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1271 ジュニアの冒険:旅立ち

 聖者キダンの息子、ジュニアです。

 おのれを鍛え直す修行の旅に出ることとなりました。


 艱難辛苦を乗り越えて、父さんの後継を担える実力者になりたまえ、と。

 このたびで色んなことを経験し、一人前の立派な男になるつもりです。


 そういうわけで今日、僕は農場を旅立ちます!!


「兄ちゃん頑張ってー!」

「若君、ファイトですぞぉおおおッッ!!」


 農場では弟たちや、日夜ともに暮らしてきた農場住みの人々が見送ってくれた。


「ジュニアぁああああッッ!! 男になって帰ってくるんだぞぉおおおおおッ!! およよよよよよよよ!」

「こまめに連絡を送るのよぉ! なんなら何かあったらすぐ帰ってきていいんだからねえええ!! 今は転移魔法とか色々便利なんだからあああッッ!!」


 中でも父さん母さんが一際テンション高めにブンブン手を振っていた。

 修行の旅を提案したのはあの人たちなのに、何故また?


 さらには……。


「ぐおおおおおおッ! 放せ! おれもジュニアと一緒に行くのだぁあああああッッ!! おれたちはいかなる時も、一身が同の体!」


 ヴィールが無理やりにでも僕に同行しようとするのを、ノーライフキングの先生に抑えられていた。

 ヴィールを抑えられる人物は、農場においてもそう多くない。


『我慢するんじゃい。おぬしが一緒にいてはいかなる障害も崩壊し、ジュニアくんの成長の機会が失われるじゃろうて』


 その通りです先生。

 生まれた頃よりずっと一緒だったヴィールと離れ離れになるのは僕も辛い。しかし、その辛さに耐えることも修行の一環だと思い、僕は旅立ちます。


 なんだかペットの大型犬と別れるような心境だ。


 ノーライフキングの先生とも、様々なことを教えてもらってきて恩師の下を巣立つような切なさがある。


 しかしこれも一時の別れ!

 いつか必ずこの農場に帰ってくる!

 その時までアデュー!!


 シュタタタタタタタタタタタタタタ!!


「走って旅立っていった」

「あの子、最高速度マッハ2で走れるのよねー。我が子ながらどういう体の構造をしているのかしら?」


 わからん!

 走れると思えば走れるものだ!


 そうして僕の修行の旅が幕を開けた。


   *   *   *


 と、ただあてどもなく彷徨っても勉強にはならないため、当面の目標を決めなくては。


 旅立ちの前に父さんからオススメ旅のプランを貰っていた。

『どうせだから世界中を見て回ってはどうか?』と。


 人間国から魔国、そして人魚国と、この世界の主だった国家を回りつつ、その間にある小種族の生活もつぶさに観察していけば実になる経験を詰めるだろうという父さんの意見だった。


 さすが父さん。

 聖者にして農場国の王の見識には重みがあった。


 その言に従ってまずは人間国に向かってみようと思う。


 人間国は三大種族の一つ、人族が住む国で、ごく近い過去に一端の滅びを経験している。

 そういう意味では珍しい国だ。

 滅びからの復活を遂げている。


 かつては絶対的な権威主義で疲弊していた人間国であったが、敗戦を機に権力の座に胡坐をかいていた王族や教会勢力を一掃し、健全な政治体制が敷かれた。


 現在では選挙による国家代表の指名が行われており、それによって初代大統領に就任したリテセウスさんによって目覚ましい発展を遂げた。


 政界にはびこる旧勢力を十年かけてやっと完全排除。

 国の発展や、民の保護のために全力を注げる体制になって目覚ましい成果を上げている……。


 ……というのは全部、先生の授業で教えてもらった机上の知識なんだけど。


 これからはこの目この耳この肌で体感し、生きた知識を得ていくことが旅の趣旨ってことなんだな。

 合点でい!


 とはいえ、いつまでも音速で走り続けるのも疲れるので交通手段を考えることにした。


 いい感じに途上、農場国の中心地に寄ってそこから鉄道を利用することにした。


 運賃?

 侮るなかれ、僕とてもう十六歳、農場や国家運営のお手伝いをして、その対価としてお小遣いはいただいている。

 お年玉も貯蓄しているから、僕は十代にしてはちょっとした財産持ちなのだ!


