複数の用務員さんが常時働いているのだ。


 その一人として潜入する僕!


「別に潜入しなくいても……?」


 と呆れかえるカープ学園長だが、いいえこれには意味があるのです。


 人たるもの、偉い人から見られているとわかれば緊張し、普段の振る舞いを見せてくれなくなる。

 よりよい自分を披露せんとし、却って真実から遠ざかってしまうのだ。


 そうなったら見学する意義が薄れてしまうだろう。


 それを避けるためにも、より効率的な成果を上げるためにも観測者である僕自身が陰に徹し、マーメイドウィッチアカデミアの生徒たちから見られている意識を排除しつつ見守る必要がある。


 それゆえの用務員への擬態なのだ!


「なるほど……ジュニア様の深遠なる考え、御見それしました」


 カープ学園長は、みずからの動揺を押し隠すようにメガネをクイと上げた。


「それではアナタのことは臨時雇いの用務員という名目で学園内の立ち入りを許可します。身分を偽装する以上は、その身分としての業務に従事してもらいますが……!?」


 問題ありません!

 日々の雑務こそ僕がもっとも得意とするところ!


「そうですか……では万が一のために、この学園長直筆の身分証明書をお持ちください。これを明示すればどういう状況であってもアナタの安全と品位は保証されますので」


 品位も?

 そこまで気を遣っていただかなくても……!?


「何を言います。他国から来た王族で、自国の王族とも親戚関係にあるアナタが何らかのトラブルに巻き込まれたというだけでも、数百年続く我が校存続の危機に陥るのですよ。本当なら我が校滞在中は終始SPで囲んでおきたいぐらいなのですから、アナタの気まぐれを容認した分は譲歩ください」


 ハイ……。

 さすがにガチのカープ学園長に圧倒される僕。

 そうだよな、国賓に失礼があったとしたら学園長の首ぐらい容易く飛ぶよな。


 そんなリスクを冒して僕の気まぐれを容認してくれたんだから、少しは妥協しないと。

 ……。


 気まぐれだってバレてる?


 そんな、人魚国では一歩踏み込んでからずっと国賓として大歓迎されていたものだから、人間国の時みたく身分を隠して一般人ロールプレイングできないものかと残念がっていた。


 そこでここマーメイドウィッチアカデミアで一旦身分をロンダリングして、“潜入”という体でもって一般人と化す。


 それが僕の計画だ!

 名付けて『手段が目的化』計画!


 だってしかたないじゃないか、僕の本質は小市民、それは父さん譲りの揺るぎない事実なんだ。

 それを王様の親戚だなんだとVIP扱いが続いたらいたたまれなさで爆発してしまう。

 だからこその一般人化が必要だったんだ!


 さあ、学園にて誰からも重んじられることもない一般人ライフを満喫するぞ~!


「この小僧、ちゃんと見学する気あるのかしら?」


 カープ学園長からツッコミ受けるようになったらさすがに終わりだな、と思った。


「ともかく、速めに満足して切り上げてくださいね。わたくしは学園長室で待機しておりますので、何か騒動が起こったらすぐに駆け付けますので!!」


 と言いながら渋々と引き下がるカープ学園長。

 きっとこれから学園長室でストレスフルな時間を過ごすんだろうなと思うと、僕も彼女もヤベーヤツなのはどっちもどっちなんだなと思わざるを得なかった。


 さてでは用務員ライフの満喫を……もとい秘密の立場からのマーメイドウィッチアカデミア見学を遂行しようではないか!


 うおおおおおおおおおおおッ!!

 用務員の基本業務と言えば、まず掃除!

 校庭に積もった落ち葉を掃き出すぞぉおおおおおおおおおおッ!!

 校内の各施設の点検じゃあああああああ! ここネジが緩んで危険だから締め直すぞぉおおおおお!!

 花壇の水やりもしないとなあああああ! うおッ!? マーメイドウィッチアカデミアの花壇には珊瑚が!?

 あと防犯対策も用務員の仕事! なに!? 不審者が!? サスマタ持って突撃だぁあああ! いやマーメイドウィッチアカデミアのサスマタは三つ又なのか!? というかこれもう銛では!?


 そしてマーメイドウィッチアカデミアは人魚の学校であるから独自の施設も満載だ。


 この水路に海藻が詰まっているから何とかしてくれって?

 よし来た!

 ……これは海ブドウ!?


 この時ふと閃いた。人魚女子校の水路でとれた海ブドウで何か商売ができるかもしれない!?


 という感じで八面六臂大活躍の用務員、僕だった。


「いやぁはははは、今度来た新人は息がいいべなあ」

「ワシら楽できて有難いことだっぺ」


 と先輩用務員さんからも可愛がられる僕!


 何とも充実した生活だった!

 ここで既に当初の目的を忘れつつある僕!


 やっぱり誰からも注目されずに静かに過ごす日々が、僕の小市民のハートを癒す!


 ……と思っていたんだが……。

 ザワザワ、ガヤガヤ……。


 なんか周囲が騒がしいな。道行く女生徒たちの視線がチラチラとこっちへ向いている?


 そりゃあすれ違えば挨拶ぐらいはするけどさ。

 しかしマーメイドウィッチアカデミアの女生徒たちのこちらへ向けられる視線は、ただの用務員へ向けられるものではない気がする。


 もっと特別なものへ向けられるような?

 一体何故だ!?

 僕の用務員ムーブは完璧なはずなのに!?


「あ~……そういや新人の兄ちゃんよう」


 先輩用務員さんに茶でも飲みながら尋ねられた。


「前々から思ってたんだけど、アンタ陸人なのに人魚国で用務員とは珍しいべな? どんな経歴でここさ来たんだべ?」

「陸でなんかやらかしたんだべなぁ? はっはっは」


 そうかッ!?

 たしかに僕、人魚族じゃないし。皆が尾びれ晒しているなかで一人だけ二本足ではそりゃ目立つというものよ!


 こんな盲点があったとは!?

 今、僕は人魚国ではとても珍しい地上人の用務員さんだった!!

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書籍版19巻、8/25発売予定!

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↑コミカライズ版こちらから読めます!
― 新着の感想 ―
女子高に現れた臨時の若い用務員、エロ作品に出てくる竿役みたい。
その時、ふと閃いた!これは◯◯のトレーニングに活かせるかもしれない!構文か?!(笑)
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