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12 ダンジョン発見

 プラティとの生活にも慣れてきた頃。


「ダンジョン見つけた」


 いきなり彼女からそう言われた。


「ダンジョン……?」


 と言うとアレか?

 地下に潜ってお宝見つけたり、モンスターと戦ったり、最下層でボスが待ち受けていたりするヤツか?


 前の世界で植え付けられた先入観だけで考えては危ういので、ここはプラティの説明によく耳を傾けることにする。


「この辺りの探検してたら、入り江の方で見つけたの。洞窟タイプよ」

「探検って……!」


 時々姿が見えなくなると思ったらそんなことしてたのか?

 というか必要だけどな。棲み処の周りを探索して何があるのかよく把握しておくこと。


 俺は山に入ってすぐ角イノシシに襲われたトラウマから畑仕事に没頭してしまったが。本来は俺こそが、プラティがやってくるより前に完遂させてなくちゃいけないことだ。

 何やら不甲斐ない。


「で、そのダンジョンっていうのは?」

「え? 何? もしかしてダンジョン知らないの旦那様?」


 信じられないアホを見るような目で見られた。


 ……仕方ないだろう、所詮俺は異世界人。

 この世界の住人なら誰だって知っていることも、一から教えて貰わないといけないのだ。


 その点話すと面倒なことになるかなあ……、と思って秘密としていたが、今になってふと思い当たった。


 俺はこっちの世界の王様によって召喚されたのだ。


 とするとこの世界で異世界からの召喚者はさして珍しい存在ではなく、別に秘密にしておくこともないんじゃないか、と。

 そこで思い切って色々プラティに明かしてみることにした。


「へえ~、旦那様って勇者だったんだ!」


 説明が終わると、プラティは色々腑に落ちたような顔をした。


「勇者? いや俺は……」

「人族たちが、別世界から召喚した人を勇者って言うんでしょ? それくらいなら人魚のアタシも知ってるわ」


 この世界での勇者の定義は、異世界召喚された者全般を言うのか。

 だったら俺も勇者……、ということになるのか?


「人族の使う法術魔法には、別世界から勇者を呼ぶ術があるのよね。……でもアレ? 勇者って人族のために魔族と戦うものじゃないの?」

「そういうのが嫌だから、ここで隠遁生活してるんだよ」

「アタシ、そういう生き方大好き! ますます旦那様に惚れ直したわ!!」


 そう言ってくれると俺も嬉しい。

 というか話が逸れた。今の話題はダンジョンだ。


「じゃあ、この世界の初心者である旦那様のためにレクチャーをして差し上げますか。行きましょう!!」

「行く? どこへ?」

「ダンジョンよ。話で説明するより直接見た方が早いでしょう?」


 たしかに。

 俺たちは、今日の分の畑仕事を済ませてからダンジョンに向かうことにした。


              *    *    *


「これが、ダンジョン?」


 俺たちが基本生活圏としている畑エリアから徒歩にて二時間。

 それほどに近場にダンジョンはあった。


「……洞窟だな」

「ええ、だから言ったじゃない洞窟タイプだって」


 海辺の、隆起した岩場の片隅に、その洞窟はあった。

 見た目的には何の変哲もない洞窟だ。

 事前に説明がなければ、ただ単に海水の浸食で出来た穴だとしか思うまい。


 しかし直感的な部分で、異常さがビンビン感じられる。

 何と言うか、洞窟の入り口から漂ってくる淀んだ空気の感触が半端ではないのだ。


 見えない巨獣の舌が、顔中ベロベロ舐め回している、とでも言おうか。


「さすがにダンジョンの異様さを肌で感じ取ったみたいね」


 と言うプラティは、あまり動じていなかった。

 彼女は既にこの感覚に慣れてしまっているようだ。さすが現世界民。


「ダンジョンは、マナの流れが溜まった場所にできるの。淀んだマナが空間を捻じ曲げて異界を作り出す。その異界イコール、ダンジョンよ」


 ダンジョンの、そもそも論について説明してくれる。


 マナ……、というのは俺の感覚的に魔力と訳していいだろうか? あるいは気? 森羅万象のエネルギー?

 とにかくそうしたものが世界中を流れて循環する。

 そして場所によっては、流れが止まって淀む部分が出てくる。そうしたところがダンジョンになる。


 だからこそダンジョン内はマナが高濃度化して、濃縮された結果モンスターに転生するらしい。


 つまりこの世界ではダンジョンこそモンスターの生まれる場所なのだ。


「ダンジョン内で生まれたモンスターは、いずれ溢れてダンジョンの外に出るわ。地上海中を徘徊するモンスターは、例外なくどこかのダンジョン出身なの」

「それってヤバいんじゃないの?」

「もちろんよ。だから居住地近辺にあるダンジョンは、住民にとって最大の感心事よ。ヘタに放置してモンスターが溢れ出たら身が危険だし、畑も荒らされちゃうわ」


 それは大変だ。

 この洞窟からモンスターなんかが出て、丹精こめて作った野菜が食い荒らされでもしたら泣いちゃうかもしれない。


「どうすればいいんだプラティ? このダンジョン、潰したりできないのか?」

「ダンジョンそのものを消し去ろうっていうの? そのためにはマナの流れそのものを変えないといけないから一大作業よ。それよりは定期的に潜ってモンスターを倒していく方が現実的だわ」

「へー」

「モンスター素材もゲットできるし」


 ん?


「とにかく、入ってみましょうよダンジョン。中の様子を窺いつつ、適当に掃除しましょう」


 掃除っていうのは、モンスターを倒すって意味だろうなあ。それも一体ならず。


 まあ、プラティの説明通りなら、下手に溢れ出してからよりもダンジョン内にいるのをまとめて一掃した方がたしかに効率的。


 何より我が嫁プラティが潜る気満々なので、一人で行かせるのは心配だ。

 仕方ないので同行することにしよう。

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書籍版19巻、8/25発売予定!

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↑コミカライズ版こちらから読めます!
― 新着の感想 ―
ゴツゴツした岩場の洞窟探索には、きっとプラディには慣れにくいだろう靴をそろそろ履かせるべきだ。
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