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13 ダンジョン突入

 外見からは海辺の横穴にしか見えなかったダンジョンだが、中に入ってみて驚いた。

 中が物凄く整っているのだ。

 壁も床も天井も平らで、どこかのお城の通路のよう。


 しかしモンスターはしっかりいて、侵入者の俺たちを見つけるなり襲い掛かってきた。


「旦那様! 下がってて!」


 プラティは持参してきたカバンから何か取り出しては投げつける。

 それはガラス作りの試験官だった。

 中には怪しく輝く薬品が入っており、モンスターの体にぶつかって試験官が割れた途端、凄まじい変化を起こす。


 ある薬品は、空気に触れると同時に爆発的に燃え盛る。また別の薬品はモンスターを浴びた部分から凍りつかせ、また電撃を放って痺れさせる薬品もあった。


 ああいう戦闘用魔法薬が、人魚族の得意らしい。


 もう既に十体以上のモンスターがプラティによって排除されていた。


 それを彼女の後ろから眺めるばかりの俺。

 何もせずに事態が進行していくのは楽だが、あまり何もしていないと男として立つ瀬がない。

 とにかく何かしたいところだが、何をしていいのかわからなかった。


 何しろ俺は、それ相応の道具を手にしていなければ何の役にも立たない男なのだから。


 神よりいただいたギフト『至高の担い手』は、手にした道具に即してあらゆる分野の達人になれる能力。

 それは裏を返せば、無手だと何の役にも立たないということだ。


 ダンジョンの中にまで入るとわかっていたら何か武器でも用意していたのだが。


 ……とか思っていたら、一つの幸運が俺の前に現れた。

 目の前に剣が落ちていたのだ。


「さすがダンジョン」


 拾得物の現地利用はダンジョンの醍醐味だ。

 剣を握った途端、俺は剣聖となった。


「とりゃあ!」


 プラティの攻撃魔法薬が討ち漏らしたモンスターを斬り裂く。

 これで俺たちの陣容は一層堅固になった。


「さすがアタシの旦那様! 惚れ直しちゃうわ!」


 ダンジョン内のモンスターは様々なものがいた。


 ヘビ型やトカゲ型。オーク、ゴブリンと言うような人に近いもの。よくわからないヘドロの塊のような、生物かどうかも疑わしいヤツもいた。


 そういうのもすべて蹴散らして、一段落着いた頃にはダンジョンのかなり下層まで到達していた。


「もうすぐ底かしら? 思ったほど深いダンジョンじゃなかったわね」


 まだまだ余裕、と言った表情でプラティが言う。


「というかそろそろ帰りませんか?」


 ダンジョン内の掃除はし尽したし、この分なら我が畑にも被害が出るほどモンスターも溢れたりしないだろう。

 危険なことはしたくないし大冒険もしたくない。

 それが俺の異世界ライフの信条なのだ。


「んー、そうは言うけど気になるのよねー」

「何が?」

「このダンジョンの整い様」


 整い様?


 まあたしかに、ただの洞窟にしてはビックリするぐらい内部が綺麗だ。

 床も壁も天井も、人の手で設えられたのかと思うほど綺麗な平面。というか石造り?

 下の階層に移動するときは階段だった。


 完全に人工物じゃないか。


 異世界人の俺としてはダンジョンってそもそもこんなものじゃない? と思っていたのだが、やはり違うのだろうか?


「出てくるモンスターも、どこか統率されたところがあったし。もしかしたら、このダンジョン、……いるのかもしれない」

「いる? 何が?」

「主」


 ぬし?

 ダンジョンのボスってこと?


「主のいるダンジョンは超珍しいのよ。そして超危険なダンジョンでもある……!」

「え? どういうこと?」

「だってダンジョンの主になれるヤツは基本的に二種類しかいないんだもの。一種類はドラゴン。もう一種類は……」


 とか話しながら歩いていたら、俺とプラティ、両方の脚が同時に止まった。

 通度が行き止まりになっていたからだ。


 いや違う。


 壁のように思われた突き当りは、いかにも押せば開きそうな作りをしてあった。


「扉……!?」

「構造的に、ここがこのダンジョンの終点ぽいわね。するとこの扉の向こうには……」


 もう引き返そうよ。

 と言うより先に扉の方がひとりでに開いた。


 こっちは何もしていないのに。


 開いた扉の隙間から漏れ出る、強烈な冷気。

 急に吐く息が白くなった。


「この妖気……! 間違いない……!!」


 唐突にプラティがシリアスな語気に変わった。


「やっぱりこのダンジョン、主がいたんだわ……! しかもより最悪な方……!」


 最悪な方!?


 さっきプラティ言ってたよな。ダンジョンの主には基本的に二種類いて、そのうち一方がドラゴン。

 じゃあ、もう一方は……!?


「アンデッドの王。ノーライフキング……!!」


 開いた扉の向こうで俺たちを待ち受けていたのは、全身を豪奢な衣装で包み込んだ人間だった。


 ただし、人間のシルエットをしているものの、その体は表面が完全に乾涸びていた。

 ミイラみたいに。


 普通の人間ならば、確実に死んでいるとわかる乾涸び様だが、ソイツはたしかに生きている。

 つまりソイツは死にながら活動している。


 ゾンビ。

 不死者。

 アンデッド。


 ……というヤツだった。


 しかもプラティの口振りでは、その中で一番偉くて強いヤツ!?

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