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1340 ジュニアの冒険:魔王登場

 抵抗虚しく魔王城まで連行されることになった僕ジュニア。

 だって、あれ以上抵抗したら公務執行妨害つけられそうな雰囲気だったし。


 ゴティア王子から『あ、今手ぇ当たったね』と言われた時は肝が冷えた。

 完全にしょっ引かれる人の心地だった。


 国賓? とんでもない。

 今の僕は囚人だ!


「弁護士を呼んでくれ! 弁護士が来るまで僕は何も喋らないぞ、黙秘権だ! 黙秘権!!」

「ジュニア殿落ち着いて……! 捕まったわけではないのですから、我々はあくまでアナタの歓待を……!」


 あッ、そうだった。

 取り乱してすみません。


「我が父、魔王ゼダンが是非ともジュニア殿とお会いしたいと言っている。もてなしの準備も整えてあるので、我らの歓迎を受けてはくださらないか?」


 魔王ゼダンさん!

 懐かしい、あの人はよく農場に遊びに来てくれていたので僕もよく覚えている。


 見た目厳ついがとても優しいオジサンで、よく遊んでもらった記憶がある。

 今もお元気だろうか。


「父上のこともジュニア殿のことをよく覚えておいでで、会うことを切に希望している。現在予定されていた各大臣との面会をキャンセルして謁見の間でお待ちだ」


 また話が大きくなっている!?

 そんなお気遣いなく、かねてからの予定を優先させてください!


「そうはいかぬ、ジュニア殿は友好国の後継者であるだけでなく我が国の恩人、聖者様のご子息でもあるのだから、粗相は働けぬ」


 どこに行っても父さんの名前の大きさが浮き彫りに!?


「魔族全体の認識だ。父上は常に言っておられる、聖者様がいなければ現第一、第二魔王妃と結ばれることもなかったし、人族との戦争に勝利することもなかった。今日の平和があるのも自分自身が幸せなのもすべて聖者様のお陰であると。ゆえに聖者様は魔族、そして魔王当人の恩人でもあるのだと」


 父さんスゲェ!

 こんなにも魔王さんから尊敬される父さんって何者!?


 別に前々から尊敬していなかったというわけでもないし、むしろ一般的な家庭よりも父への尊敬が強いつもりでいたのだが……。

 それでもまだ尊敬が足りなかったのではないか。


「父上は、魔国において最高級の栄誉となる『魔族髑髏剣勲章』を聖者様に送ろうとしたらしいからな。これが他国人に贈られる例は過去なかったので歴史上初の快挙になったはずが、聖者様が固辞したので実現はしなかった」


 ――『やだ! こんなドクロに剣がぶっ刺さった中二土産みたいなセンスは!』

 と言ったとか言わなかったとか。


 改めて実感させられる、ウチの父さんがそれだけ重要人物だってことに。

 だからこそ、その息子の僕もこんなにもてなされるんだろう。


 これが僕自身への評価だと勘違いせず、驕りを正さねばな。


「父上こと魔王はこちらの謁見室でお待ちだ。この魔王ゴティアみずから、ご案内しよう!!」

「お、おねしゃす……!?」


 ゴティア王子が、これほどゴリゴリアピールするのも僕への歓迎を示すたんめだろう。


 重要人物にホストを任せるほどの重要人物、それが僕ということだ。


 魔王様が待つ魔王城は、魔王の住居地して数百年の歴史を持つ。

 名前の割におどろおどろした雰囲気もなく、むしろ綺麗で格式高い風潮の建物だった。


「それでも遷都された百年ほど前に建てられた城だからな、人間国の王城などに比べれば全然歴史も浅い。その分、ドワーフたちの工芸をふんだんに取り入れて、『世界一美しい城』とまで言われているのでな。我ら魔族のちょっとした誇りだ」

「うッ」

「どうした!?」


 いえ、すみません……。

 ドワーフとエルフに関してはつい直近で色々あったので、再び名前が出てきて食傷気味になっただけです。


 そうこう言っている間にも長い廊下を進んでしばらく経つ。

 でもまだ歩き続ける僕たち。


 遠いな!

 さすが王様の城、広い!


「大丈夫、もうすぐ着くぞ、この扉だ」


 ゴティア王子の指さす先には『扉……?』と眉をしかめるものがあった。

 壁じゃない?