 ウチの親は、お年玉を無理やり奪って将来に積み立て(建前)するとかいう鬼畜な手合いじゃなくて本当によかった……!


 なので、今こそためにためてきた財産の大盤振る舞いどころ!!

 鉄道の切符売り場に駆け込んで……。


「グリーン席を一つ!!」


 と言ってやった。


「子ども料金で!!」

「十二歳以上は大人料金です」


 ダメか……!?

 十六歳じゃさすがに子ども料金は


 さらに駅弁も買うぞ!

 定番のシウマイ弁当だ!

 発売から十周年とか言われて特別パッケージで売られていた。


 モグモグモグモグ……。

 冷めてても美味い! 弁当としての工夫が感じられる!


 ……とかやってたら目的地に着いた。


「人間国王都、人間国王都。……終点です。本日も異世界鉄道をご利用いただきありがとうございました。本車両は折り返しになります。ご乗車になれませんのでご注意ください」


 降車。

 うーん、長く座っていたので体が軋む。


 ここが人間国の首都、王都……!


 とはいっても何度か来たことはあるんだよな。

 小さい頃、父さんにいろんな場所に連れてってもらったから。


 しかし自分の足で一人歩き回ることに意味があるのだろう。


 これからどうしようか?

 とりあえずあてどもなく王都を見て回って……いや、それではただの観光だ!

 父さん母さん弟たちにお土産を買って意向で終わってしまう!!


 もっとこうディープに、人々の生活に迫る体験をしなければ将来の肥やしにはならない。


 そう思って駅前でうんうん唸っていたら、声をかけられた。


「兄ちゃん、冒険者志望かい?」


 はい?

 振り向くと見ず知らずのオジサンが、実に人懐っこい笑みを浮かべていた。

 怪しい。


「違うのかい? 列車から降りて途方に繰れてる若モンなんて、大抵が冒険者になって一旗揚げようなんて夢持って来たはいいけど、冒険者ギルドの場所もわからずどうしていいのかわからない……って輩かと思ったんだけどねえ」

「そうなんですか?」

「そうじゃねえのかい?」


 冒険者か……。

 もちろん知っている。農場へはS級冒険者が何人も遊びに来ていたんだから。

 懐かしい。


 農場に訪問したS級冒険者さんたちが、よく『冒険者の何たるか』というのを熱く語っていたのを思い出す。


 その情報によれば、基本冒険者は誰でもなることができる、実力さえあれば高ポジションにつくことも夢ではない、とのこと。

 じゃあ僕もこれから飛び入りで冒険者になることも可能ということか。

 いい職業体験じゃないか。


 よし、僕の修行の旅、人間国でのテーマは決まったな!


「ありがとうオジサン! 僕の進む道は決まったようだッ!」

「え? いいのかい? 冒険者ギルドがどこにあるか……?」

「大丈夫知ってるから!!」


 僕だって王都へも何度か来たことがあるんで、地理は頭の中に叩き込んであるわいッ!!


 父さんに連れてきてもらっただけでなく、ヴィールと一緒にラーメン屋巡りしたこともあるからな!

 冒険者ギルドは南口から出て大きな曲がり角を左へ、そのまま5kmを全力疾走!


 そんな僕の駆けだす姿をオジサンが呆然と見送っていた。


「……」

「おい! 貴様また違法な客引きしているな!? また『冒険者ギルドに連れていく』と騙してモグリの人材斡旋所に紹介しようとしてたろう! もう厳重注意じゃ済まんぞ、逮捕だ!!」

「ひえぇええええええッッ! すっかり治安が良くなりすぎぃいいいいいいッッ!!」


 遠くでなんか騒ぎが濃い越えるような気がしたが、僕には特に関係のないことだった。

 いざ冒険者ギルドへ!

 冒険者になろう!

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― 新着の感想 ―
もう王政でないのだから王都ではないのでは? ・・・長年王都で通してたから帰るのもなーって感じで 王都と言う名前の都市になった説
リテセウス初代大統領…「もう代替わり」したんですかね?そんでリテセウス君に色々取り入ろうとした旧王臣達が、「話が違う!」とか喚いてたり…「いや、民主政治って代替わりするからね?別の他人に…」今は2代目…
誤字報告 遠くでなんか騒ぎが濃い越えるような気がしたが、 遠くでなんか騒ぎが聞こえるような気がしたが、
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