 ちょっと中央に縦の溝が入った、模様の刻んである壁。


 と思ったがやっぱり扉らしい。

 壁かと思うぐらい大きな扉だ。


 なんであんなに巨大なんだ、開け閉めするだけで大変じゃないかと思う。


 その両脇に門番らしい魔族さんが二人立っていて、その人らも巨漢でしかも体系がマッチョブルだ。

 サイズ感が狂う。


 その二人に向かってゴティア王子が大きく呼ばわる。


「農場国が主、聖者様の息子ジュニア殿のおなりだ! 謁見の間を開けたし!」

「「承知!!」」


 二人のマッチョ魔族さんたちが観音開きの扉を左右それぞれ押す。


「ぐおおおおおおおおおおッ!!」

「ふぬぉおおおおおおおおおおおおおおッ!!」


 と唸り声を上げながら、巨大で豪華な扉を押す。

 しかも体中に血管浮き立ってるんですけど、そこまでして必死に開けなきゃいけないんですか、あの扉。


「魔王城名物、謁見の間の『獄制門』だ。開くために筋力と多大な魔力が必要で、どちらが欠けても門は開かぬ。この謁見の間の門番たちには特別な手当てが出されているが、それだけに扉を開けることができなくなればお役御免となるように定められている」


 そこまでして扉を開け閉めする必要が!?

 ……い、いや……。

 これもまた魔国というか、魔王の権威を示す一面なんだろうか。


 こうまでして存在を示さないといけないなんて、権力は大変なんだなあ。


 そうして開き切った扉の向こうに、広大なスペースが広がった。

 ここが謁見の間であるのだろう。


 そこに並ぶ三つの椅子。

 両端に二人の女性、そして中央に一人の男性が座っていた。


「久しいな、ご子息」


 見間違えようもない。


 彼こそ魔王ゼダンさん。


 魔族の長にして魔国の主……魔王を名乗る者にして世界の覇者。

 数百年、数十世代にわたって続いた人魔戦争を終結させ、宿敵人族を屈服させた。

 それでいて人族を滅ぼすことなく、開放政策を通じて人間国を再生させ、和平を結ぶまでに至った。


 武力で戦争を終わらせ、治政で和平を始めた。

 あまりにも完璧な王者としての振る舞いに、ゼダンさんを『歴代最高の魔王』と正式に呼ばれるほどだ。

 名君であることは疑いない確実。


 ウチの父さんは、よくまあこんな凄い人と知り合いだなと感心せざるを得ない。


「そなたが修行の旅に出たとは、既に聖者殿から聞き及んでいる。いつか我が国にも足を踏み入れてくれるだろうと心待ちにしておったぞ」

「ふんぬ! ふんぬ!」「ふぬふぬ!」


 門番さんたちはまだ全力で扉を開放中。

 手放すと勝手に閉じる仕様のようだ。


「随分と大きくなったものだ。覚えているかわからぬが、生まれたばかりのそなたを我はこの手で抱いたこともある。ゴティアが生まれたあとのことであったかな。聖者殿も初子の誕生に小躍りするほど浮かれていた」

「ぬぅうううううううううッ!!」「おほぉおおおおおおおおッ!!」


 昔を懐かしむように話す魔王さん。

 それに付随して両サイドがやたら煩い。


「この子が成長すれば、ゴティアのよい友人となってくれるだろう……と夢想したものだ。それがいま実現している。これほど嬉しいことはない。そう思うのは我一人ではなかろう」

「んじゃなめぇええええええッ!!」「あのッ、早く、早く入室してはくださいませんか……!?」


 門番の人たちが扉を支えるのに限界そうだったんで、敷居をまたいで謁見の間に入ることにした。

 それと同時にズズズズ……と重い音を立てて両扉が互いに近づき、最後にズシィンと大きな音を立てて閉門した。


「父上、ジュニア殿をお連れするご下命、これにて果せましたでしょうか?」


 ゴティア魔王子が恭しく言う。


「うむ、大儀であった。ゴティアよ、久々の友との再会は楽しめたか?」

「そうは言われましてもジュニア殿とは不死山で別れての数日ぶりですので、懐かしさというほどは」

「ふむ……」

「ですが再会の喜び自体はありました……!」


 なんか知らないうちにゴティア魔王子とのマブダチ設定が固められている。


 謁見の間には前述通り、三つの豪華な椅子が並んでいて真ん中に魔王さん、その両隣に少々お年を召した女性が座っている。


「ジュニア殿は覚えているかな? 第一魔王妃のアスタレスと、第二魔王妃のグラシャラ。双方我にとって欠くことのできぬ生涯の伴侶だ」


 もちろん記憶にある。

 第一王妃のアスタレスさんは、鋭利な顔立ちの怜悧そうな女性で。お年を召したいまでもその印象は変わっていない。


 対して第二王妃のグラシャラさんは、元々は戦場で活躍していたという女戦士で、男顔負けのたくましい肉体の持ち主だった。

 多分さっきの大扉も彼女なら片手で開けられる。

 その巨体で玉座の隣がやや窮屈そうに見える。


 一夫多妻制が認められた魔王さんの傍ら、二人は政務においても家庭においても魔王さんを支え、魔国の統治を円滑にしてきた。


 そしてなんというか……肝心の魔王さんは……。

 また……肥えられたというか。


 丸く大きくなられていた。

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― 新着の感想 ―
まーたドラゴンブートキャンプ必要っぽそうですね……
魔王はマヨラー!!
魔王さん…ヴィールのラーメンキャンプ第二弾行っときます?
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